紙の本
台湾の日本統治時代の姿を追う
2021/04/26 22:22
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投稿者:健 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は台湾における日本統治時代の建物や遺跡を追い、取材を重ねています。その写真や文章を通じて、古き良き時代の日本が浮かび上がってくるようです。台湾への心の距離がぐっと近くなる一冊。
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台湾に居を構えて13年になる片倉さんが、日本時代に建てられた官庁建築や鉄道施設、神社や石碑、様々な建築物など「日本時代が残したもの」について、建てられた当時の様子から現在の状況までを紹介している。神社は殆どが破却されたものの、一部では施設が残されているものもある。小学校内に建てられた神社の狛犬が今も校庭に置かれ、生徒を見守っている話はとても興味深い。官庁建築や鉄道施設などは現在も現役で使われ、その多くが史跡に指定され、保存の対象になっているということに改めて驚かされる。日本は近年、このような歴史建築を安易に破壊する行為が繰り返されていて、台湾の方が歴史建築は大切にされ、残されているのではないかと強く感じる。
日本時代の日本人と台湾人(当時は日本人である)との繋がりも興味深い。出征する日本人警察官の荷物を運ぶのを自主的に手伝い、嵐の中、濁流に飲まれてしまった原住民の少女の話は愛国美談として広められたが、現地では政治的に広められたとは思っておらず、美談は美談として語り継ぐべきと思われているという。
後半には、「台湾の言葉となった日本語」の例が辞典形式で纏められている。集録されている言葉は代表的なものを取り上げたものと思われるので、語彙が充実すればこの辞典だけで一冊の本になるのではないかと思う。日本語起源の言葉は、時代が経つにつれ消えゆく可能性が高い。日本国内でも古い言葉はどんどん死語になってゆく。記録に残せる最後の時期に来ている気がしてならない。
巻末には「訪ねてみたい歴史建築と遺跡100選」という片倉さんが推薦する歴史建築の一覧がある。台湾へ何度も足を運んでいる人、台湾は二、三度目という人も、この一覧を基に街を歩いてみては如何だろうか。台北市内で買い物をするのも旅行の楽しみの一つだが、「台湾に生きている日本」を訪ねて街を歩くのも楽しいと思う。(私は46箇所訪問)
嘗て台湾人と日本人は共に生きた時代があった。多くの台湾の人々と触れ合い、丹念に取材を重ねてきた「台湾在住の日本人」の片倉さんだからこそ、書くことのできる「台湾と日本の時を繋ぐ本」といえるのではないだろうか。台湾好きは勿論、歴史に興味のある方には欠かすことの出来ない一冊です。
http://ryoyutaiwan.seesaa.net/
拙ブログより転載
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日清戦争後の下関条約で台湾割譲 1895 M28 6 17 第4代総督児玉源太郎 M31-39 民政局長 後藤新平
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2009年9月、久しぶりの台湾に行く当たって読んだ一冊。
「台湾に生きる日本」と題して、日本占領時代にもたらされた
・建築などカタチあるもの
・ヒト
・言葉
の3つに焦点を当てて書かれている。
占領時代に作られた建築のことなど、自分の興味分野に関わるところの記載があったので
大変興味深く読んだのだが、本書を通して、「白団」という組織のことをはじめて知った。
第2次世界大戦後、台湾と日本の間で行われたひそかな軍事交流。
やや大げさな表現だが、蒋介石が国民党軍の立て直しを図るために
旧日本陸軍の将校などを雇って、国民党軍に軍事教育をしたというものだ。
記述がわずかだったので、後日、これに関する本を読んでみようと思う。
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ひょっとして今一番行きたいアジアかも。しかし、台湾の歴史を知らなすぎた。台湾に日本語が残る理由に、その歴史は当然として多民族が共通言語なく存在しているという事実があることを本書で認識。(最後の台湾に残る日本語由来の言葉集は必読。時ににやりと)
日本が残したプラスとマイナスの遺産を冷静に記述していく著者のスタンスもすばらしい。
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後半の台湾に生きている日本語辞書がとても楽しい。台湾にある消え行く日本を記録したことは貴重であろう。しいていうならカラーページの色が綺麗に出て、編集されていると良いのだが。
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台湾に行きたいのに、なかなかその機会を作れなくて、ならばせめてその間に少し知識を増やしてみようと手にとった本。
台湾に残る、日本統治時代の遺構や歴史遺産を一つ一つ取り上げて、その細かな歴史を紐解いていく、という内容。大筋すらまったく知らないことばかりで、本当に何も知らないんだとびっくりしたし、勉強になった。
ヴァーチャルはもう終わり。早く企画しよう。
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[ 内容 ]
五〇年間(一八九五~一九四五年)の統治時代に日本と日本人が築いた数々の事物は、いまもこの地に生きている。
あるものは山中で風雨にさらされひっそりと、あるものはいまなお現地の人々に愛されながら堂々と。
歴史的建造物、産業遺産から日本語、日本精神まで、いまや日本と日本人が顧みることのない数多の貴重な「歴史」を、台湾は政治の波に翻弄されながらも、見事に保存しておいてくれた。
世界一の親日国のこの奇跡を、我々日本人は見逃してはならないだろう。
台湾を愛し、日本の名残をもとめて台湾全土を踏破した著者が放つ、空前の「日本遺産」ガイド!
