紙の本
これが面白い?キャロルの長編はもっと面白いぞ!(その1)
2006/06/12 00:34
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Leon - この投稿者のレビュー一覧を見る
フィドルヘッド氏(Mr. Fiddlehhead): ジュリエットはエリックと離婚した後も義妹夫婦とは親交を保っている。40歳の誕生日も、彼らの家でささやかなパーティを催してくれた。義妹のレナからは美しい金のイヤリングのプレゼント。しかし、そのイヤリングはレナが贈るにはあまりにも高価な品だった。ジュリエットはその出所を探すうちに、義妹夫婦の家に住まう奇妙な同居人の存在を知るのだが・・・
「空に浮かぶ子供」の作中作だが、1つの作品として充分な構成であり、それだけに「空に浮かぶ子供」の小説としての贅沢さが改めて認識させられた。
おやおや町(Uh-Oh City): 大学教授のスコットは、子供も成人して愛する妻のロバータと二人暮らし。比較的金銭に余裕もあり、前に雇っていた家政婦の替わりを求めていた。求人に応募してきたビーニィ・ラッシュフォースは中肉中背に白髪交じりのショートカットという何の変哲もない中年の婦人だったが、その働きぶりは驚くべきもの。地下室やガレージまでピカピカに磨き上げるのは良いのだが、家の住人達すら忘れ去っていた品々を持ってきては目の前に突き出して捨てても良いかと尋ねる。ある日ビーニィがスコットのところへ持ってきたのは古い原稿。以前スコットが受け持った学生の手によるそれは、彼の家にあるはずのないものだった・・・
本書中最も長い作品で、日常から異常への急転直下が愉しめる。普通の暮らしの中に、突如死人が蘇って悪態をつき、神様まで登場するが、自分の人生が概ね順調だったと考えていた主人公が、その裏にあった家族の真実の姿を突きつけられる様子の方が生々しくて急転直下の度合いは高い。
秋物コレクション(The Fall Collection): 男は死にかけていた。癌の告知を受けたとき、自分の精彩を欠く人生を振り返った彼は仕事を止めて口座から有り金を引き出しニューヨークへ向かった。街で彼の気を引いたのは、普段なら決して立ち寄ることのないであろう最高級のイタリア紳士服店。二ヶ月分の給料に相当する衣装に身を固めた彼は、あても無く街をさ迷い、ぶらりと立ち寄ったバーで美しい女性と出合うのだが・・・
奮発して買ったスーツを美しい女性に褒められ、短い人生に生き甲斐を見出した男の物語。男の残り少ないエネルギーはその女性ではなく、ファッションに向かってしまうのだが、間もなく死ぬ身とあって告白することは思いも寄らなかったのだろう。ちょっとした贅沢は心理的なストレスを解消させる効果があるので、多少は宵越しの金も必要そうだ。
友の最良の人間(Friend’s Best Man): イーガンの足は、愛犬フレンドを助けるために電車の車輪に切断されてしまった。入院先の病院で、イーガンは7歳の少女ジャズと知り合う。年の差はあるものの、病人同士のよしみで親交を暖めていくうちに、ジャズは妙な事を言うようになった。彼女に言わせれば、フレンドの言ったことを代弁しているらしいのだが・・・
フレンドを代弁しているというジャズの態度自体は「子供にはままあること」で片付けられる種類のものだが、一つまた一つとそれが事実であるように思える証拠が出てくる部分が面白い。大筋は使い古されたパターンで、もう一捻り欲しいところだ。
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表題作「パニックの手」をふくむ11編。初キャロルだったこともあり、興味深い展開に誘われて、あっという間に読了。興奮冷めやらぬ! というほどの感慨はないけれども、他の作品を読んでみたいと思わせてくれたので、よし。
どこか少しだけ歪んだ世界に紛れ込んで、次々とドアを開けてるような感覚だった。開けるたびに、居心地が悪いような思いをしたり、こっそり覗き見してるような気になったり、なるほどねーとか、あぁ……とか、そうそうそうとか呟いたりする。しかも、同じドアを開けたつもりでも、違う景色が見えたり見えなかったり。そんな印象の短編ばかり。 (2006.6.17 読了)
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06/09/16読了★短編集なので他の本よんでる合間とかちょこっと時間あいたときにちょこちょこと読んでたので変な風に時間かかっちゃいました。前半の収録作品は結構好きなんですが、表題作や後半はちょっとキャロルにしては…。うーん。短すぎるから持ち味がうまくでないのかなぁ。
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不思議さと皮肉っぽさがミックスされた短編集。倦怠期っぽいカップルの話が多いような。この中では「おやおや町」が一番好き。
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短篇『秋物コレクション』は久々に深い感動を得たすばらしい一編。こういう小説がほんとうの意味で小説だと思う。
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ミステリ系の短編小説は、こうだと思わせておいて、えーっというような、構成で読ませるものが多いですが、どうも私は前半のしかけのところを読んでるときからもう先を予測してしまい "やっぱりそう来たかー、なんかもうちょっとひねってくんないカナ〜" っとか思ってしまうので、やっぱり長編の方が好きです。
でも、この本は違いました。「ダーク・ファンタジー」 という新しい分野を確立したと言われている作家だそうで、思いも寄らないストーリー。普通の世界がリアルに展開していたところへ、トンデモナイ一撃。びっくり仰天しました。ファンタジー大好き、そこへオカルト成分がちょっと入ってたらさらに好き、という私にとっては、たまらない本でした。
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久しぶりのジョナサン・キャロルの短編集。
やっぱり好きだな〜♪
もう一度、昔読んだ作品を読んでみようと思います。
できれば原語で。
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ジョナサン・キャロル著/浅羽莢子訳
「秋物コレクション」
短い話だが良かった。
紳士服屋の店員がいい。
「手を振る時を」
手を振る時を待ち続ける男の心情が切ない。
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ジョナサン・キャロルの短編集。
世界幻想文学大賞受賞作が収録されてるので、ジャンルはファンタジーでww
どうもこれは、1冊の短編集を分冊したもので、創元推理文庫、あとの1冊も近々出してくれるらしい。めでたい!!
