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- カテゴリ:小学生 中学生
- 発行年月:2006.1
- 出版社: さ・え・ら書房
- サイズ:20cm/189p
- 利用対象:小学生 中学生
- ISBN:4-378-03402-6
紙の本
三つの願い パレスチナとイスラエルの子どもたち
パレスチナとイスラエルの子どもたちひとりひとりが、願うなら、「きっと、戦争は終わる」 ほんとうに望むなら…。複雑すぎてよくわからないパレスチナ紛争。そんな紛争下で暮らす子...
三つの願い パレスチナとイスラエルの子どもたち
紙の本 |
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- 税込価格:7,920円
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商品説明
パレスチナとイスラエルの子どもたちひとりひとりが、願うなら、「きっと、戦争は終わる」 ほんとうに望むなら…。複雑すぎてよくわからないパレスチナ紛争。そんな紛争下で暮らす子どもたちの本音に迫るインタビュー集。【「TRC MARC」の商品解説】
目次
- はじめに
- 1 迫害をのがれて
- 2 検問所を通って学校へ
- 3 イスラエル人の歴史を学んで
- 4 家族と別れて暮らして
- 5 爆弾におびえながら
- 6 ふつうの生活をうばわれて
- 7 心にのしかかる兵役
- 8 占領に負けないで
- 9 壁と兵士に守られて
著者紹介
デボラ・エリス
- 略歴
- 〈デボラ・エリス〉カナダ在住。作家、平和活動家として、世界中を旅行し、子どもたちを取材している。「Xをさがして」で2000年度カナダ総督文学賞(児童書部門)を受賞。ほかに「生きのびるために」など。
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紙の本
「知りたいとも思わない」……そして続く、憎しみの連鎖。希望の灯は?
2009/01/26 17:43
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紅葉雪 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は、イスラエル・パレスチナ両方の子どもたちに、カナダ人である作者デボラ・エリスさんが「毎日の生活や願いについてたずねた」ものだ。
他にも「幸せを感じるのはどんな時か」「おそれや怒りを感じるとは?」、そして将来の望みなどについてインタビューしている。
インタビューの回答の間に、子どもにもわかりやすい言葉で、イスラエルやユダヤ人の歴史、パレスチナとイスラエルとの衝突の理由、今なにが問題となっているのかを、噛み砕いて説明している。
大人にも判り辛いイスラエル・パレスチナ問題が、すっきりと頭に入ってくる一冊だ。
ただこの本が出版されたのは2006年。その事は、含みおいていただきたい。
この子どもたちの意見を読んで思ったのは、「知らない」ことの恐ろしさ、である。
実は皮肉にも、イスラエル人の子どもとパレスチナ人の子どもが、口をそろえて相手について同じ事を言っているのに気がついた。
要約すれば、
「パレスチナ人(イスラエル人)の子ども? 一人も知らない。知りたいとも思わない」
この台詞の後に、イスラエル側の少女は
「会わなきゃならない理由もないし。彼らは危険よ。すきさえあればうってくるわ、きっと」
パレスチナ側の少女たちは。
「だって(補足・イスラエル人の)親と同じ考えを持ってるにきまってるもの。どうせ、わたしのこと、自分たちほど良い人間じゃないって思ってるんでしょ」
「イスラエル兵は、みんないじわるで乱暴だから、きっと子どものイスラエル人も同じ」
両方の話を文章で読んでいる自分からすれば、どちらも度重なる戦いで疲れて、少なからず心に傷を負っている子どもに違いない。宗教などの面で多少違いはあっても、ごく普通の子どもたちなのだ。
ただ知らないがゆえに、相手を簡単に拒絶し、そして拒絶できているのだと思った。
そんな事を考えたのには理由がある。
