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商品説明
わが国の自販機工業、そして7兆円の販売ルートを作ったのは、明治以来の日本産業本流の外にいた人たちだった。日本全国いたる所に立ち並ぶ550万台もの自販機の陰で繰り広げられた、開発、製造、販売を巡る熱き戦いの物語。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
鈴木 隆
- 略歴
- 〈鈴木隆〉日本経済新聞社、日経BP、格付投資情報センター(R&I)に勤務。1981〜83年日経産業新聞編集長。著書に「日本のインフレ」「滅びの遺伝子」など。
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紙の本
静かにうなる冷蔵庫の音を聞き、機関銃を思う夜。
2007/06/16 22:33
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Living Yellow - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は現在、飲料系の自動販売機製造のトップシェアを誇る富士電機という会社を軸に、昭和30年代から現在にかけての飲料系の自動販売機メーカーの開発・シェア競争を追った一冊だ。
当たり前のことだが、自動販売機の本格的な普及の歴史は戦後高度成長期以降、まさに戦後資本主義の疾風怒濤の時代であり、また日本が中進国から先進国の仲間入りをする過渡期と重なる。そして、本書でも自動販売機の初期の普及競争はやはり、コカ・コーラVSペプシで始まっている。まず米国の本社の商品テストに合格しなければならない時代。
しかし、多くの当事者へのインタビューからなる、本書を読んで痛感したのは、日本の軍事テクノロジーの流れが、戦前〜戦中〜戦後と連続して、自動販売機に代表される民生機に連なっているということだ。
戦後直後、軍需産業を担っていたエンジニアたちが大量に職を失った。いわば、エンジニアのインフレである。その豊富な人材から様々な民生機の基盤が生まれたという構図が、本書を読んで、改めて浮かび上がってきた。
例えば、自販機製造において、最初に富士電機に立ちふさがるのは新三菱重工(財閥解体で分割された三菱重工、のちにふたたび現在の三菱重工に結集する)である。なぜゼロ戦を作っていた会社が?当時は日本での航空機の製造は制限されていた。そこで優秀な技術陣を擁しながら彼らに与える仕事がなく(将来の航空機復活をにらんで技術陣は確保しておきたかったのだろう)、新三菱は「ダボハゼ」のように、自動販売機にも乗り込んでいた。そしてライセンス生産が主とはいえ日本での航空機製造が復活するのと前後して自動販売機製造から撤退していく。
そして次なるライバル、三洋。三洋の自動販売機技術はアイスクリームストッカー(昔、駄菓子屋の店先にかならずあったあれである)での蓄積に基づき、その冷蔵技術は優秀なコンプレッサー、そしてそのコンプレッサーの技術は担当技術者の戦中の機関銃製造(機関銃は火薬の燃焼ガスの活用[薬莢の排出→給弾サイクル]において精密なテクノロジーの固まりだ)経験を原点にしていた。
そして営業・海外ライセンス契約などにも、かなり戦前・戦中の人脈の影響が伺える。
無論、本書では、大阪万博での熾烈な採用争い、瓶→缶→HOT/ICE両用機→多品種化→ペットボトルと絶え間なく続く大変化、ビール戦争、JTの参入、コカ・コーラ社の管理体制の変化、アルコール自販禁止、環境問題など、現代までの変化を通観し、飲料系自動販売機の戦後史として読むに耐える力作である。
ただ、紙幅の関係であろう、営業競争史に多くの比重が置かれているため、個々の技術の解説などを、もう少し詳しく、図版などを加えて解説していただけると、ありがたかった。しかし、コンビニの総売上にも匹敵する自動販売機業界の全体を俯瞰するためには、有用な一冊だろう。