紙の本
学習塾経営のかたわら哲学世界と日常世界との回廊を建設してきた人ならではの洞察がここに
2007/12/14 14:45
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:仙道秀雄 - この投稿者のレビュー一覧を見る
題名が目にとまり、高校生の長男のためになるかも、と思って読み始めたが、なんのなんの。
今年読んだなかで最高の書物のひとつであった。芸術論、死生論、老年論、宗教論などどれをとってもさすがに市井で哲学に打ち込んできた人は言うことが違う。
よく練れている。
翻訳哲学では断じてない。学習塾を経営しながら哲学の世界と日常世界との回廊を建設してきた人ならではの洞察にあふれている。言葉に力がある。
もちろん形而上学表現のできる一流のプロでもあり、ご存じヘーゲルの精神現象学はこの人の新訳で蘇ったと言われている。
来年は長谷川さんの新訳で精神現象学を再読し、できれば長谷川さんにお目にかかりたい。その前に本書のノートを作っておかねば。
今度の正月のテーマはこれだ。
ぜひとも皆さんお読みください。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ロドニー - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルにあるように高校生のための入門書であるならば、これを愛読書とする僕はきっと高校生なのでしょうな。さしずめ、在野の高校生というところでしょうか。
この本に見つけたものは、著者の豊かな感性とそれを見事に読者に伝えることのできる知性、そういうものに憧れる読者(僕です。)自身の健気さ。あるいはもはや高校生ではない方々には共感(それとも…。)となるのでしょう。
何度も読み返したくなる小説のような感触といったらいいでしょうか。
いらんことを書くようですが、欲というものはなにかと出てくるものですね。ようし。次は大学生ってのになってみたい。
紙の本
わかりやすい
2020/06/23 09:07
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
哲学という近寄りにくい分野が、わかりやすく解説されていて、よかったです。高校生にぴったりなトピックスもあり、読みやすいです。
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『自分と向き合う』
・思春期の不安と孤独は,同時に,世界とずれた自分と向き合い,自分らしい生き方への模索と向かう第一歩だ.
・世界と自分とのあいだのずれを自覚したとき,世界に帰一するのではなく自分と向き合うことで世界との関係をいっそうの深みにおいてとらえようとするのがデカルト哲学.
・このように切実に自分の生き方を模索することこそ,人間らしい生き方なのである.
『人と交わる』
・他人の人となりに目がいくとき,いやでもその他人と自分との違いを意識せざるをえない.自分と他人の違いと共通性をともども意識しつつ,深め,おもしろがる.それが,人となりへの興味を軸とする交わりの基本だ.
『社会の目』
・人間は,社会的存在の不可欠の一要素として,社会の目を意識して生きていく,生きていかねばならないという事実がある.
・社会の目に従って生きる生き方と,抗って生きる生き方.前者は,社会の目がよしとする生き方と,個々人がみずから生きたいと思う生き方の間の葛藤を,社会の目のほうに力点を置いて解決しようとする生き方.後者は,個人を個として独自の価値を持つ存在ととらえる個人主義であり,近代的な考え.社会にゆとりが生まれた証拠.
『遊ぶ』
・遊びの世界の楽しさとは何か?人は,みずから緊張状態を作り出そうとし,そのなかに自ら溶け込もうとしている.そういう気分の高揚が遊びの基本要素の一つだ.不確定の状況に身を置く不安と,自他の工夫によって不確定を確定へともたらす主体性の発現とがからまりあって生み出されるのだ.
『老いと死』
『芸術を楽しむ』
『宗教の遠さと近さ』
・しあわせな毎日を送っている人は宗教とは縁が薄い.生きることを苦しく思っている人こそ宗教に近い人だ.
・「信じる」とは何か.日常生活では,不確かだな,という思いを抱きつつ,とりあえずこうだと決めること.宗教では,疑いのあるものを信の力によって疑いなきものたらしめる.
----------以下感想----------
こういう本を読むと,自分の感情がどこから生まれてきていたのかがよくわかる.
哲学もいいもんだ.
