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紙の本
夏が、終わる。けれど、その「日々のかけら」は終わらない!
2009/09/02 00:05
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、中高一貫のモンナンカール女子校を舞台に、その「何気ない日々のかけら」(帯より)を描いた連作漫画です。同じクラスであろう子たちが、入れ替わりでそれぞれの物語の登場人物を勤めています。クラブ活動中に拾った凧をあげようとする春過ぎ(「プロローグ」)からはじまって、次の夏休み中の出来事まで(12章「パラダイス」)のほぼ1年余りの日々を描いていきます。
本書のすごいところは、「女子高校生」「物語」という言葉からイメージされるようなもろもろを、ことごとく避けたうえで、その「何気なさ」を作りあげているところです。たとえば、同世代の関心事であろう恋愛や友情、ファッション。高校といえば、部活動、林間学校、文化祭や体育祭といったイベントごとなどなど。扱わないわけではないけれど、あえて真正面からは扱うことはしていません。たとえば文化祭の話も出てきますが、その準備中の、クラスの出し物の看板が素材になっています。おそらく著者は、多くの物語に描かれがちな華やかな出来事など、ごくまれなものでしかないということをよくわかっているのでしょう。そのうえでその「日々のかけら」を確かに描ききっているのです。なにせ、クラスの「週番」や、年末の大掃除まで物語にしてしまっているのです。その貪欲さたるやおそるべし。
ところで、「青春物語」にありがちな出来事を扱わないため、喜怒哀楽や葛藤など感情の大きな起伏は出てきません。そのため、案外に静かで落ち着いた物語展開に見えますが、そのぶんこまやかな感情に敏感です。なんだか皆から叱られてしまう一日や、夏休み明けの友人が大人びていて妙にやきもき感じてしまうところなど、絶妙です。個々人の趣味や嗜好をしっかり描いているのも印象的です。レディースデーに映画を一人見る、学校帰りのヒップホップ、ブラックコーヒー、つい茶道にめざめてしまったり・・・。「女子高校生の関心事は・・・」などと他人が括る以上に、それぞれがそれぞれの関心をもって日々を送っているのです。そのことを著者は丁寧に、そしてしっかりと描いています。
世の中、「青春小説」のような劇的な展開が日々待ち受けているわけではないのはあたりまえなことですが、こうしたささやかな(時には本人さえも忘れてしまいそうな)「日々のかけら」に一喜一憂していた(できた)のが、高校生活だったのでしょう。そんなこんなを思い出させ、感じさせてくれる秀作です。寡作な作家ですが、次作が待ち望まれます。