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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2010.4
- 出版社: 平凡社
- サイズ:19cm/422p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-582-83470-3
紙の本
漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ
先人の想いや感慨のつまった言葉が、いま私たちの心を揺さぶるのはなぜか? 漢詩の変遷と詩人たちの営みを、対話形式でわかりやすく辿る入門書。1は、古代歌謡から屈原の「楚辞」、...
漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ
紙の本 |
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商品説明
先人の想いや感慨のつまった言葉が、いま私たちの心を揺さぶるのはなぜか? 漢詩の変遷と詩人たちの営みを、対話形式でわかりやすく辿る入門書。1は、古代歌謡から屈原の「楚辞」、南北朝時代、東晋の陶淵明までを収録。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
宇野 直人
- 略歴
- 〈宇野直人〉昭和29年東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士。共立女子大学国際学部教授。
〈江原正士〉俳優・声優。商業演劇の舞台、洋画吹替え、アニメの声優など各種ナレーションで活躍。
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紙の本
とかく敬遠される漢詩なのに、お二人の語り口がその歴史を語り始めて新鮮な味わい。
2010/05/01 15:50
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:和田浦海岸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「漢詩を読む 1」宇野直人・江原正士著を読了。
といっても軽く読み流した程度。
それでも、手ごたえはあり。
最後に陶淵明の箇所(p325~411)がありますが、
そこだけを読んでも読み応えは十分。
「詩経」からはじまる詩の歴史的変遷。その時代・政治状況をからめながらの対話がつづくのを、順を追って読む進めば。たちまちのうちに、漢詩の歴史の厚みに参入し、詩のたどる道筋へと読者の興味はいざなわれてゆくのでした。
たとえば、ちょうど本文の中頃に、三国志の立役者・曹操(そうそう・155~220)が登場する箇所があります。そこに徐幹(じょかん)という人を語ってこうあります。
「政治的な見識が高くて詩人としても優れていたのに、わざと平凡な詩を書いて曹操の目を逃れた、こういう生き方を試みた人は当時、多かったんでしょう。中国の知識人は、日本とは少し違って常に政治の現場とコンタクトがありましたから、生き延びるのも大変だったと思います。」(p240)
こうして、この本のはじまりの「詩経」では、地に足がついた感じがする初期の詩を語って「繰り返しが多いですよね。この歌は職業詩人が書斎で作ったものではなく、農村でみんなが歌い踊って楽しんだもの。繰り返しのリズムは歌いやすく、覚えやすいでしょう。」(p19)「不思議なんですが、『詩経』の歌を読んでいると、気持が大らかになって、歌の中にとけこんでゆくような。そんな力があるんですね。・・・日本で言えば『万葉集』の存在に近いかも知れませんね」(p21)とある。
そして、この本の前半部の最後には、こうも語っているのでした。
「詩といえば、われわれは『詩人が胸にあふれるロマンを書き付ける抒情の文学』というイメージを思い浮かべますが、中国の詩は出発点からちょっと違って、事柄や心を『記録して伝える』要素が強いような気がします。記録文学と言うのかな。後世では杜甫などに顕著です・・・・」(p196)
さて、このあとに曹操が登場するのでした。その人をかたって
「曹操は戦場にいても、閑な時は武器を脇に置いて本を読み、詩を作る人でしたし、その息子たちも、政治や文学にたいへん優秀な才能を持っていました。うち四男の曹植(192~232)は、実は杜甫が出るまでは中国最高の詩人として尊敬されていた大詩人なんです。ところが優秀な息子たちゆえに後継者争いが熾烈になり、彼はそれに巻き込まれてまことに不運な人生を送りました。」(p206)
こうして、この本の中頃からは、政治色と詩との関連として、漢詩が読み解かれてゆくのでした。たとえば詩人であり政治家だった張華(ちょうか・232~300)を取り上げた箇所には、こうあります。
「実際は天下国家のために奔走しましたので、その気になれば詩の中でも、いくらでもそれを論じられたでしょうし、そうしたかったと思うのですが、彼は結社のリーダーで大勢の配下がいます。そんな立場で天下国家を論じる詩を作って睨まれれば、グループのメンバーも殺される可能性があります。だからこちらの方向に進まざるを得なかったのではないか。或いは、彼は王朝交代期の権力闘争やその醜さ、世の移ろいを多く見て着ました。だから、それを今さら詩に持ち込む気になれなかったのかも知れません。ますらおぶりではなく、たおやめぶりの詩ですから・・・・」(p270)
こうして、政治色、地域性、古典としての詩経、論語の影響と、さまざまを勘案しながらの411ページ。最後の陶淵明の詩も「帰去来の辞」の「帰りなん いざ/田園まさにあれんとす」から、いざ帰って農業をし始めた苦労の詩を並べてゆく手際にも、まるで陶淵明が現代人でもあるかのような透徹した漢詩理解の水先案内となっております。
漢詩を目で追いながらだと、それなりに時間がかかるのですが、それはそれ、この二人の語り口で、漢詩の歴史の流れを語って、新鮮で飽きさせない見識を示してくれており有難い一冊。よし、漢詩にチャレンジしようとする方には、これは結構な一冊。ちなみに、NHKラジオ第二放送のシリーズの活字化。