実は以前には、パレスチナ人とイスラエル人が同じ学校に通ったり、パレスチナとイスラエルの街がスポーツを通じ交流を計画していたこともあったようだ。おそらく2000年に起きた第2次インティファーダ(パレスチナ人による抵抗運動。このときパレスチナ側は自爆テロを行って、イスラエル人に多大な被害がでた)以前の事だと考えられるが。
そういう流れを知っている年齢の子どもたちのインタビューを読むと、彼らの意見はまた微妙に違っている。
パレスチナの子どもたちにあった事があるというイスラエル人の少年は「とっても感じのいい子たちだったよ。ぼくとちっとも変わんない」と述べている。
パレスチナの自爆テロで友人を殺されたイスラエルの少年が、「パレスチナ人の中にもいい人はいますよ。その民族全員が悪いってことはありえませんからね」とも述べている。彼はそれ以前にパレスチナ人との交流があった。
また何度もイスラエル兵に家をブルドーザーで壊されたパレスチナ人の少女は、父親の友人であるイスラエル人たちが家を建て直すのを手伝ってくれるのを見て、彼らに対する考えを改めたという。
もちろんそんな意見ばかりではない。
以前にパレスチナ人と交流をしたことのあるイスラエル人の少女は、先に述べた少年同様、知人が自爆テロに巻き込まれて亡くなっている。彼女はそれからパレスチナ人を憎むようになってしまった。
だから一概には言いきれないのだが、「相手を知っている」子どもたちほど、冷静に物事を見ている気がするのだ。人間には様々な性格の人がいて、いい人もいれば悪い人もいる。それと同じように、すべてのイスラエル人、すべてのパレスチナ人が悪人というわけではない、と。
交流をすることで相手を知り、違いを認め合おうとした当時の試み。長い時間がかかる地味なやり方だが、間違いのない一番の近道だったに違いない。
現に両方の人々が共存し交流していた時代があるのだから。
ただ残念ながら、このインタビューが行われた時には、すでに交流を図るのは不可能になっていた。ましてや現在の状況では……である。
パレスチナ側が行った自爆テロと、イスラエル兵の人を人とも思わない横暴なふるまい。それが両者の心を、憎しみという鎖で縛りあげてしまったような気がする。
だがすべてのパレスチナ人が自爆テロでイスラエルに勝とうとしているわけではなく、むしろ逆だ。
作者によると「パレスチナ人の多くは自爆に反対しています。状況をほんとうに改善していくには、非暴力的な方法しかないと考えてます」
もう一点、イスラエル兵の問題だが、今回この本を読んで、イスラエルでは特に男子の兵役拒否は殆ど出来ない事を知った。のちのちの将来にまで影響を及ぼし、また国の政策に反対すれば刑務所に入れられる事もあるという。まるで話に聞いていた、第二次世界大戦中の日本そのままのようだ。
そんな中、……兵士たちも徐々に変わっていってしまうのだろう。
だが。
あるイスラエル人少年の言葉が脳裏から離れない。彼はイスラエルが占領している「入植地」に反対している。
パレスチナの人々が怒るのも無理はない、と。だが兵役は拒否しない、とも。彼は「イスラエル軍の中の良心の声になりたい」と言っているのだ。イスラエル軍のパレスチナ人への横暴は許せないと。
彼は以前パレスチナの子どもと一緒に美術の授業に参加していたことがある。
そして彼は宗教の面でも、思わず「すごい」と唸ってしまうような言葉を述べていた。
「ものごとを説明するのに、かんたんに神をもちだすやつらもいる。「これは神が望んでおられることだ」とか、(略)。まったくかんたんなもんだよ。そんなふうに「わたしのやっていることに、わたしは責任ありません」なんていえたらね」
その言葉が、あるパレスチナ人少女の言葉も思い起こさせた。
「宗教を信じるってことは、イスラム教であれ、キリスト教であれ、ユダヤ教であれ、何教であれ、他人を助け、世の中を良くし、自分の事だけを考えるような人にはならないってことでしょ。この考えは共通よね」
イスラエルとパレスチナの人たちは、理解して一緒にやっていく必要があると言うイスラエルの少女もいた。
子どもたちのこの考えが、わずかな、ほんのわずかな希望の光だと思えたのは自分だけだろうか。
最後に作者の言葉を引用したい。
「戦争というのは、人間のそのほかの行為と同様、一つの選択なのです。(略)まちがったことがおこなわれているとき、それをだまって見すごし、やめさせようとしないことも、人びとが、そうすることを選びとったのです」