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「高校生のための」と前書きしてありますが、アイデンティティーに揺れる青年期の人たちだけでなく、或る程度事故を確立したと考えて日々を淡々と営んでいる人も揺るがせる、貴重な著作だと思います。
抽象的な知と思考の在り方をどう具体化し、現実世界に生かしていくかを追求し続ける著者の姿は、宮城谷昌光作品の主人公たちの生き様を思い出させました。そのときそのとき、一瞬一瞬をどう生きるのかという問いに全身で答え(応え)ようとする身の処し方だと思います。
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[ 内容 ]
「自分」とは、「社会」とは。
私たちの「生きにくさ」はどこから来ているのか。
難解な語を排し、日常の言葉で綴る待望の哲学入門。
[ 目次 ]
第1章 自分と向き合う
第2章 人と交わる
第3章 社会の目
第4章 遊ぶ
第5章 老いと死
第6章 芸術を楽しむ
第7章 宗教の遠さと近さ
第8章 知と思考の力
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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高校生向きというので読んでみました。でも私にはちょっと難しくて分かりづらいところもありましたが、哲学って深いんだと思えるようになりました。
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「自分」とは、「社会」とは。私たちの「生きにくさ」はどこから来ているのか。難解な語を排し、日常の言葉で綴る待望の哲学入門。(「BOOK」データベースより)
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年末にふらふらして電車のったりミスド行ったりして読んでた。高校生じゃないですが。
哲学っていうと人の名前や考え方の名前から入っていきそうだけどこれにはそういうの全然出てこないです。すごい根本的なことを書いてるだけです。解決ではないし。まあそういうことを考えるのが哲学なんだよってことですね。
考えるための橋渡しにはなるかもしれないけど、ちゃんと哲学の勉強をしたい人は別の本を手に取った方がいいと思います。
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著書は、「哲学」や「思想」は「個人の人生」と、どのように関わるのかを記す。答えは、「人生を楽しむ」ためというのが本書の主張である。
著者は、塾に通う子供たちと山奥の合宿や演劇祭を行い、その子供の親たちと付き合い、PTAや地域の活動など、ながい模索を経て、「まわりに気兼ねしないで自分の考えをきちんと提示する魅力的な人物」や「一人の人間の個性的な生き方を支えるに足る透明な知と思考」に出合う(p208参照)。「人生を楽しむ」哲学者・長谷川宏とその人の魅力を髣髴とさせる一節。
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「高校生のための」とタイトルにはあるが、著者も“はじめに”で書いているように、誰が読んでもいい内容です。哲学というと言葉遊びのような文章をこねくり回したり、やたらと小難しいイメージがあるけれど、この本は入門というだけあってとっつきやすい。第1章の「自分と向き合う」思春期にかけて、それまで外に向かっていた意識が押し返されて自分へと還ってくる。そこが哲学のはじまりなのかな?第6章の「芸術を楽しむ」もこれまで自分が考えていたような芸術を楽しむには知識が必要だという思い込みをバッサリ否定していて新鮮だった。
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「哲学」とは便利なことばで、何か小難しいことがあれば、何でもかんでもそれで済まされてしまうという風潮がある。
以前、友人が言っていたことだけれど「趣味で、哲学を勉強しています」というのは更に便利なことばだ。それを言うと、相手は「スゴイ!」とか「頭良さそう!」とかなるわけで。
でも、その実、そこで勉強している「哲学」というのは、昔誰かが言っていたことを暗記しているに過ぎなかったりする。ドヤ顔で「哲学では~」とかのたまっている人に限って、そういう傾向が強い。それ、別にアナタの凄さじゃないですから。
さて、そんなこんなで「哲学」の意味というのは、結局よくわからないのだけれど、本書は様々なことを考えさせてくれる。「高校生のための」と題されているが、長谷川さん自身が述べているように、別にその点に力が入れられているわけではない。もちろん、中には高校生の頭をこねくり回すような記述もあって小気味良いのだけれど。
そして、生きていく上で避けられない事々に、長谷川さんなりの見解を示していただけたということには、素直に「ありがとう」と言いたい気もする。散々悩んだ挙句、答えが出なかったようなことにも回答していただけているので、長谷川さんの見解に納得できれば、それは自分の中の一つの結論ともなる。ただ、やっぱり本書の正しい使い方は、長谷川さんの見解にナニクソと思って、自分なりの見解を築き上げることだとも思うんだ。
ところで、高校生が本書を読んで、もし楽しめなかったとしたら、それは国語教育、あるいはその指導にも責任があるのかもしれないと思ったり思わなかったり。
【目次】
はじめに
第1章 自分と向き合う
第2章 人と交わる
第3章 社会の目
第4章 遊ぶ
第5章 老いと死
第6章 芸術を楽しむ
第7章 宗教の遠さと近さ
第8章 知と思考の力
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筆者は学習塾の講師という立場に身をおく在野の哲学者である。哲学という自由度の高い学問と、極めて実用的な学習塾での授業という両方をこなしていること自体が私にとっては興味深いものであるが、そのほかにも様々な行動を通して知の実践をおこなっている方のようである。
タイトルにあるように高校生に向けられた本書では、難しい哲学用語を極力避ける方針が貫かれている。引かれている例文も読者を煙に巻くという類のものはほとんどない。ただし、述べられていることはいずれも哲学の基本的課題というべきものばかりであった。
私は最終章の「知と思考の力」に注目をした。学ぶとはどういうことなのか、私たちは日常の学習に対して無関心であることを痛感させられたのである。学習には大学受験とか就職とか資格取得とか目的があっておこなうものがある。これがいま私たちが考える学習の大半のイメージである。しかし、利害とは無関係に純粋に学びたいことを学ぶという学習が別にある。それを追求するためには場合によっては既存の枠組みの中では難しいこともあるというわけだ。
筆者は大学からはなれ市井に身をおくことによって、周囲の人々の中に潜在的に存在する普遍的な知と思考を感じ取る。こうした謙虚さとでもいうべき態度が学ぶものには必要であることを気づかされるのだ。
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ほとんど術語なしに書かれた高校生向けの本。あlくまでも入門書なので、ありふれた結論に陥っている感もあるが、在野の哲学者としての論考をじっくりたどるのは楽しかった。
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「自分と向き合う」「人と交わる」「社会の目」「老いと死」
といった、人生におけるテーマ8つについて論じた本。
哲学というほど大げさなものではなく、もっととっつきやすい
人生論的な内容です。
高校生でも十分読めるけど、この本の内容を真に実感するのは
もっと後になってからだろうな。
誰もが漠然と感じていることをよくここまでわかりやすく
日本語に落とし込んで表現したもんだと感心しました。
普段の生活をゆっくり振り返るきっかけともなる良書。