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商品説明
鬼憲兵大尉・甘粕正彦と昭和の妖怪・岸信介の人生は満州の地で交錯した。彼らは日本人が夢を託した大地でいったい何をしたのか? ふたりの男の生き様を辿り、あらためて国のあり方を問いかけるノンフィクション。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
太田 尚樹
- 略歴
- 〈太田尚樹〉1941年東京都生まれ。東京水産大学卒業。東海大学教授。著書に「パエリャの故郷バレンシア」「アンダルシア パラドールの旅」など。
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紙の本
満州を知ることが日本を知ることにつながる
2006/02/12 04:23
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本が過去に行った誤った戦争を、いたずらに美化しようという言説は後を絶たない。
朝鮮・台湾など、日本が直接植民地として占領した国、あるいは満州のように形の上では独立国家であっても実質的に日本の支配下にあった国に関して、今日でもよく聞かれるものに次のようなものがある。
「日本の占領時代のインフラ整備や制度などがあったことが、独立後のその国の繁栄に結びついている。」「日本の戦後の急速な復旧・経済発展の基礎は、戦時中、満州という国家を経営した経験が生かされたおかげである。」
辛亥革命後ほとんど無政府状態とも言える状態であった中国東北地方満州で日本は何をしたのか。ゼロからの建国となった満州国家の中で日本はどのような役割を果たしたのか。戦前回帰派の虚言を正すためにも、まだまだ満州について知る必要がある。
本書は、満州国家の建国・国づくりに大きな役割を果たした二人の人物の物語である。甘粕正彦と岸信介。なかなか知られにくい二人の満州時代に焦点をあて大著に仕上げた著者の試みは評価する。しかし、序文に記された著者の二人自身に対する次の評価はどうであろう。「近頃ではお目にかかれなくなった「強き本物の日本人」」。権力をバックにしたふてぶてしい態度をいたづらに美化し、“強さ”と勘違いするその評価には大いに問題を感じる。
甘粕正彦は、関東大震災後のどさくさに紛れ国家権力に反する思想を持つ無政府主義者大杉栄と伊藤野枝を惨殺した元憲兵である。彼が実際に手を下したのかどうかを疑う研究者もいるが、いずれにしても彼は刑に服し、出獄後満州に渡った。裸同然の彼が後に満州で大きな権力を持ちえたのは、やはり時の権力者である軍部とつながり、もっと勘ぐれば軍部への貸しがあったことを疑える。
一方、岸信介は純粋なエリート高級官僚であった。東大法学部卒業後、商工省の役人として傀儡国家満州建国政策にかかわり、実際に満州においても満州国経済政策に携わっている。太平洋戦争開戦時の商工大臣として、戦後A級戦犯容疑者となるも、不起訴処分後、政治家として復活を果たし、総理大臣にまでなり日米安保条約改定を行った。
台湾、朝鮮、満州と日本が帝国主義国家としてアジア諸国に触手を伸ばし、多くの他国の人民に被害を与えた。そういった行為の首謀者とも言える人物を変に評価することは厳につつしまなければならない。