紙の本
子供のころを思い出す
2008/11/23 19:42
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はな気 - この投稿者のレビュー一覧を見る
小さな頃って世界が定まっていないせいか、今思うと不思議な事を想像(妄想?)していた気がします。
個人的な例ですと、「真っ直ぐな線を引くために使っているモノサシって、もしかして本当は真っ直ぐじゃないかも」とか、「いま習字教室で習字書いてるけど、もしかしたら私だけがそう思ってて、本当は普通の誰かの住んでる家なんじゃないの」とか。
今こんなことしゃべりだしたら変人扱いされるのがオチだということは分かってるんですけどね?
しかし、この「ジョナサンと宇宙クジラ」という話はそれに近いものがあるのではないかと思います。いや、こういう感じのことを考えてたよ~っていう人いるんじゃないかな、たぶん・・。どういう「感じ」なのかは、ぜひ読んで確かめてください。想像(妄想)を説得力のある文章で描くとこんな風に素敵なSFになることもあるのだな、というよい例です。
私はこの短編の中では「ジャングル・ドクター」の少年マンガ風味の恋愛が好きです。くたびれたオジサンに魅力的な少女って好きな組み合わせです。「九月は三十日あった」もいい感じのオジサンが出てきます。
この短編集を読むと(というよりヤングの小説を読むと)これがSFなの?と思う人も多いのではないでしょうか。ちょっと不思議なファンタジー、という雰囲気で、空想科学小説に苦手意識がある人にはとっつきやすくておススメです。
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空飛ぶフライパン、悠久の宙を泳ぐスペースホエール、時代遅れの教師型アンドロイド、先祖返りの水棲巨人……等々。哀愁漂う、けれど暖かみのある魅力を持ったモチーフのSF短編集です。 センチメンタルで柔らかい風合いのSFというと岡本賢一さんの『鍋が笑う』、菅浩江さんの『五人姉妹』などを思い出しますが、それらと共通した雰囲気で、かなり好みのお話でした。
それにしても宇宙を遊泳するクジラが出てくる物語は、SF周辺でぼちぼち見かけますが、一体何処が出所なんでしょうねえ。まあ、星の海にぷかぷか浮かぶクジラというイメージは、感覚的にとても心地良いものですけれど。
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伊藤典夫編纂の短篇集。10篇収録。
アンドロメダの“私は十七歳です”というセリフと、それが喚起するイメージには思わず涙。ドッゴーンの愛らしさはどうだろう。評判通りの甘い甘い作品集ではあるが、時折感じられる作者のシニカルなまなざしが、ちくりちくりと肌を刺しもする。
「サンタ条項」はサンタ・クロースやジャック・フロスト、歯の妖精まで出てきて楽しめる作品だが、コウノトリに対する断固たる拒否や、幼児期からの幻想を取り払った時に残されたのが母親への圧倒的な憎悪であったというラスト、“鋳型は、才能のない人間のためにある。才能がなければ、行きつく先はそこなのだ。そして、もし才能がなく、故郷に帰るつもりもなく、才能のないことを認める気もないのなら、いつまでもそのなかにいるしかない”(「空飛ぶフライパン」)という言葉、深い苦悩から心を病んで、救いもなくさまよう人々のイメージ(「ジャングル・ドクター」。「雪つぶて」の中尉もそうかもしれない)・・・・
たとえば、アンドロメダが、“私は七十歳です”と言ったとしてもエクソダスは起こされたのだろうか、一人と一匹の無私の愛に、それが失われるまで気づかなかった、敢えて気づかないふりをしていたような男が、愛を得て後には自分の人生と折り合いをつけて生きていけるのだろうか、ブラウニーが現代風を装って宇宙人のふりをするのが愛らしい話の「空飛ぶフライパン」も、才能なく挫折しても女には結婚という逃げ場があるじゃないか、と示唆しているのか・・・
もしかして、もしも・・・と、想像をめぐらせる隙が、わざと残されているような気もして、ヤングという作家は、案外屈折した書き手なのかも、なんてことをぼんやり思ってみたり。
二度と手に入らない失ったものへの郷愁と、それがごく身近な人々にも理解されない孤独がせつない「九月は三十日あった」が一番好き。
――Jonathan and the Space Whale and Other Stories by Robert F.Young
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第一話。「九月は三十日あった」読了。アンドロイドの小学校教師の話。うん、魅力的だなあ。主人公の、疲れた感じが悲しい。アンドロイドの知性への描写が好き。
第二話。「魔法の窓」読了。不思議な女性画家と青年の出会いの話。議事のネルとルーカスのキャラチップが浮かんで困った。イメージが若干違うのに。イラストのイメージとか、いらないから、としかいえない。話的には、私の中で「ネバーランドもの」と分類されている部類。好きだけども、なんか、切ないよね。このあっさり感がヤングの魅力なんだけど、後味が悪いのにすっきりしすぎかもと思う。
第三話「ジョナサンと宇宙クジラ」読了。テーマの生臭さに対してなんて詩的で、なんて優雅なんだろう!
