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北海道警察シリーズ第4弾。『うたう警官(改題 笑う警官)』『警官の紋章』は読んでいる。「警官」ではなく今回は「巡査」である。警察小説のタイトルに「巡査」は珍しいのではないだろうか。
2010/02/20 22:29
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
巡査とは法で定められた警察官組織の最下位の階級であり、それをあえて強調しているところに佐々木譲らしさがある。警察小説の第一人者となった佐々木譲が「刑事」という肩書きを使わないところもそれが正規の役職名ではないからであって、著者なりの筋の通し方をうかがわせる。
佐々木譲の警察小説では警察官の使命は市民の生命・身体・財産を保護することであるとする者たちが、したたかにその信念を貫いていく生き様を一貫して描いている。
特に道警シリーズは佐伯宏一を中心に、この市民警察の矜持を誇る数人の最下級巡査たちの友誼を高らかに謳いあげているところが他の警察小説と一線を画する魅力がある。すべてがシステムで動く警察組織のなかで人と人とのかかわりに重きを置いた佐伯らははみだし者であり、冷や飯を食わされている仲間であるだけに、その結束力が見せる活躍は痛快である。今回はグループとしての行動はなかった。それぞれが単独で事件に対処する場面が多かったのだが、シリーズを読んで彼らの個性を知っている読者であれば、無謀とも思える行動を評価してくれる仲間が存在するという精神面で安定性があるから、組織の論理を超えて突っ走ることができるのだと受け止めることができる。そして友人との絆は私たち自身が生きていくうえでとても大切なことだと、しみじみ思うのである。
その一人・小島百合は冒頭、母とその同棲の男から虐待されている幼女を救出する。保育所から児童相談所への通報があり、児童相談所はなすすべなく、次に保育所は警察に通報、警察はこれをまた児童相談所へと実効なきたらいまわし。見かねた小島百合はダーティ・ハリーもびっくり、アパートに乗り込み計算された獰猛さで彼らを制圧する。最近、幼児虐待や凶悪ストーカーからの被害を警察が通報を受けながら、機動的に対応できず殺人事件に至るケースが増えている。おいそれと動けないのが警察組織の論理なのだろうが、文句のひとつも言いたくなるのが市民感覚だ。だから余計に小島百合の過激さには爽快なもの感じるのだろう。リアルな事件性を読者に印象づける、物語として巧みなオープニングである。
「強姦殺人犯のストーカー鎌田光也は村瀬香里のアパートに侵入。警護に当たっていた小島百合巡査が取り押さえ逮捕する。だが、鎌田は入院中に脱走し行方不明となる。一年後、脅迫メールが村瀬香里へ届き、再び小島百合は警護に命じられる………。」
よさこいソーラン祭りの主役格の踊り手である香里と護衛する百合。ダンス競技のトップを目指し乱舞する参加者たち、熱狂の大群衆と祭典警備の警察陣。姿を見せない脅迫者は確実にふたりをとらえていく………。もっぱら小島百合のマンハントサスペンスを中心に読ませる構成であった。
ただ、『警官の紋章』とよく似たパターンで『警官の紋章』の完璧さを超えていない。
闇に葬られた組織犯罪を執拗に追う佐伯宏一のシリーズとしてのストーリーは『警官の紋章』で大団円を予感させる余韻を残して、良いラストだと思っていたところ、『巡査の休日』まで引っ張り、それを佐伯の情と理の葛藤で幕引きにしたところが私を消化不良にした。
『うたう警官』
『警官の紋章』
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道警シリーズ第4弾。
今回は唯一の女性メンバー小島百合に焦点をあてて、物語が進んでいくので、佐伯や津久井が好きな人には、ちょっと物足りないかも。
メインはストーカー事件だけど、それ以外にも並行して、いくつか事件が起き、ここまで広げて、どうまとまるんだろう?