解説で津原泰水氏が「読者の人生をくるわせるほどのかっこよさである」と書いてるが、まさにその通り。あまりにも、秀麗で耽美なのにクール。確かに、読者をおいてけぼりにしてしまうような話の展開やオチもあるが、それができてしまうキャロルのかっこよさ。
そうだ。キャロルは、かっこいい作家なのだ。
次の発刊予定「黒いカクテル」(分冊のかたわれ)が楽しみだ。
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奇妙な味わいの短編集。けっしてどぎついホラーではないはずなのだけれど、なんとなく嫌な感じ(誉め言葉)がつきまとう読後感。異世界的要素が入りながらも、全体としては非常に日常に近い感じがする、その点がこのおぼつかない「怖さ」の原因かな。
お気に入りは表題作「パニックの手」と「フィドルヘッド氏」。どちらもラストが怖い……しかもじわじわっと尾を引いた怖さ。特に「パニックの手」なんて、タイトルが秀逸だよなあ。
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ホラー+ファンタジー=ダーク・ファンタジーというのがこの著者の描く世界なんだそうだが、これまたいわゆるホラーとは少し違う趣。文字通り後味に苦味の残る文字通りのブラックな幻想小説もあれば、結末まで何も起らない、淡々とした情景と心象風景の描写が重ねられるだけのものもある。
……うーん、こういう世界の旨さを感じられない己の感受性不足を歎くべきか、嗜好性に合わぬだけと諦めるべきか。
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ちょっと、毒のあるものが読みたいなーと思って読んでみました。
「黒いカクテル」とついになってる作品らしい。
どれも短編なので電車の中で読むには最適ですね。
友達が作り出した想像の人物を好きになってしまう不思議な作品「フィドルヘッド氏」や、地獄にやってきた主人公がなぜか、どんな部屋がすきなの?ときかれて答えた先に用意されているものは?というちょっとコミカルな「ジェーン・フォンダの部屋」 も面白かったんです。
心に残ったのは死が近づいてきた男が最後に手に入れたものが非常に満足感がある「秋物コレクション 」や、絵が上手だけど細部にこだわりすぎている自分に嫌気が差して、絵の道を捨ててしまった平凡な人生を選んだ女の人の話「細部の悲しさ」ですね。
とくに「秋物コレクション」の雰囲気がすごく好き。
短編というよりも若干中篇だけど「おやおや町」のやりきれなさや、知ってしまうことの悲しさ。
神様だろうと理解が出来ないことがあるという黒さ加減。
これもなかなかよいですよ。
どの作品も少しだけ毒があって、いい感じのバランスでした。
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相変わらずどこか気持ち悪い話を書くひとだなあと思いつつその気持ち悪さが好きです。
このひとの書かれる話にはたまに神様が登場するのですが、その神様さえも神聖で輝かしいものではなく少し得体のしれない気持ち悪い感じなのが印象的でした。
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ダーク・ファンタジーの第一人者。ジョナサン・キャロルの短編集です。まだ半分位。
ダーク・ファンタジーとは普通小説とファンタジーとの融合。
とくに彼の作品は融合のさせ方がうまい。というかあまりに自然で怖いです。気がつけば「スルリ」と超常が日常に浸食してきます。ホラーというわけでなく、グロテスクでショッキングな描写もあまりないのですが、読後には血が冷えるような感覚を覚えます。乱歩さんの言う「奇妙な味」があるんじゃないかと。
寡作な方だし、最近は短編集しか訳されないのが残念です。長編では「我らが影の声」がいいかなー。
もうすぐ終わります。心が冷える話しばかりだ…
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心の暗部をそっと震わせるような、怖くて不思議な読後感のする短編集。スタイリッシュな文章が、読みやすくてかっこいい。