独自研究の成果でもある「台湾の言葉となった日本語辞典」も併せて収録。
[ 目次 ]
第一部 台湾に生きている「日本」を歩く
第二部 台湾人と日本人――日本統治時代の絆を訪ねて
第三部 台湾の言葉となった日本語辞典
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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台湾は朝鮮と異なり、比較的多くの日本統治時代の遺物が遺され、現在も利用されている。そういったものを片倉先生が調査し、紹介した一冊。台湾に興味が無い人にも面白い内容になっている。
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台湾に残っている,日本統治時代の史跡や住民の心の中にある「日本」を紹介しています。戦後,台湾にやってきた蒋介石の国民党政府は,日本の統治時代のものをことごとく破壊しようとしたようです。しかし,元々いた住民の中には,「日本」のものを残そうとしてくれた人たちもいたようです。
日本統治時代,日本人と台湾人とは支配者と被支配者という関係だったはずですが,そういう関係を超えた人々の付き合いがあったのだ…という事例がたくさん紹介されています。
第3章の「台湾の言葉となった日本語辞典」はおもしろいです。語彙がかわってしまったものもあります。
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八田興一をtweetで知って、鳥頭山ダム建設を知り、明治の台湾総督府辺りが気になって、とりあえず台湾について調べてみよう!ということで。
読み終わった、というかすっ飛ばして読んだ。
日本と台湾って凄く関わりが深いのねー、でおわた・・・
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Fri, 17 Jul 2009
台湾に行きたくなった一冊
考えていたのと,内容はちょっと違ったけど, おもしろかった.
台湾全土に渡って,日本の息吹が感じられる場所や建物,石碑などを紹介している. 現地をまわって,直接人々の言葉をひろっていく筆者の心が感じられる一冊.
台湾は今の日本に於いて,どのように捉えられているのか. 私を含め多くの日本人にとって台湾の存在は 世界地図の中でかすかなものかもしれない.
しかし,日本は日清戦争以降,大戦敗戦まで台湾を支配し, 学校を作り,大学をつくり,博物館をつくり,鉄道をひいた.
その中で日本人としてのアイデンティティを台湾の人々に植えつけ そして去っていった.
その記憶は単純に消えていくものでは無く,未だに,その痕跡は多く残るという. 老人は日本語を話せるし,紅白歌合戦などは好んでみられるという 街の老人が 「一度,NHKのど自慢が台湾にきてくれることはないんかねぇ?」 という.のが印象的だった.
日本は戦後,欧米ばかりをみて,戦時戦前から目を背けた. 戦争の罪の意識か,なんなのか.変に東アジアをアンタッチャブルなものとする 意識があるようにもおもう.
台湾は自転車生産もすごいし,マザーボード,NETBOOKでまた,世界を席巻しているようにおもう.
(李登輝の力が大きかったのかもしれないが)
日本と歴史的にも文化的にも関わりが深い国であることは間違い無い. また,日中関係が経済的にも激烈に深化するなかで,関係の調整が難しくなるのかもしれないが,
とはいえ,私,まだ台湾いったことがないので, また,学会があったら 意識していってみようかとおもう.
(2015/01/01追記: 台湾にはその後行ったがイロイロいい場所だった.)
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予想外の良書だった。明日からの年末年始台湾一周旅の材料探し為に紐解いたのである。スケジュールの関係から、ここに紹介されている所のほとんどを訪れることは出来ないが、この本には台湾と日本の関係を、日本遺構の取材を通してひとつの特徴を上手く描いていると思った。それこそが、今回の旅で私の掴みたいもののひとつなのである。
日本統治時代の遺構は国民党政府時代に移ってほとんど破壊されている。それでも幾つかは残る。貴重なのは、古代の遺跡とは違って、それらの遺跡の生き証人がまだ少しだけ生き残っていて、調査をすると、まるで必然のように彼らに出会っていることである。
例えば、日本の食肉加工場があった隅には、屠殺した獣の魂を鎮める日本らしい「獣魂碑」だけは壊されずに残っていた。今はもう屠殺も行われない別の風景になっている。ところが「現在も月に二度、関係者が集まって祈祷が行われている」と、スーパーの若い兄ちゃんが告げて石碑に手を合わせて持ち場へ去っていったというのである。統治時代に日本がいいことばかりをしたとは決して著者は書かない。私も前回の旅で霧社事件の場所へ旅したのだから、良く知っている。それでも日本人の美しい心は、台湾の人たちは残そうとしてくれた。韓国との違いは、国民党政府への反発心で復古への想いがあったという事情もあったかもしれない。それ以外の事情もあったかもしれない。それはこれから究めて行きたいが、ともかくこの本には、そういう日本人の美しい心と台湾人の美しい心のコラボレーションが至るところで読めるのである。
宜蘭の飛行場跡で出会った老人、嘉義県東石郷に祀られている日本人巡査が「義愛公」として神様になってゆく過程なども、とっても興味深いものだった。
今回行くのが確定している唯一の日本遺構は、台南駅である。1936年竣工。赤煉瓦の西洋風ではなく、機能性や耐震性を重視したモダニズム建築風らしい。元は二階部分がホテルとして利用されていたらしい(台南鉄道ホテル)。レストランさえ併設されていた。今はどうなっているのか、この本は7年前に書かれているので確かめてみたい。一番線ホームは、古レールを用いて設けられた曲線屋根になって広く感じられるらしい。設計は宇敷赳夫。
2016年12月28日読了
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力作です。著者自ら現地を訪れた日本統治時代の遺構の数々。深い調査に裏付けられた事実と洞察。文章も素晴らしい。台湾を知るための基本書です。著者のご努力に敬服致します。
★5つでは到底足りません。★★★★★★★です。
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日本統治時代に建てられた建物を紹介しつつ、その建物の歴史的背景や建築の知識、人々のインタビューまでも盛り込んだ、著者力作の一冊。タイトルから予想した内容とは若干違ったが、建物が好き、歴史が好き、そしてこれから台湾に行く人にはぜひ薦めたいと思う。