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商品説明
廃墟と化したリゾート施設、一括返済の恐怖に脅える市長、金融機関に訴えられた町、風呂にも入れない住民たち…。NHK「クローズアップ現代」があぶりだした真実をプロデューサーが描く衝撃のノンフィクション。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
伯野 卓彦
- 略歴
- 〈伯野卓彦〉1966年神奈川県生まれ。東京大学工学部計数工学科卒業。NHK入局。「プロジェクトX」デスク、「クローズアップ現代」チーフ・プロデューサーなどを経て、編成局編成センター副部長。
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著者/著名人のレビュー
本来国が果たさなけ...
ジュンク堂
本来国が果たさなければならない役割とは何なのかについて、深く考えさせられる一冊だ。著者はNHKの報道番組のプロデューサー。かつて日本中が好景気にわいていた頃、各地で様々なリゾート開発やテーマパークの建設が進んだ。
特に第三セクター方式を国は税制優遇等で奨励し、未来はバラ色かに思われた。しかしバブルは崩壊。残された赤字施設は自治体の財政を圧迫し、被害は住民にまで及ぶ羽目に。結果的に国に騙されたと感じた人は多かっただろう。地方や中小企業といった社会的弱者を救うのが本当の政治のあるべき姿のはずだが。
紙の本
あなたの住んでいる町の財政はだいじょうぶですか
2009/06/17 21:06
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
公立病院の危機を知ったのは、銚子市民病院の休止の話がきっかけだった。なぜ、地域医療の核となる市民病院をやめてしまわなければいけないのか、奇妙な印象を受けた。「いきなり病院ごと休止でなく、規模を縮小してでも続けてほしい」という銚子市民の声もテレビで放映されていた。(なお、2009年6月現在、銚子市は再開に向けて懸命に努力している)
各地の公立病院が危機に陥っている理由は1点に絞られる。それは2007年6月に成立した「自治体財政健全化法」への対応だ。
これまでは公営企業や第三セクターなどの特別会計は、一般会計と切り離しておくことができた。自治体の財政については、本体が健全なら、特別会計の赤字は問題視されなかったのだ。ところが、平成20年度決算からは、特別会計もあわせて連結決算とし、自治体の財政状況が評価されるようになる。評価制度の大幅な変更だ。
大半が赤字といわれる公立病院の経営も、これまでのようには放っておかれなくなった。こうして、あまりにも巨額の赤字を累積させている病院は存続の淵に立たされることとなった。
このあたりの事情は、NHKのディレクター、プロデューサーであった著者が、「クローズアップ現代」などの番組で明らかにしているので、すでにご存じの方もおられることだろう。しかし、追跡取材を重ね、書籍という形でものにしてある本書の価値も高い。
公立病院は自治体の特別会計のひとつだが、本書でもっと大きく取り上げられているのは、80年代末の大規模リゾート開発の問題だ。
東北のある町では、80年代終わりに成立したリゾート法に踊らされて、身の丈に合わない投資を行った。スキー場の拡張や温泉施設の建設など。
自治体側が不安に思って、当時の国土庁に問い合わせると、「自治体には負担がありません」と言い切ったというのだから恐れ入る。また、地元選出の国会議員のねじ込みもあった。金融機関も、自治体ならば不良債権化しないだろうというので気前よく貸しこんだ。
経営にあたったリゾート会社の無責任ぶりにも開いた口がふさがらない。「自分たちはプロだ」という言葉を、自治体の首長ならば信じるほかなかった。当時は、バブルで日本列島全体が浮かれてもいた。
その後、90年代初頭にバブルがはじけ、各地のリゾートは見るも無惨に・・・。そして、こうなったあとは、国も国会議員も知らぬ顔を決め込む。今は地方分権の時代であり、自分たちのことは自分たちで決めて下さいという態度の変化。これでは、地方自治体が窮地に陥るのは当たり前というものだ。
夕張市の破綻がひところ大きく報じられたが、これに続く事例がこれから続々と出てくる心配がある(自治体の前年度の決算発表は9月あたりから始まる)。国に踊らされたあげく、時代が変わったといっては突き放されて、後始末をやらされる自治体。
無論、自治体にも甘さがあった。もっと厳しくリゾート計画を審査していなければならなかった。といっても、営利を追求するわけではない地方自治体に経営感覚を求めるのはそもそも無理があるのではないだろうか。
つまるところ、自治体財政健全化法は、後出しじゃんけんになってしまっている。一般会計と特別会計を合わせて見ていく必要があるという趣旨は理解できるが。
国は内需拡大を至上命題に、国内消費を喚起するため、第三セクターをいくつも作らせ、リゾート計画をどんどん立てさせた。地方自治体の立場からすれば、あとになってから、隠れ借金は許しませんといって連結決算を求められるのは理不尽ということになる。
財政再建団体(新しい法律のもとでは、早期健全化団体もしくは財政再生団体)に陥らないように、あの手この手で救おうとする努力もなされているようだが、はたしてどこまで免れるか。
自分が住んでいる市町村がだいじょうぶかどうか、財政状況のチェックをしてみることも、住民としては必要な時代になってしまったようだ。やれやれ。