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商品説明
政治・経済・社会を統合する媒介環として財政をとらえ、総合的な社会科学としての財政学の構築をめざす体系的テキスト。財政投融資などの制度変更を反映するほか、データ更新、格差問題など新規のトピックスを盛り込む。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
神野 直彦
- 略歴
- 〈神野直彦〉1946年埼玉県生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。同大学院経済学研究科・経済学部教授。専門は財政学。著書に「二兎を得る経済学」「地域再生の経済学」など。
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紙の本
「イースタリンの逆説」
2008/01/31 17:55
11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良書普及人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私はロンドンに来るにあたって、神野直彦先生の本書を持参し、少しずつ読み進めているが、学生の初心に帰る気がする。
経済学、財政学は、何のためにあるのか、ということを常に問いかけられながらのお話は、聖書を読むような気分だ。経済学の一般の教科書にありがちな無味乾燥な感覚は皆無だ。
その神野先生は、最近、「誰をも不幸にする豊かさ」というお話をされている。神野先生によると、豊かさと幸福との関係には「イースタリンの逆説」が妥当すると考えられるのだそうだ。豊かさと幸福との間に相関関係があることを見出せるのは、貧しい国に限られていることを思えば、ある一定水準の豊かさに到達すると、豊かさと幸福との間には関係がなくなるということが真理だといってよい、と。
神野先生は、現在の日本の経済政策を見て、豊かな者をより豊かにすることが目指されているとし、こうした経済政策を正当化する背後理念は、トリクル・ダウン効果であり、「豊かな者がより豊かになれば、その富のおこぼれが貧しい者にまで滴り落ちる」という理論であるが、実はそれが妥当しないと指摘する。
何故かというと、「アダム・スミスやリカードがトリクル・ダウン効果を説いた時には、富は使用されるという前提が存在した。しかも、人間の欲望には限度があるという想定があった。つまり、豊かな者がより豊かになれば、使用人の報酬を引き上げるなどというトリクル・ダウンが生じると考えたのである。ところが、現在では富は使用されるために所有されるのではない。富を所有することで、人間を動かそうとする。つまり、権力を握るために富は所有されるために、トリクル・ダウン効果は生じない」と断言する。
現在のオイルマネーを主体とするヘッジファンドの横暴な振る舞い、或いはサブプライム問題の発生過程を見ていると、この指摘は正鵠を射ていると思わざるを得ない。豊かな者をより豊かにする経済政策は、誰も幸福にはしないことになる。時代の転換期にふさわしい、人間を真に幸福にする経済・財政理論を構築する必要がある。