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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2007.9
- 出版社: WAVE出版
- サイズ:20cm/442,59p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-87290-309-6
紙の本
タイガーフォース 人間と戦争の記録
著者 マイケル・サラ (著),ミッチ・ウェイス (著),伊藤 延司 (訳)
「タイガーフォース」とは、南ベトナム駐留米軍の第101空挺部隊に所属した45人編成の小隊のこと。当時は陸軍の公式記録に名前のない幻の部隊で、約7カ月にわたり、非武装の村を...
タイガーフォース 人間と戦争の記録
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商品説明
「タイガーフォース」とは、南ベトナム駐留米軍の第101空挺部隊に所属した45人編成の小隊のこと。当時は陸軍の公式記録に名前のない幻の部隊で、約7カ月にわたり、非武装の村を焼き払い、数百人の住民を殺戮した。この事実が世に知られたのは、40年近く後の2003年。米オハイオ州の地方紙「トレド・ブレード」が、幻の小隊の知られざる残虐行為を、執拗に追跡したCID捜査官の膨大な調書を見つけ出し、初めてその存在と暴虐の全貌を明るみに出した。【「BOOK」データベースの商品解説】
【ピュリッツァー賞調査報道部門(2004年度)】ベトナム戦争下7カ月にわたり、非武装の村を焼き払い、数百人の住民を殺戮した幻の軍隊「タイガーフォース」。隠ぺいされてきたその存在と暴虐の全貌を、綿密な資料と取材から明らかにする。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
堀り起したひと、掘り起こされたもの
2008/01/24 22:19
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ばんろく - この投稿者のレビュー一覧を見る
最前線の小隊タイガーフォースによる七ヶ月間に渡る民間人虐殺。21世紀になって初めて明るみに出たベトナム戦争中の事件は、米地方紙の連載記事として発表された。記事の著者(本書著者)らは2004年ピュリッツァー賞を受賞。30年以上前の記録を丹念に掘り起こした気力、根性は、巻末の取材源に関する記述からも目を見張るものがある。
本文は事件自体を描いた前半と、事件後の捜査を描いた後半の大きく2つに分かれる。67年の小隊タイガーフォースの戦争犯罪に対する捜査は、米国がベトナム戦争から手を引く間際の72年に始まり、75年に担当捜査官の突然の異動という形で幕を閉じている。その資料が2002年になって掘り起こされ、著者らの綿密な取材活動によって見事に肉付けをされた上で、白日の下にさらされたという案配である。
しかし本書の評価について言うならば、著者らの取材活動に対する評価と、内容に関する評価とを、分けて考えることが大切かもしれない。テーマそのものに関して言えば、今更明らかにされたところで何だという感は拭えないのである。許されざる話ではあるが、戦時中の残虐行為は珍しいことではなく、その様子を描くという点だけに関して言えば、書籍・映像ともにより臨場感のある作品は他に存在する。
敢えて本事件で注目すべき特異な点は、本文中でも強調されるように、行為が兵個人の錯乱によるものでは済まされず、45人程の小隊単位で約7ヶ月間も続き得たという、組織としての構造上の問題である。作品中でも残虐行為を上層部へ告発するシーンが描かれてい
るが、隊の成果への必要性からその告発をもみ消すような、軍としてのモラルと、それを維持するための仕組みが問題にされるべきなのである。しかしこの点への具体的な追求はほとんどなされていない。これは本書の著者らが言及しなかったというよりも、当時の捜査が妨害・中断されていることに大きな原因があるように思える。そのため特に前半部については、悪く言えば小隊と敵ゲリラという言葉だけでも読み通せるほど、一般的な戦争物語でしかないということになる。兵士達の視野は実際にそれほど狭かったのだろう、そして結局それ以上広い視野で問題を追及する機会はなかったということである。
タイガーフォースの活動が67年、75年の捜査の終結(中断)からでも25年余の歳月が経過している。今明らかになったからと言って、隠蔽した者が勝利したという事実は変わらない。戦争経験者を始め、地雷、枯れ葉剤とベトナム戦争による被害は終わってはいない。しかし本の内容に関して言えば、否応なく過去の出来事になりつつあるということを感じずにはいられない。内容が平凡であるにもかかわらず、若い記者の”時代をこえた”取材能力に対して賞が与えられたことからも、それは一層強く感じられる。本書をベトナム戦争について書かれた書物というにはあまりふさわしくないかもしれない。あくまで現代の新聞の連載記事として、今とこれからの出来事に政治的に結びつくことによって意味を持つものであろう。書籍化され、さらに訳書となった姿を見ると、随分と遠くまで来てしまったように感じられるが、もともとの姿は、米国民が世界各地の掃討作戦へ関心を示すのに
大きく貢献したのかもしれない。