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紙の本
風の名前 上 (キングキラー・クロニクル)
著者 パトリック・ロスファス (著),山形 浩生 (訳),渡辺 佐智江 (訳),守岡 桜 (訳)
おとぎ話の存在と思われていた、青い炎の殺人集団チャンドリアンに旅芸人の両親を殺されたクォート。復讐のため、そして自らの生き残りをかけ、彼は風の名前を呼ぶ秘術を学びに大学に...
風の名前 上 (キングキラー・クロニクル)
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商品説明
おとぎ話の存在と思われていた、青い炎の殺人集団チャンドリアンに旅芸人の両親を殺されたクォート。復讐のため、そして自らの生き残りをかけ、彼は風の名前を呼ぶ秘術を学びに大学に赴くが—田舎宿屋の亭主に身をやつした伝説の英雄が語り起こす、壮大な物語の序章。綿密な世界観と複雑な人間造形に裏打ちされた、子供だましでない大人のためのファンタジー、ここに始まる。【「BOOK」データベースの商品解説】
【クィル賞】おとぎ話の存在と思われていた、青い炎の殺人集団チャンドリアンに旅芸人の両親を殺されたクォート。復讐のため、そして自らの生き残りをかけ、彼は風の名前を呼ぶ秘術を学びに大学に赴くが…。大人のためのファンタジー。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
パトリック・ロスファス
- 略歴
- 〈パトリック・ロスファス〉1973年アメリカ生まれ。ウィスコンシン大学在学時から地元紙向けコラムの執筆や、ラジオのコメディ番組の脚本を手がける。「風の名前」でクィル賞などを受賞。
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紙の本
赤貧ヒーロー
2008/07/28 21:45
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Leon - この投稿者のレビュー一覧を見る
諸国でその名を知られるクォートは、”無血のクォート”や”キングキラー”などの異名を幾つも持ち、その英雄的な逸話は今も人々の語り草となっている。
ところが、現在のクォートはといえば、コートという偽名を名乗り、田舎町で細々と宿屋を営む日々を送っていた。
人々の知る英雄クォートが、如何にして宿屋の主人コートになったのか、その間を埋める物語、紀伝家に請われる形で本人自身の口から語られる。
三部作構成の初巻にあたる本書では、旅芸人である両親が座員諸共に謎の集団によって惨殺された顛末と、身寄りをなくした少年クォートが都会の下町で生き延びるために知恵を磨いていく様子が語られ、最終的には両親の仇の手掛かりを求めて秘術校の門をくぐり、そこで様々な事件に対処しながら頭角を現していくのだが・・・
とにかく主人公が貧乏である。
回顧録の時間軸の中で、その半分ぐらいは靴も買えずに裸足でおり、赤貧洗うが如しの体だ。
後半は多少の収入を得られるようになるが、常により多くの出費を余儀なくされて蓄える余裕などは全く無く、高利貸しにまで頼る始末。
金が無いことは常に意識されるようになっていて、例えば秘術校では毎学期末の試験の成績如何によって次学期の学費が決まる仕組みであるため、蓄えも支援もないクォートは何時も退学の瀬戸際という状況だ。
天才肌で手先も器用、さらには女性にも持てるとなれば、秘術校で彼の宿敵となるアンプローズでなくとも妬まずには居られない人物だと思うが、クォートの貧乏さはキャラクター造形上の重要なポイントだろう。
如何な英雄も、弱点や欠点が一切無いとなれば魅力も半減しようというもの。
魔法体系を二つに大別しているという点もユニーク。
共感魔法は、多少の差異はあれども世界各地にその伝承が見られるもので、本書の中でもより一般的なものとして扱われるが、熱量計算を絡めるなどしてリアルさを増しており、「杖を振ったら火の弾が飛び出す」式の世界観とは一線を画している。
より高度な魔法としてル=グウィンの「ゲド戦記」で見られるような”名前による魔法”の存在も仄めかされるが、ファンタジーである本書の中ですら神話やお伽噺の類として認識されており、本格的に扱われるのは次巻以降となりそうだ。
また、両親を殺害した犯人を見つけて仇を討つことがクォートの大きな目的となっているが、「チャンドリアン」と呼ばれるその集団は神話や伝説の中にしか名前の現れない存在とされているため、神話と歴史の接点を見出すことが当面の目標。
この「架空歴史ミステリー」とも言うべき側面が作品全体のスケールを大きくし魅力を向上させている。