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商品説明
政治家の父を持つことだけをよすがに生きる響子。会社をクビになり、生活も逼迫したある日、異母姉妹を名乗る初音に出会う。その裕福な様子に響子は嫉妬するが初音は夫に売春を強いられていた。思い余った末、家を飛び出した初音。守る生活のない響子、あるトラブルを抱えた新之助が加わり、三人は海外逃亡を企てる。新之助の策略、響子の願望、初音の決断。ギリギリに追い詰められた三人の行く末とは—。【「BOOK」データベースの商品解説】
有名政治家の娘ということだけをよすがに生きる響子。夫に主婦売春を強いられている初音。元甲子園のエース、新之助。もうひとつの人生を夢見る男女の欲望が暴走する。ギリギリに追いつめられた3人の行く末とは…。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
南 綾子
- 略歴
- 〈南綾子〉1981年愛知県生まれ。「夏がおわる」で第4回「女による女のためのR−18文学賞」大賞受賞。他の著書に「ほしいあいたいすきいれて」「ベイビィ、ワンモアタイム」など。
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紙の本
ナンバーワン
2011/01/06 09:28
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わたなべ - この投稿者のレビュー一覧を見る
これもまた期待に違わぬ嫌な話で非常に面白かった。「サラブレッド」「エース」「コールガール」といういささか古い言葉を章タイトルに、その言葉で表される人物の一人称で記述が交互に展開するスタイルなのだが、その一人称がさまざまな偏差を通して(たとえば会話の中で語られる一人称とか、物語的な叙述の一人称とか)物語が重層的に構成され、半生記的な前半部分と、現在時と一致してからの中盤の速度変化の見事さと、そのクライマックスのほとんどタランティーノを思わせる面白さ、そしてぐだぐだな後半から苦い余韻を残すオープンなラストのある種の物足りなさまで、ぐいぐい一気に読まされてしまう、本当に練りに練られた作品だなあという複雑な読後感が残った(つまり「物足りなさ」まで計算の中にあるようで、読後いろいろ考えさせられてしまうのね)。タイトルにもあるが「嘘」の使い方が本当に素晴らしい。小説という文藝形式は本性的に「嘘」を露呈させずにはいない形式なのだが、物語的にも形式的にも嘘を確信的に用いる技法の堂に入り方は並大抵ではないと思う。いわゆる「エンターテイメント」の作家としては年に一回の刊行というのは少ないような気がするのだが、作品のクオリティーの高さはそれを補って余りあると言うか、まあさもありなん、という気がする。最近の若手小説家ではナンバーワンで好きだ。