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商品説明
最先端の量子コンピューターで「神」を創りだすことなんてできるの? 高コストでハイリスク、企業も持て余す量子コンピューター。窓際社員が掲げた事業は、なんと、占い事業だった…。「神様のパズル」の番外編。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
機本 伸司
- 略歴
- 〈機本伸司〉1956年兵庫県生まれ。甲南大学理学部(現理工学部)卒業。出版社、映像制作会社を経て、フリーランスのPR映画ディレクターに。「神様のパズル」で第3回小松左京賞を受賞。
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紙の本
「ただの適当やない。やるだけやって、その先を適当にやるんや。最初から適当なのとは違う」
2008/07/03 22:52
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:成瀬 洋一郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ごく普通の大学や企業から物語が始まり、それがやがて「宇宙」とか「救世主」を創るという、とんでもなく破天荒なプロジェクトに発展していくというのが、機本伸司が得意とするパターン。マッドサイエンティストの怪しげな実験室ではなく、環境の整った最先端の研究施設の中で、傍目には怪しい実験が繰り広げられます。
今回の『神様のパラドックス』も直球ど真ん中で来ました。
宇宙、救世主と来たら、もう次は神様を創るしかありません!
○
アプラDT社の研究者・小佐薙は崖っぷちに立っていた。
なんとか開発に成功した光解析型量子コンピュータ“久遠”は、世界トップクラスと自負する性能だったが、量子コンピュータの世界は、さまざまな方式のシステムが試行錯誤しつつ鎬を削っている世界。全長40m、翼幅30mの全翼飛行機を本体とし、計算可能時間は弾道飛行中に無重量状態になる30秒しか無いというアプラDT社のコンピュータは、運用の困難からいまだリースの問い合わせ1つない状況だった。
数千億の予算を投入したプロジェクトではあったが、このままでは銀行からも株主からも総スカンを食うこと必至であり、早急に結果を出せなければプロジェクトからの全面撤退というのが役員会の結論だった。
ところが、営業活動で立ち寄った母校の学園祭で、占い同好会のブースを覗いたことから、小佐薙は1つのアイデアを思いつく。何万年もかかる計算が瞬時にできる量子コンピュータで占いコンテンツを始めたら事業としてなんとかなるのではなかろうか?
もちろん、ならないのである。
さらにピンチである。
「この難局を乗り切るには、神さんを作るしかない」
小佐薙が開き直ったとも血迷ったとも取れるプロジェクトに周囲を巻き込んでいくのに、さほどの時間はかからなかった……。
○
面白かったです。1作ごとに読みやすくなっているかな。
冒頭、学園祭のシーンから一転して「量子コンピュータ」についての解説が延々と続くので、量子コンピュータについて概論を頭に入れたい人はともかく、自分としては「まったく分からんなあ」という展開だったのだけれど、そこでメインキャラクターの1人である直美に救われました。
……直美には、量子コンピュータの説明はほとんど分からなかった……
そうか、分からなくて良いんだ!
そう思ったら気楽になって、後はクライマックスの嵐の洋上シーンまで一気呵成に読み進んでしまいました。神様を「定義」するところから始めて、人の抱えている根本的な悩みであるとか、量子型コンピュータの通訳に投入されたノイマン型AIの葛藤とかまで網羅したプロジェクトXという雰囲気かな。
この作品はタイトルが似ている『神様のパズル』のスピンオフ作品という位置づけのようですが、確かにパズルの登場人物もパズルのように隠されていて、それも読み終えての楽しみです。