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労働ダンピング 雇用の多様化の果てに (岩波新書 新赤版)
著者 中野 麻美 (著)
人間の労働が「物件費」に組み込まれ、商品以上に買い叩かれる。有期雇用・派遣・パート・偽装請負…。雇用の液状化現象が働き手を襲う生々しい現状報告。ひとりひとりが人間として働...
労働ダンピング 雇用の多様化の果てに (岩波新書 新赤版)
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商品説明
人間の労働が「物件費」に組み込まれ、商品以上に買い叩かれる。有期雇用・派遣・パート・偽装請負…。雇用の液状化現象が働き手を襲う生々しい現状報告。ひとりひとりが人間として働き生きるためのオルタナティブを考える。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
中野 麻美
- 略歴
- 〈中野麻美〉北海道大学法学部卒業。弁護士。NPO派遣労働ネットワーク理事長・日本労働弁護団常任幹事。著書に「20歳の法律ガイド」「労働者派遣法の解説」「派遣社員トラブルなんでもQ&A」など。
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紙の本
労働力は商品ではない
2007/07/10 00:08
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MtVictory - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は弁護士で、NPO派遣労働ネットワークの理事長も務めておられる。改めて働くことの意味を考え直させられる本。
近年、雇用形態が多様化して、女性を中心として派遣やパートなど非正規労働と呼ばれる形態で働く人が増えている。 2004年に非正規雇用は女性の半数を超えているそうだ。本書はタイトルからしてショッキングなものであるが、一サラリーマンとして現在の日本の雇用状況を肌で感じる身としてはさもありなんと言った感じで、日本も来るところまで来てしまったのだと寂しさとも悲しさとも言えぬ気持ちになった。その実態を知りたいと思い、本書を手にした。
私の職場でも派遣会社から派遣契約で協力していただいている方が大勢いる。今や女性に限らず若者を中心として男性にも非正規雇用化が広がってきていることを実感する。 2004年の数字では24才以下の男性の4割が非正規雇用だそうだ。いずれ正規雇用のほうが少数派になっていくのだろうか。
このように職場を厳しく変えてきた要因はグローバル化、規制緩和である。 1986年には労働者派遣法が制定され、労働基準法の緩和もあり、正規雇用から非正規雇用への切り替えが始まった。合法的に「労働が商品化」され、商品のように買い叩かれるようになった。その状況を本書のタイトルは表している。
経営者など財界主導とは言え、それによる格差や低賃金不安定雇用を容認する社会に日本はなったということだ。ダンピング以上に、人を商品のように取引することは働く人の人権を無視することもつながり問題だ。そこが本書のテーマだ。著者はNPOの活動などを通じて、様々な労働者の声を聞き、この問題に取り組んできた。
コスト削減を迫られ、安くて使い捨ての労働への切り替えで競争に生き残ろうとする経営者。格差問題の責任はそうした経営者にもある。更には非正規社員との競争にも晒される正社員。リストラで若手の正社員の負荷が上がり、長時間労働も拡大している。正社員と言えども安定した雇用が望めなくなっている。鬱になったり、健康が蝕まれている人も増えているという。非婚、出産拒否も増えている。低賃金のためいくら働いても自立して生活していけない世帯も増え、過酷な労働条件のもとで健康も害する。そんな社会、企業が長持ちするわけがない。当面の利益は上がるかも知れない。長期的には疲弊し衰退していくだろう。貧困と暴力が蔓延し、社会不安を招くだけだ。社会保障制度を支える労働者が保護されていなければ、年金制度も維持していけないだろう。活力を失い、元気のない日本はますます元気をなくすだけだ。
会社にしがみついていられなくなる時代。専門能力を持つ者同士が連携して対抗していくしかないのだろうか?ダンピングに晒されて社会的弱者となっていく非正規労働者をどうやって支えていくのか。著者も言うように、個人が学習意欲、人間としての基礎的・普遍的な力、生活を設計する能力を培う環境作りが必要だ。職業訓練や、やり直しができる柔軟な社会システム作りがセイフティネットとなる。国も企業ももう少し長期的な視点で考えないと、その場しのぎの対策ではいずれ立ち行かなくなる。
また、正規雇用で働く者は雇用問題を自分自身の問題として捉え、自分らに配分されてきた原資を非正規雇用労働者へ再配分する覚悟も必要かも知れない。著者の言葉を借りれば、手をつなぎ、連帯の輪を築き、その輪を消費者へも広げていくことで、多様化・流動化した雇用でバラバラにされた人々が「和」を取り戻すことが出来るのではないか。そうしてグローバル化した世界の中で、右肩上がりの成長が見込めなくなった日本人が真の豊かさを実感できるようになったとき、日本は復活した、あるいは成熟したと言える。
紙の本
労働は商品ではない
2007/08/16 14:41
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:六等星 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、非正規雇用の賃金格差に代表される雇用問題を「労働ダンピング」と呼んで、非常に幅広い視点から問題に斬り込んでいる。重く堅い内容だが、ダンピングの実態、実例を数多く紹介しているので、身の回りの労働事情や職場事情に当てはめながら読めば、専門知識を持たなくても、労働市場で何が起きどこへ向かおうとしているのかの大枠を捉えることは、十分可能だろう。
制度面や雇用慣行などマクロな話が主体で、現場で出来る具体策が数多く示されているわけではないが、多様性の時代の働き方と、その金銭的価値すなわち賃金の関係を、構造的に考えてみることを教えてくれる。そして最終章で解決の方向性を示している。そのひとつ、そしておそらくもっとも本質的な主張は、労働は商品ではない、という点だろう。
雇用形態の原則は無期限・直接雇用という立場にまずは立ち戻った上で、法制度や雇用慣行、さらには経営戦略まで見直す覚悟が、社会全体に必要だろう。そのロードマップが描かれなくてはならない。