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封建制の文明史観 近代化をもたらした歴史の遺産 (PHP新書)
著者 今谷 明 (著)
封建制は民主制の反対概念として、悪しきものの形容詞にされてきた。しかしそれは正しい評価なのか。福沢諭吉、梅棹忠夫など諸先学の学説を丹念に追いながら、歴史遺産としての封建制...
封建制の文明史観 近代化をもたらした歴史の遺産 (PHP新書)
封建制の文明史観
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商品説明
封建制は民主制の反対概念として、悪しきものの形容詞にされてきた。しかしそれは正しい評価なのか。福沢諭吉、梅棹忠夫など諸先学の学説を丹念に追いながら、歴史遺産としての封建制に光を当てる。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
今谷 明
- 略歴
- 〈今谷明〉1942年京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。文学博士。都留文科大学学長。著書に「近江から日本史を読み直す」「象徴天皇の発見」など多数。
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紙の本
日本における「封建制」なる用語をめぐる日本人の「歴史観の歴史」
2011/09/13 15:41
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サトケン - この投稿者のレビュー一覧を見る
数々の名著を生み出してきた、室町時代を中心にした日本中世史の権威が取り組んだ、日本語の「封建制」なる用語をめぐる、近代日本における日本人の「歴史観の歴史」である。
事実関係をトピックとして取り上げながら、時系列でたどったような構成になっている本書だが、わたしには本書のメッセージは、「戦後」の日本歴史学というものが、いかにサヨク勢力によって汚染され、歪められていたかということを暗黙にうちに語っていることのように思われた。つい最近まで、曇りなき眼で社会科学を研究することがいかに困難な課題であったこと語っている内容なのだ。
わたし自身、本書に登場する福田徳三や上原専禄といった大御所の末端に連なる後輩として、大学学部では「歴史学」を専攻した人間だが、いまだソ連が崩壊する以前の1980年代前半においては、「社会科学」をめぐる状況は、それは酷いものだったのだったのだ。
「戦後」の日本社会をリードした「近代主義者」たち、すなわち丸山真男・大塚久雄・川島武宜といった進歩的学者がまきちらした害毒によって汚染された「空気」が充満していたのが社会科学の世界であった。また、いまでは想像もつかないだろうが、「発展段階説」などという愚論や、不毛としかいいようのない「封建論争」なるものが、わたしが大学在学中の1980年代前半でもまだ続いていたのである。この両者とも本書では直接の言及はないが、根強く残っていたマルクス主義歴史学(=史的唯物論)の残滓としかいいようがない。
本書で特筆に値するのは、ドイツ出身でアメリカに移住した社会科学者ウィットフォーゲルと生態学者の梅棹忠夫がほぼ同時期の1957年に、それぞれ異なる観点から提唱した学説を大きく取り上げていることであろう。それぞれ『東洋的専制主義論』と『文明の生態史観』にまとめられた学説は、発表当時は日本ではごうごうたる非難を招いたようだが、1991年のソ連崩壊によってこの二人の理論の正しさは実証されることとなった。この点については、ぜひ湯浅赳男氏の一連の著作を参照されたいと思う。ウィットフォーゲルをタブー視してきた日本の社会科学の世界になにがあったのか詳しく知ることができる。
京都出身で京大経済学部を卒業し、大蔵省のキャリア官僚でもあった異色の歴史学者・今谷明氏。同郷の先輩にあたる上原専禄や梅棹忠夫への敬意は読んでいてたいへん気持ちがよい。本論もさることながら、あとがきで触れられた上原専禄の隠遁生活とその死にまつわる記事の紹介には、いろいろと感じるものがった。先学へのレクイエムというべきだろう。
本書のタイトルもまた、梅棹忠夫の『文明の生態史観』を意識したものだろうか? もうそろそろ「前近代」社会を「封建的」と形容詞でおとしめるのは、完全にやめてもらいたいものだ。