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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2006.2
- 出版社: 海竜社
- サイズ:20cm/159p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-7593-0912-8
紙の本
自分を動かせ
著者 サミュエル・スマイルズ (原著),渡部 昇一 (編著)
イギリスを超一流国にした秘伝書であり、明治期の日本でもベストセラーとなったスマイルズの「西国立志編(Self‐Help)」の中から、今の時代に求められるエッセンスを厳選し...
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商品説明
イギリスを超一流国にした秘伝書であり、明治期の日本でもベストセラーとなったスマイルズの「西国立志編(Self‐Help)」の中から、今の時代に求められるエッセンスを厳選し紹介。運命を成功へ導くカギはここにある!【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
サミュエル・スマイルズ
- 略歴
- 〈渡部昇一〉1930年山形県生まれ。上智大学大学院修士課程修了。ミュンスター大学名誉哲学博士。評論家。上智大学名誉教授。
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紙の本
今、スマイルズの言葉がよみがえる
2006/02/27 22:54
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:北祭 - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治時代に福沢諭吉の『西洋事情』と共に大ベストセラーとなった本がある。イギリスのサミュエル・スマイルズが著した『Self-Help(セルフ・ヘルプ)』を中村正直が翻訳した『西国立志編』がそれである。当時、およそ日本で字の読める人で読まざるはなしとまでいわれたという。本書の紹介を始めるまえに、中村正直という人の生い立ちについて『明治の人物誌』(星新一著/新潮文庫)によりかかりながら記してみたい。
中村正直は、天保三年(1832年)に江戸の麻布は下級旗本の家に生まれた。数えで三歳のころから父母の導きによって読書と書を学び始め、さまざまな師につき学問を習得していった。読書百遍意おのずから通ず、という主義であったとか。十五歳のころには蘭学にも熱中する。二十四歳で幕府の学問所教授出役となり、三十一歳で御儒者すなわち学問所最高の地位に昇進した。驚くべき努力家である。そのころから英語への関心が高まり、勝海舟から漢英辞書を借りてきて九十日でそれを書きうつしたという逸話を残している。慶応二年十月、中村は留学する少年たちの監視役としてイギリス渡航を幕府から命じられ、横浜を立つ。そして、日本の正統派儒学の第一人者は、西洋文明から生涯の衝撃を受けた。この豊かさは何であろう、いったい日本人はいかなる精神をもってすればこの西洋に追いつき追い抜くことができるのか...このことである。
留学も一年を過ぎたころ大事件が勃発した。幕府が崩壊したのである。急遽、帰国船に乗る中村の手に友人から一冊の本が贈られた。それが『Self-Help』という成功者たちの物語であった。中村正直はその本のなかに、イギリスを世界で一流の国にした秘密を見いだした。すなわち「志を立て自らの努力によってそれを成し遂げる」という自助努力の精神によってこそ、人はその選んだ道を成功に向けて進むことができるのだと中村は確信する。帰国後、渾身の思いを込めて、その本を見事な日本語に翻訳したのである。
文明開化の時代。西洋を知った多くの日本人は強烈な劣等感をもっていた。しかし、その劣等感は日本独特なもので、後ろ向きのものではけしてなく、谷沢永一氏流にいえば、「為すところあらん」という気概に直結していた。ときの日本の若者たちは『西国立志編』を読み、スマイルズの精神と、それを受けとめた中村正直の気概とを、まるまる飲み込む気分であったに違いない。まさに、時代が必要としていたのである。
さて、その『西国立志編』はといえば、これが長大で、中村正直の文語体も今となっては難しい。そこで、渡部昇一氏は本書において、もっとも今の時代に求められるエッセンスを綴った三十箇所の短いセンテンスを厳選し、それぞれに、中村正直の翻訳文と、それに対応する現代語訳と、さらに三頁からなる解題を追加してその真髄を分りやすく教えてくれる。
渡部昇一氏はいう。終戦このかた戦後民主主義教育の影響もあって社会主義にしがみついていた日本人も、ソ連の解体や中国の体制のひずみを見て、その先に未来はないと気づき、大きく意識も変ってきた。これから、志を持ち、自分の能力を伸ばせばいいという風潮は、ますます高まっていくだろう。そして、今また、難しい新たな時代に向かいつつある日本が、迷いを断ち、進路を求める手本として、『西国立志編』ほどふさわしいものは他にない。「今、スマイルズの言葉がよみがえる」のだと。