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紙の本
空を見上げる古い歌を口ずさむ (講談社文庫 pulp‐town fiction)
著者 小路 幸也 (著)
みんなの顔が“のっぺらぼう”に見える—。息子がそう言ったとき、僕は20年前に姿を消した兄に連絡を取った。家族みんなで暮らした懐かしいパルプ町。桜咲く“サクラバ”や六角交番...
空を見上げる古い歌を口ずさむ (講談社文庫 pulp‐town fiction)
空を見上げる古い歌を口ずさむ
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商品説明
みんなの顔が“のっぺらぼう”に見える—。息子がそう言ったとき、僕は20年前に姿を消した兄に連絡を取った。家族みんなで暮らした懐かしいパルプ町。桜咲く“サクラバ”や六角交番、タンカス山など、あの町で起こった不思議な事件の真相を兄が語り始める。懐かしさがこみ上げるメフィスト賞受賞作。【「BOOK」データベースの商品解説】
【メフィスト賞(第29回)】【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
ファンタジー×ミステリー
2018/07/29 09:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
所々読みづらい部分はあったけれど、それらを含めた上でも、「ああ、こういう世界なんだな」と妙に納得してしまう説得力がありました。
紙の本
小路ワールドに引き込まれた
2013/07/18 18:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:八犬伝 - この投稿者のレビュー一覧を見る
緻密な展開で、次はどうなる
とページをめくる楽しみ
素晴らしい世界が、ここにありました。
紙の本
パルプの町のふしぎな話。
2008/03/18 17:46
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ばー - この投稿者のレビュー一覧を見る
懐かしい、と思うのは人の勝手で、それらが持つイメージは多種多様。だけど、それを確実に想起させる、もしくは想起させずにはいられないもの、というのは確実に存在する。漠然とした、「懐かしさの塊」みたいなものはどこかにあるし、それらのひとつが物語になることもある。
この作品を読み始めた時、まず頭に浮かんだのは「いしいしんじ」で、あっ、似てるかも、なんて思った。彼の文は童話的で、だからこそどこか薄ら寒いほど残酷で幻想性を持っている気がするんだけど、小路幸也のこの作品から醸し出されるのは、童話というより民話に近く(完全に私のイメージの話ですが)、そう思っていたらやっぱり、「稀人」なんてキーワードが出てきた。もちろんミステリなんだから人は死ぬけど、ありがちな殺人ではない。ミステリでありつつ、雄大というかなんというか、どこかのほほんとした雰囲気がある。だからかどうか、器用なぼかし方で、重要な所が描かれていない。煙に巻く、というより、「そうなっているのだから、そうなのだ」なんて超自然的な作為を感じる。民話や伝承などをアイテムに、というのではなく、あくまで描かれるのはその内部なのであり、やっぱりそれらにミステリがくっついていると私は感じる。
「ぼく」の息子がある日、「人の顔がのっぺらぼうに見える」と言った。
「ぼく」は20年前に別れてそれっきりの兄に連絡を取ることにする。
なぜなら彼は、「もしも身の回りで人の顔がのっぺらぼうに見える人が現れたら呼んで欲しい」と「ぼく」に言ったからだ。
再会を果たした兄は、自身の秘密と共に、過去の事件を語りだす。
そう、全てはあの「パルプの町」で起こったことなのだ。
第29回メフィスト賞受賞なのですが、ミステリ的な観点というのは、この作品に対しての幾分的外れな意見になるとは思うけど、とりあえず。「のっぺらぼう」という誰もが知ってる超自然をミステリで読むのは初めて。そうなんです。たとえ犯人を見たとしても、「顔が分からない」んだから推理の幅が狭まる。これは盲点でした。ただの能力ではなく、それにまつわる苦労などもちゃんと描かれてます。かといって湿った話になるのでもなく、小学生(回想の中の兄)が話の主役なので、深く潜ったりはしません。「ただ身についてしまったものだから」という雰囲気。明かされる主人公の秘密、世界の秘密と共に、超自然でまとめてます。
誰が悪で、誰が善か。
【解す者】、【違い者】という二つの極みの間に【稀人】として主人公は放り込まれ、嫌でもその二項対立に悩まされますが、これは普遍的で、しっかりとしたテーマです。解説でも触れられているように、これは現代社会の様々な物にあてはめる事が出来、たくさんの事例から教訓を学べますが、ではこの作品の懐かしさはなんなのか。
「ぼく」の兄は、【稀人】として生きる上で、間接的にとはいえ、父を殺しました。人類の調停者として親族を殺し、家族の元を去りました。
冒頭で述べられているこの事実からも、「話はそう簡単に折り合いがつくもんじゃないんだよ」なんて声が聞こえてくる気がします。一番大変なのは、善悪どちらかなのではなく、そのどちらにもならないものであり、兄の【稀人】としての20年の歳月は、そのままその苦労を忍ばせています。
それでいて、その事実を「回想」として偲ぶ兄の姿に、懐かしさの裏にある、ぼんやりとした強さを見受けずにはいられないのです。
懐かしさには本当にたくさんの顔があり、それこそ我々の顔のように、のっぺらぼうではないということを強く感じさせてくれる、そんな物語です。