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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2009.2
- 出版社: 早川書房
- サイズ:20cm/314p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-15-209002-7
紙の本
出てゆく
著者 タハール・ベン・ジェルーン (著),香川 由利子 (訳)
若く美しく学を身につけたモロッコの青年アゼルは、職につけず、姉の稼ぎをあてに細々と暮らしていた。閉塞感漂うこの国ではもう生きられない。彼は富豪の男の愛人になり、スペインで...
出てゆく
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商品説明
若く美しく学を身につけたモロッコの青年アゼルは、職につけず、姉の稼ぎをあてに細々と暮らしていた。閉塞感漂うこの国ではもう生きられない。彼は富豪の男の愛人になり、スペインでの豊かな生活を夢見る。さらに富豪を自分の姉と偽装結婚をさせ、姉をも脱出させようとするが…。策謀をめぐらす青年、密航の果てに溺死する男たち、秘かに春を売る女たち、エビ加工工場で働く小さな少女—出てゆくことを望む者たちが絡み合う苦闘と彷徨の物語。【「BOOK」データベースの商品解説】
祖国を捨てて新天地へと人生をかけた男の、喜びと苦悩と絶望を、時にリアリスティックに時に幻惑的に描く。捨てることで得るものと、得ることで失うものの意味を問いかける、現代人に捧げる哀しみの物語。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
タハール・ベン・ジェルーン
- 略歴
- 〈タハール・ベン・ジェルーン〉1944年モロッコ生まれ。87年「聖なる夜」でゴンクール賞を受賞。民族、歴史、差別などをテーマに小説を発表し、詩やノンフィクションなども手がけている。
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紙の本
幸福な文学的魔術
2009/06/17 17:00
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わたなべ - この投稿者のレビュー一覧を見る
モロッコ出身のフランス語作家の2004年の作品。90年代のモロッコで、大学を卒業したはいいが職もなく看護婦の姉に食わしてもらっている状況を突破するために故郷を「出てゆく」ことを夢見る男アゼル。ヨーロッパにこそ「真の自分の人生」があるのだと信じるアゼルは、ヘテロであるにもかかわらず富豪の男の愛人になることでスペインでの生活を実現させようとする。アゼルの姉は弟への富豪の思いを利用して彼と偽装結婚し、スペインでトルコ人と恋に落ちる。閉塞し続けるモロッコでは、誰もが「出てゆく」ことに囚われ、不信心者のくせにテロリストとなったり密航船が沈没し溺死したりエビ工場で働き肺を病んだりと複雑に錯綜する不透明な世界を彷徨うように生きている。ゆるやかに相互に連関する人物たちを、ベン・ジェルーンの筆致はどこかユーモアさえ感じさせる独特の浮遊感のある語りで淡々と描き出し、途中であの「モハ」や、さらには最終章であのスペインの才智溢れる郷士とその従者までが現れるのだが、この最終章のまったく奇妙に幸福な小説的時空間は、ちょっとこの作家でなければ書けないようなものであるように思えた。佳作。