第四話「サンタ条項」読了。よくある悪魔との契約ものだけど、ギミックが上手いなあ。人間の欲のベクトルがユニークで目新しくて、オチの方向性も予想できるのに新鮮だ。
第五話「ピネロピへの贈り物」読了。オテリス可愛いな! そして、ゆがんでるよ、ゆがんでるよ、彼の周囲が!
第六話「雪つぶて」読了。これは、読解力がためされてるのか、解釈の余地が残されているのか。3回読み返した。うん、面白い。
第七話「リトル・ドッグ・コーン」読了。非常にテンプレートな恋愛もの。だけど、やっぱり描写が好きだなあ。アルコール依存症の目から見る世界とか、非常に好き。ドッゴーン可愛いよ、ドッゴーン。
第八話「空飛ぶフライパン」読了。きゃー。なにその可愛いの。オチが秀逸。あー、もう。幸せになってほしいなあ。これは、本当にほんわかほんわか。
第九話「ジャングル・ドクター」読了。これは、あんまり好きじゃないかも。なんか、胸がいがいがする。リンゼイに泣いて、主人公に反発して。いや、ラストもちょっと私は好きじゃないかもしれない。
最終話「いかなる海の洞に」読了。最後に救われた。悲しい話だけど、好きだなあ。完全に人魚姫なのにね、嫌らしくない。綺麗ではないもの、って好きかも
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短編集を読んだ後、他の作品が読んでみたくなりわざわざアマゾンで探して購入しました。う~ん、ネットって便利。色々と言及のある「たんぽぽ娘」なる作品も絶版と知りましたが原文をアップしているサイトを発見したので読みました。重ね重ねネットで便利だ~
読んだ作品はどこか切なく懐かしいお話ばかりでした。確かにブラッドベリを思い起こさせるなあ~と。根本的に優しい話が多いですね。この短編集の中ではドッゴーンの話が一番好きです。
他にもう一冊作品集を買ったので近々読もうと思います。楽しみ楽しみ。
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「たんぽぽ娘」の著者の短編集です。SFとしては複雑な理論はなく、かといってその要素がなければ甘ったるい理想だといわれそうなストーリーたち。その意味では絶妙の位置にいるように思えますが、絶賛するには勇気が要ります。自分の中にあるけれど表にだすのは気恥ずかしいノスタルジーやセンチメンタリズム。その辺を刺激されるのです。
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久しぶりの小説
知人に紹介されて読む
知人曰く
「あなたには甘すぎるかもしれないけど泣けるよ」
そして、僕の読後の感想
「甘くなんてないっすよ!最高っすよ!」
いや確かに甘いことは甘いんだけど、甘ったるくなくて、御伽噺や神話を読んでいるかのような、一流店のお菓子を食べているかのような(僕は食べたことないですがw)、そんな気分にさせてくれる作品
花粉症が本格化してきてだるくなってきた心に染み渡る名作だった
短編集になっていて、中には皮肉が効いているものもあるけれど、全体的にほっこりした気分になる短編ばかりだった
あえて比較するとしたらブラッドベリを皮肉が少なくてよりストレートにした感じ
特に「九月は三十日あった」は、ブラッドベリの歌おう、感電するほどの喜びを! (ハヤカワ文庫NV)を思い出した
「感電」の表題作の主人公を大人にしたら、みたいなお話
あとがきを読めば分かるけど、イギリスの童謡から採ったお洒落だと思った
好きだったのは
表題作「ジョナサンと宇宙クジラ」
「リトル・ドッゴーン」
「いかなる海の洞に」
順番に紹介すると
「ジョナサンと宇宙クジラ」は
人間が宇宙に普通に住んでいる時代に、小惑星を飲み込んだ謎の超巨大生物(「エースを狙え」の宇宙怪獣とは断じて違う!w)がいて、そいつを倒すために主人公が核爆弾を打ち込む任務に付くんだけど、失敗しちゃって、主人公は飲み込まれちゃう
んで、飲み込まれた先には何故か現代の地球のような社会があって、「なんじゃこりゃー」って驚きを隠せない主人公
主人公はどうなるのか?果たしてクジラの腹の外に出れるのか?
というお話
この話は主人公ジョナサンと宇宙クジラの対話、その中でもクライマックスの会話が最高
特に、時間の対比のさせ方(人間と宇宙クジラでは時間間隔が違う)が素晴らしかった
批判的な内容としては、人間社会の業とでもいうことが若干出てくるが、それはありがちな環境破壊もので、目を見張ることは何もない
しかし、重要なことはそこではなく、話の持って生き方とクジラ(異生物)との交流や舞台設定そのものにあると思う
「リトル・ドッゴーン」は
これまた宇宙に人間が普通に住んでいる世界で、有名スターの主人公は酒癖の悪さで劇団を首になり、辺境の惑星で飲んだくれている
そこで、一匹の瞬間移動できる犬(ドッゴーン)と地元の酒場で過去の栄光で稼いでいる場末のショーガールと出会い、体と心を癒す
その内、ドッゴーンの能力を活かした演目を思いついた主人公は、ショーガールと2人と1匹で巡業の旅に出る
しかし、その旅は、皆で成功するためではなくて、主人公には別のたくらみがあるのだった
ってな内容
これはドッゴーンの性質と主人公の心理描写が良かった!
