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紙の本
古代の特定郵便局長たち
2007/05/24 00:33
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Living Yellow - この投稿者のレビュー一覧を見る
古代の特定郵便局長たち
郵政「改革」で「抵抗勢力」として、注目を集めた特定郵便局長たち。彼らは明治の郵便制度創成期にまだ不十分だった国家インフラを国家から委託された人々の末裔だった。つまり当時の地方の有力者の家に郵便局業務を委託して「設置」したわけである。律令以前の地方官庁遺跡の発掘に立ち会った著者は「家」と分離した「事務所」にあたるものがないことに指摘したあとで、その「職住一体」スタイルをちょうど創設当時の特定郵便局に例えている。
貴族と言われれば、「十二単衣」をまとった女性、和歌や蹴鞠を楽しみ、その裏で権力闘争に明け暮れる男たちというイメージが浮かんでくる。しかし豪族。蘇我氏は豪族。でもそれを倒した中臣鎌足は何か貴族っぽい。なんとなくこんなあいまいな印象を持っていた。しかしいきなり豪族がいなくなって貴族に入れ替わったわけもない。
本書は朝廷による、中央集権体制の構築の中で、彼らが各地方の支配者であった古代から、朝廷の支配下に入り、奈良時代の天武朝期に行われた朝廷貴族(畿内の「地方」豪族の一部)と地方「豪族」の差別化を経て、彼らが官僚機構の末端に位置づけられて郡司となり、そして「新皇」を名乗る平将門を生み出すまでを描いた、一般読者向けの歴史書である。
原著が1974年の出版ということもあり、現代の発掘結果などを取り入れた最新の知見を得たい方には、ものたりないかもしれないが、作者の語り口は丁寧かつユーモラスでさえあり、「正倉院文書」など文書資料を駆使して、「地方豪族」がどんな仕事・生活をしていたか、どういう力を持っていたか、中央とどういう関係にあったか、栄華を極めた藤原氏をはじめとする朝廷貴族との分かれ道はどこにあったのかを鮮やかに描き出す。
特に第6章で描かれる「神火」は興味深かった。771年、神の祟りで入間の国司の倉庫が焼ける。はじめは中央も神の祟りだと信じる。しかしあんまりしばしば起きるので、そのうち中央も郡司同士の内輪もめで放火したのでは疑いはじめる。しかし。結局は倉庫からの横流しの発覚を恐れた国司・郡司共謀の放火だった。その背景には中央の衰退による地方の「独立採算制」のような体制の存在があったのだ。
「墾田永年私財法」とか暗記されられて、起きてくる「つっても、それどうやって実行したの?」という疑問の数々に、物語性や人物史についてあまり禁欲的にならず、生き生きと歴史を「語って」答えてくれる一冊である。