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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2009.4
- 出版社: 朝日新聞出版
- サイズ:20cm/227p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-02-250563-7
紙の本
目白雑録 3
著者 金井 美恵子 (著)
いつかが今になって、愛ネコは18歳で逝き、時は流れ、禁煙も余儀なく、ぐるりと見渡せば、まったく、うんざり。それでも…ペンは止まらない!果敢に続く面白目白雑録。第3弾エッセ...
目白雑録 3
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商品説明
いつかが今になって、愛ネコは18歳で逝き、時は流れ、禁煙も余儀なく、ぐるりと見渡せば、まったく、うんざり。それでも…ペンは止まらない!果敢に続く面白目白雑録。第3弾エッセイ集。【「BOOK」データベースの商品解説】
愛猫トラーは18歳で逝き、禁煙も余儀なく、ぐるりと見渡せば全くうんざり。それでもペンは止まらない! 稀代の批評眼をもつ小説家が時にグサリ、時にクスッとした筆致で日々を綴る。『一冊の本』連載を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
金井 美恵子
- 略歴
- 〈金井美恵子〉1947年高崎市生まれ。群馬県立高崎女子高校卒業。67年「愛の生活」で現代詩手帖賞、79年「プラトン的恋愛」で泉鏡花文学賞、88年「タマや」で女流文学賞受賞。
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紙の本
ユーモア溢れる批評性
2009/12/10 20:37
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:そら - この投稿者のレビュー一覧を見る
久しぶりに金井美恵子のエッセイ&評論集を読んで、相変わらずの舌鋒の鋭さに胸がすくような心地よさを覚えた。
「オーラの正体」では中田英寿を俎上にのせて、日本のマスコミ報道の偏向を突く。
世界に雄飛?したサッカー選手の「期待される」虚像を、日本という「辺境?」に住むサッカー・ファンは唯一マスコミを通じて知らされるわけだが、「オーラ」というものを金井美恵子自身が否応なくまとわされてしまった体験から、「オーラ」の正体見たり…、となる下りは抱腹絶倒である。
そのある日、「薄い西陽のあたる喫茶店の窓際の席」を占めた著者は、西陽のせいで「ふつふつと気泡の沸く黄金色」を呈したビールを前に、やはり西陽のせいで黄金色に見える大きな美猫を眺めていた。
オーラの正体を暴くにもユーモアをもって日常の一瞬のかけがえのなさを描写してしまう著者の姿勢(或いは書くことへの欲望)にあたたかな共感を覚える。
(オーラは大衆の欲望に迎合するかたちでマスコミが醸成するものだ)
同時に「よど号ハイジャック事件」に遭遇して、あまりに実態とかけはなれた報道をするマスコミの甘い姿勢を批判し、サッカー報道にも苦言を呈す医師・日野原重明を紹介している。
一説に金井美恵子の書評はだれも書きたがらないという。
本書にも斉藤美奈子の言葉が引用されているが、その理由はへたな書評を書こうものなら著者にばかにされかねないからという単純明快なものだ。
長いセンテンスは引用と枝葉の想念を「」や()でくくりながら淀むことなく続いて行く。
著者の思惟は文章そのままになめらかなラインを描いて滞ることがないのだが、読者の方は能力不足ゆえ、いつのまにか主語を失念し、何度か数行前に遡ることを余儀なくされる。
引用文が「」でくくられるや否や、「」内におさまった文章がとたんに陳腐化するのを目の当たりにすれば、なるほどすすんで戯画化される轍を踏むまいと誰しも思うだろう、と推測する。
グロテスクなアカデミズムの気取った物言いは真っ先に標的にされてしまう。
例えば茂木健一郎…
昨今、巨額の脱税がありながら起用し続けるNHKに対して苦情の手紙が殺到したというが。
人気者、売れっ子への視聴者の目が厳しいのも確かだが、公器たるNHKがしめしのつかない態度をとることに疑問を感じていたところだ。
(本書が描かれたのはこの事件以前でもあり、茂木健一郎が批評されるのはもっと本質的なところである)
著者の批評性は、読者のもやもやとした不満にかたちを与え、溜飲を下げさせてくれる。
同時に著者自らを相対化する客観性が金井美恵子の批評性をユーモアに満ちた後味のよいものにしていることは冒頭の「オーラの正体」でも明らかである。
後半は網膜剥離の手術後、老いを予感する作者の感慨が綴られていて、あれだけ威勢のよい啖呵を切っていた著者がこれからどう変わってゆくのか、さらなるαを期待したいと思った。
視力の回復を待ちながら
「文章を書くということを通さずには生きているという実感は無く、何よりもまずそれこそをのぞんでいるのだが―。」
とここに至って切実に吐露する金井美恵子であるのだから…