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商品説明
艦上攻撃機、艦上爆撃機搭乗員の錬成航空部隊として、また特攻基地として重い役割を担い、数多の人間ドラマを生み出した宇佐海軍航空隊の真実を描く。「宇佐海軍航空隊始末記」姉妹篇。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
今戸 公徳
- 略歴
- 〈今戸公徳〉1925年大分県生まれ。陸軍輜重兵学校に入校。復員して明治大学商学部へ。毎日新聞東京本社、シナリオ作家を経て、家業の酒造業を継ぐ。著書に「麦笛吹く頃」「宇佐海軍航空隊始末記」等。
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紙の本
兵どもが夢のあと
2007/02/10 15:41
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
母が里帰りの時、小倉から柳ヶ浦までの日豊線では必ず左側の席についた。ひとつには海が見えるということもあるが、航空自衛隊築城基地の戦闘機を見ることができるからでもあった。築城が近づくと母は決まって「ほらほら飛行機」と幼い男の子の興味を引く素振りで急かしていたが、実のところ母自身が戦闘機に見惚れていたのではと思う。
なぜ、母はいつもいつも築城に近づくと戦闘機を探すのだろうかと不思議だったが、生まれ育った場所に宇佐海軍航空隊があり、早世したので真意はわからないが、華やかりし頃の海軍パイロットや水兵たちに可愛がってもらったという記憶が強かったからだろうと推察する。
南方に転戦したパイロットが転属先から母にフランス人形を送ったと手紙がきたそうだが、いざ届いた小包を開けてみるとパイ缶にすりかえられていてあきれたと、祖母が話していたのを覚えている。
さて、本書は『宇佐海軍航空隊始末記』の姉妹編として上梓されたが、内容は米軍の空爆を受けて壊滅した航空隊無きあとの町の様子が綴られている。
著者が出版に到ったもっとも大きな意味合いはこの航空隊から飛び立っていった特攻隊員に対する鎮魂であり、米軍の空爆で亡くなった方々の慰霊だろう。のどかな田園風景が広がり、目を転じればおだやかな海が広がる町がかつては戦場であり、特攻隊員を送り出した基地であったことを風化させてはならない、悲劇を繰り返してはならないという著者の強い義務感から生まれたのだろう。
今、縁者は誰も住んではいないこの町に祖父母らが眠る墓があり、祖母や母から語り聞かされた宇佐海軍航空隊が妙に懐かしく、本書と姉妹編を手にした。
読み進むうちに柳ヶ浦の駅を降り、潮の香を感じながら小松橋を渡った幼い頃が蘇ってきたが、本当にあの町が戦場だったこと、特攻基地だったことがいまだに信じられない。
宇佐市は史跡として航空隊跡地の掩体壕を残すことで戦争を風化させまいとしたが、著者は証言者たちの口述を慰霊碑として遺されたのである。
幼いということで私に多くを語らなかったのだろうが、この世を去った祖父母、母の思い出が詰まった一冊は、はるか昔の潮の香を呼び覚ましてくれるものでした。