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新・環境倫理学のすすめ (丸善ライブラリー)
著者 加藤 尚武 (著)
いわゆる先進国は、枯渇型資源に依存しつつ廃棄物を累積させていくという現体制を永久に続けることはできない。さらに深刻になる環境問題に直面する若い世代に向けて、14年ぶりに書...
新・環境倫理学のすすめ (丸善ライブラリー)
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商品説明
いわゆる先進国は、枯渇型資源に依存しつつ廃棄物を累積させていくという現体制を永久に続けることはできない。さらに深刻になる環境問題に直面する若い世代に向けて、14年ぶりに書き下ろした「環境倫理学のすすめ」続編。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
加藤 尚武
- 略歴
- 〈加藤尚武〉1937年生まれ。東京大学大学院修了。鳥取環境大学名誉学長。京都大学名誉教授。日本哲学会前委員長。哲学奨励山崎賞、和辻哲郎文化賞受賞。2000年紫綬褒章受章。
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民主主義と市場経済では私たちの明日に足りないものを考える
2006/12/29 23:53
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:cuba-l - この投稿者のレビュー一覧を見る
私たちの社会の「幸福の尺度」という意味に限りなく近い「経済の成長」とはいずれ枯渇する天然資源を奪っては食い潰しつつ、処分の限界を超えた廃棄物を生み出すことでようやく可能になるものである。
言うまでもなく地球の環境は有限であるから、もはや私たちには経済成長社会か、持続可能性のある社会かの選択肢はない。持続可能性のある社会へ社会構造を転換するかしないか、転換するのならいつ行うのかという選択肢があるだけだ。
ところが一方でアメリカの生態学者が1974年に発表した「救命艇の論理」(途上国の保護をすれば地球と言う救命艇は人口過剰で沈没するだろう、というアメリカ優位主義を正当化するもの)の信奉者がアメリカ政府に影響力を持つシンクタンクの中で増えているという不気味な話があるという。
実際アメリカは世界規模の持続可能社会への出発点と思われた京都議定書の批准を拒否している。
こんな程度の論理の元では、地球規模での環境対策など永遠にとれるはずもないだろう。
確かに成長志向社会の転換と貧困の克服とは相矛盾する困難な課題だが、著者はこうした救命艇の論理に対して、 「途上国(の貧困)をともに救うのでなければ、地球を救うことができないという『倫理』を先進国が実行することが、地球の環境問題への途上国の参加のために必要である」と反論している。
私たちもまた、アメリカの推し進めるグローバリズムが基本的な理念に据える「民主主義」と「自由市場経済」と「基本的人権」で行き着く先はこの程度の「救命艇の論理」である現実を見据えねばならないだろう。 そしてこの「民主主義」と「自由市場経済」と「基本的人権」では、地球と人類の持続のために何が足らないのか、何が必要なのかを考察するのが環境倫理学であるともいえる。
本書では哲学・倫理学はもちろん政治・経済・科学その他様々な情報を引用して現状の把握分析が試みられており、事例の新鮮さと豊富さで読んでいて飽きない一方、これが環境問題の本なのだろうか、倫理学の本なのだろうか、と驚く点も多く簡単には読み解けない。
だがこれは即ち、単眼的な論理や特定分野の専門的な分析だけでは現在の世界を取り巻く環境問題とは読み解けないということでもある。
この本は、今の環境問題解決のために、人間の存在形態を問う総合的な視点から多種多様な情報・知識統合の実践を例示してくれる、優れた環境倫理学の入門書である。