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紙の本
波のうえの魔術師 (徳間文庫)
著者 石田 衣良 (著)
おれとこの町のすべての銀行被害者の憎しみのターゲットはメガバンク。マーケットという名のジャングルでは、数が歌いグラフが踊る。仕掛けた罠で銀行の株価を奈落の底までたたき落と...
波のうえの魔術師 (徳間文庫)
波のうえの魔術師
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商品説明
おれとこの町のすべての銀行被害者の憎しみのターゲットはメガバンク。マーケットという名のジャングルでは、数が歌いグラフが踊る。仕掛けた罠で銀行の株価を奈落の底までたたき落とす。それがおれたちのちょっと洗練された形の復讐なのだ。痛快コンゲーム小説。【「BOOK」データベースの商品解説】
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紙の本
人は愚かさを繰り返す。そしてまた、立ち上がる。
2009/01/31 22:52
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栗太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
物語が始まるのは1998年、今から20年以上前です。主人公のフリーター青年、白戸は無為に生きる日々の中で一人の老人と出会い、彼の導きを得て相場の世界に飛び込み、そこにのめり込んできます。老人、小塚の狙いは、メガバンク「まつば銀行」の株価を操作し、社会的に抹殺もとい、相応のダメージを与えることでした。
それは、かつてバブル期に銀行が行った融資付変額保険によって、骨の髄まで搾り取られ、今なお苦しむ老人たちの復讐なのです。
バブル期の頂点と言われる1989年頃、私は高校生でした。バブルが崩壊した時も、かろうじて学生でしたから、その波に乗って人生を謳歌することも、波に翻弄されて転覆することもありませんでした。
でも、あの巨大なエネルギーに巻き込まれ、人生を揉みくちゃにされた人たちの話は、多く耳にすることがありました。欲をかいたわけではなく、ただ安心を手に入れたいだけだったのに、地獄に落とされた老人たちの話も。
相場に魅入られ、また老人たちに共感した白戸は、犯罪であることを承知の上で、小塚と行動を共にします。途中、情報を得るため接近した女性に本気で心を揺らしてしまうという、お決まりの展開も挟み、物語は「その日」に向かって突き進みます。
追い詰める白戸サイドだけでなく、追い詰められる銀行サイドの描写もあって、読み応えがありました。
20年も「昔」が舞台である経済クライム小説なので、古いと言えば古いけれど、同時に人間も社会も、あんまり変わらないなと思えました。システムが進化しようとも、その出口入口にいるのは同じ人間です。
喉もと過ぎれば熱さを忘れる人間は、失敗から学ばないし、金に振り回され、時に身を滅ぼします。でも結構なんでも乗り越えていくものなのですね。
今、「100年に一度」と煽りたてられる不況の真っ只中で、お薦めの一冊です。最新のドキュメントなんか読むよりも、かえって古くならない何かがあるのでは?
ラストも清清しく、ゆったりと広がる海原が目に浮かびました。