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紙の本
オープンであることがイノベーションの鍵
2006/11/06 22:05
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MtVictory - この投稿者のレビュー一覧を見る
オープンソースとは狭義ではソースコードを公開する開放型の開発手法のことで、Linuxという大きな成果を生み出している。 Linuxの成功によってこの方式や、それによって生み出される成果物をビジネスに活用しようという動きが広がり、単にソフトウエア開発の手法やその業界に限定されない、幅広く大きな意味を持つようになった。一種の思想・哲学とも言える。
1990年代前半にIBMが主力のメインフレーム事業からオープンシステム化、ダウンサイジング化にビジネス転換を始めたのを契機にIT業界のビジネスモデルも大きく変化し始めた。そしてIBMはオープンソースコミュニティにも積極的に協力するようになり、2001年には統合開発環境Eclipseをコミュニティに寄付まで行っている。その戦略はオープンソースの裾野を広げ、革新を促し、そのフィードバックにより自らも革新しようというところにあった。コミュニティに任せられるものは任せて、高収益の見込める付加価値に高い仕事に内部の技術者を振り向けるという判断だ。オープンソースを自社の製品と組み合わせることで相互補完ができ、競争力も維持できると言うビジネス上の戦略である。また、IBMはLinux関連の特許もコミュニティに寄贈している。本気である。この画期的とも言えるIBMの動きに同調する企業も増え、日本でもシステムインテグレータがオープンソースに積極的に取り組んでいる。
本書ではフリーソフトウエア運動のリーダー、リチャード・ストールマンにも多くのページを割いているが、世界のハッカー達に任せられるところは任せるという開発スタイルでLinuxを成功させたリーナス・トーバルズとはプロジェクトの進め方について微妙な関係となっているそうである。
ところで今年2006年に施行された新会社法により日本版LLC、合同会社という会社形態が設立可能となった。本書でもこの動きに触れている。オープンソースコミュニティにいる優秀な技術者を結びつけてビジネスにつなげる仕組みとして合同会社のメリットが活かせるのではないかと述べている。従来とは違った会社形態として私も注目している。技術偏重で独立心は強いがビジネス感覚がないとか、社会や会社への適応能力が低いと言われる技術者へのメリットが大きいのではないかと考える。能力はあるが環境や自らの性格のせいで能力を活かせていない人も多いだろう。会社の形態だけでうまくいくものではないが、この仕組みを活かすことで日本のソフトウエア産業を活性化させ、世界的な競争力の向上にも役立つのではないだろうか。
また自社に優秀な人材やすぐに適材を適所にアサインできないような中小企業が社外の人材と智恵を活用することができればビジネスの可能性も広がるだろう。オープンであることで新しいよい技術が普及し、更なるアイデアが生まれる、という循環が生まれ技術も進歩し、景気もよくなるだろうとも書かれている。同感である。