と思わせつつ、ちゃんと落ち着く結末には、さすが。
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前作「警官の紋章」の事件のすぐ後から、1年半飛んだ時期のある一週間の話。
刑事の日々の仕事を通して、今まで気になっていた事件に新しい事件も加わって忙しい一週間を追っている。地味な「24」みたい。札幌の有名なお祭り「よさこいソーラン」を絡ませて、観光性もじゅうぶん。北海道に行きたくなります。
「警官の紋章」の続きというかスピンオフというか、本当に話が繋がっているので、前作を読んだすぐ後だったせいか臨場感がすごかった。ぜひ2冊続けて読むことをお勧めします。
いずれ時間をあけて「笑う警官」「警察庁から来た男」「警官の紋章」「巡査の休日」を一気読みしたいです。
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道警シリーズ第4弾。YOSAKOIソーランにあわせ、いくつかの事件が絡み合ってくる。今回は小島巡査が活躍で、佐伯の出番が少なく、物足りなさを感じてしまう。文中で佐伯が「またみんなで集まって・・」とつぶやいていたのが自作の前振りであることを期待
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『笑う警官』はドラマ(映画?)化され,文庫本で売っている~道警の小島百合巡査が,ストーキングされていた風俗嬢・村瀬香里を囮とし,銃創を負わせて逮捕した強姦殺人犯・鎌田光也が病院から逃走した。サミット警戒中にも拘わらず行方は判明せず,神奈川強盗未遂犯のマスクから鎌田の唾液が採集された。鎌田の自衛隊勤務中の仲間から強盗主犯が浮かんだが,鎌田は工具類を札幌の自分宛に送り出し姿を消していた。よさこいソーランのダンスチームに力を入れる香里には鎌田と思われる人物から脅迫のメールを受けていた。鎌田を逮捕する包囲網が張られたが,小島は違和感を覚えながらダンスの一員となりつつ香里の警護に当たっている。世話焼きの年寄りの通報で,現場に125ccのバイクの番号を控えていた交番勤務の巡査の報告で,今一歩の所で逃がしていた鎌田を捕らえ,一安心している小島は包丁を振りかざすダンスチームのサポートメンバーの女性が,DVの相談を受けつつ中断したまま,亭主を殺す羽目に陥った女性の恨みを持たれていたのだ~北海道警察シリーズは1:笑う警官,2:警察庁から来た男,3:警官の紋章に続く第4作。私は初めて読むのだが,一作目は映像化されているらしい。警察組織も大きくなりすぎて,組織構成員は自分がとういう役割を負っているか分からなくなり,警察・検察・税関が北朝鮮の船を抑えるために動いている不正を知ってしまった末端の警察官が悩みを抱えてしまう。結局は返却された中古車を不正輸出するディーラーの捜査資料を愛知県警の担当に渡して一段落。思い込みが思わぬ良い方向に作用して,強姦殺人犯でもある窃盗犯を逮捕でき,DVの果てに亭主を殺してしまった女性の事件も解決しちゃったが,ひったくりは如何なる関係があったのだろう?
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北海道警察シリーズの4冊目。
何となく想像が付き 裏切られないストーリー。
前回中途半端になっていた件も片付きやれやれ・・・
新しい人物も増え 今後に期待。
・・・映画になったのは良いのですが
宮迫さんとか 松雪さんの顔がチラついて読みにくい。
私のイメージとちょっとちがうんだなぁ・・・
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道警シリーズ、第4弾。
この作家さんのこのシリーズはやっぱり面白い。
色々な視点が一気に最後に繋がって、
読み終えた後が爽快でした。
この作品ではないですが、直木賞受賞バンザーイ!!です。
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小島百合巡査は、村瀬香里のアパートに侵入した強姦殺人犯の男を逮捕するが、男は脱走し行方不明に。1年後、香里に脅迫メールが届く。必死の捜索にもかかわらず、小島たちを嘲笑うかのように不気味なメールが何度も届き…。
北海道警シリーズも4作目となってすっかり登場人物に情がわいてきた。クライマックスへ向けた盛り上がりはいいんだけど、クライマックス自体はちょっと拍子抜けした感も…。
(B)
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2010/04/05
北海道警シリーズ第4弾。前3作までに比べると、いささか見劣りする。
次回作に期待したい。
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なんだかんだとハマってしまっている道警シリーズ。やっと第4弾で今のところ刊行してる本はこれで読み終わったのかな??