全編を通じていえることだけど、オチは読めるのになぜか感動してしまうんだよなあ
最後に「いかなる海の洞に」
多分、時代設定は近代~現代で、突然、叔父の遺産が転がり込んだお陰で、一生遊んで暮らせるようになってしまった主人公が、とある島で運命の人と出会い、二人はめでたく結ばれる
しかし彼女の成長が止まらない(=大きくなり続ける)という問題が起きる
主人公も始めは「その内、止まるさ」と高を括っていたが、一向に留まる気配のない彼女の成長に対策を考えざるを得なかった
二人の運命や如何に?
というお話
これは、主人公の気持ちの揺れの描写がとにかく素晴らしかった
最後の主人公の台詞
「ヘレン(彼女の名前)はとうとう自由になったんだよ」
社会における異端についても考えさせられる内容だった
全体として、SF的題材を用いた御伽噺といった内容だと思う
先述したように話の流れやオチに関しては特に驚かされたことは無い
それでも、感動してしまう
感動させられてしまう!
SFのワンピースみたいな、と言ったら言い過ぎかなあ
言いすぎだな
号泣は、しなかったしな
それにしても良かった
表現方法や構成に工夫があるのだろう
特にSFを読んでいていつも思うのが、見たことも無いようなものを説得力を持って描けるその表現力に感嘆させられる
「力がある作家ってのはこういう人なのかもな」
と素直に思った
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短編10作。
センチメンタルでセンスに訴えかけてくる。
たっぷり遊んだ夏の日の夕暮れのように、帰るのがちょっとさみしいけど、充実した一日に満足を覚えるような、そんな感じ。
「ピネロピへの贈りもの」もいいけど「リトル・ドッグ・ゴーン」もいいけど、、、全部いいな。
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木村紺の漫画『神戸在住』で主人公の女子大生が読んでいて、ずっと気に入っていた。彼女が大好きだから、彼女と同じモノを読みたかった。明るくてほろっと来る。普通に満たされたサラリーマンの胸にふと吹き抜ける郷愁的な風を捉え、それを優しい形で体現させるのがとても上手い。ちょっと話がうまくて、人当たりが良くて、でも寂しい人の気持ちが良く分かってる、そんな人物像を抱かせる、この本は。(7/4)ようやっと読み終わった。「ジョナサンと宇宙クジラ」「ペネロペへの贈りもの」「リトル・ドッグ・ゴーン」がとりわけ好き。ブラックさのある話もあるけど、これらはきらめく胸がさわやかなあたたかい風でいっぱいになるような話。定型をキッチリ踏み、とっても甘ったるいけど、それがグッとくる。でもこれ、SF短編集なの?
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少しピリカラだけど素敵なファンタジー。読んでいてすごく懐かしい気がしました。この季節にうってつけな短編集です。
12月12日追記
最近の中でベスト。
「ジョナサンと宇宙クジラ」・・・ジブリあたりが映画化しないかな。
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甘い
そして、終わり方はこうかな、と予想して読み進めるとその通りという意味でベタ
文章が綺麗なので、斜め読みするのは非常にもったいない。一文一文味わって読むべき本
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中学の時に出会い、ぐっっっときた本。読書感想のために読み返しました。どのお話も面白いけれど、魔法の窓がお気に入り。何度でも読み返したくなります。
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ロバート・F・ヤングの小説で、現在簡単に手にできる和訳本。
表題作『ジョナサンと宇宙クジラ』が良かった。
大きな存在と小さな存在。
悠久の時間と限りある時間。
心が存在と時を超えていく物語。
その他の短編は文化的・宗教的背景を理解をしていないからか、共感できるものが少なかった。
ロバート・F・ヤングの『たんぽぽ娘』はいつ読めるのやら...
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ほんわか心があったかくなるようなファンタジー。外国のSFって、ブラッドベリとかディックとかしか読んだことなかったので、ちょっと衝撃的だった。調べたらおもしろそうなのがいっぱいあったから、これからはもっと海外SFに手を出していきたいなあ
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『ロマンティックSF』といえばこの人、ロバート・F・ヤングの短篇集。長らく品切れになっていたようで、解説によるとAmazonの古書価格で6000円の値段がついていたこともあったとか。
『たんぽぽ娘』にも通じるロマンス傾向はこの短篇集でもかなり強く出ているように思える。特に表題作でそれを感じた。
冒頭の『九月は三十日あった』、コミカルでテンポが良い『サンタ条項』『空飛ぶフライパン』が面白かった。