今回は、佐伯の見せ場というものはなく、主役は小島百合がはっています。今回も最初の作品から登場してる刑事たちに、新参組も入り別の事件を解決に進めていくと同じところに行きつくという手法は変わらず、多少ニュアンスは違うかもですが。
鎌田を追うことで見えてくる様々な事件が面白いように繋がって行くのは面白かったな~それがこのシリーズの魅力でもあるのですが、やっぱり楽しめるんですよね。
巡査の休日っていうから、ちょっとした休日の様子っていうのかな?少し垣間見えて、ますますおいしいぞ新宮(笑)なんか合コンに気合入ってる様子は、うんうん解るよ~って言ってあげたくなります。
そして、わが北海道が舞台で今回は「よさこい」が舞台になってるのも、丁度良い時期に読んだな~って思いますね。もう1カ月もしたら今年も始まりますからね。ちょっと作者の気持ちなんですかね、大きくなりすぎた祭と出てくるのは。まぁ、実際そう言われてるし祭ではなくショービジネスみたいになっていますし、騒音問題とか解決は未だにされてませんからね~(今年は音量制限あるようですが)個人的には好きな祭なので楽しみなんですが。
話がそれて来ましたが
今回の新参組は正直この道警シリーズの主要メンバーにとって貴重な理解者となるような気がしますね~特に佐伯の上司。理解のある人でしたね^^
佐伯は警部の昇進試験を受けるのか?小島とは??
個人的には、新宮が昇進するのも面白いのですが。
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道警シリーズ第4弾ってことらしいんですが、それ以前の3作を読んでなくても特に支障なく楽しめました。難点といえば前作のオチが見えちゃったことくらいか。誰が主人公なのかわかりにくいのも弱点と言えば弱点かもしれません。前3作も読んでみようと思います。
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主役ではないのですが、小島巡査が一番「刑事としての勘」が働くのかな、と思いました。シリーズの中では面白い方でした。
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映画から先に入ったので、ビジュアルがあります。
津久井さんは宮迫さん、で佐伯さんが大森さん。小島さんが松雪さん。
毎回、毎回、宮迫さんを思い出しては吹きそうになります。
今回は、佐伯さんが影が薄いです。これからどうするかを考え込んでるからだと思います。キャリアの陰謀を白日の下にさらすのか、そのために更に追い込むのか。それとも違う方向に出るのか。
佐伯さんが考えている間にも津久井さんと小島さんは、頑張ってます。
笑う警官は、佐伯さんの巻だったけど、どんどん津久井さんと児島さんに奪われてると思います。後、新宮君にも!!
合コンだったのに残念でしたね。でもいいよね。
次がどう展開するかわからないので、楽しみです。
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巡査の休日、作品としても一休みかな。前作までと比べると、やや物足りない。読み物としては、面白い部類なのだか、、、
ノンキャリアの葛藤と、意外な結末が売りだと思っていたのに、本作はそれがどちらも弱い。
佐伯が決断してしまったことと、ストーカーの正体が、早い段階で、推測できてしまったことが原因かと。
次作に期待する。
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北海道警シリーズ第4弾。小島(映画『笑う警官』では松雪泰子)をめぐるエピソード。佐伯(映画では大森南朋)の出番が少ないのは残念。▼著作権の関係なのか、著者の主義なのか、引用される映画のタイトル(アンジェリーナ・ジョリー主演『トゥームレイダー
』か)が明示されないのは、どうなんでしょう。現在はわかりますが、時がたつとわからなくなるのでは?▼次巻では、シリーズがわかるような副題をつけてほしいですね。つづく?図書館予約数は1(2010/08/14現在)です。