紙の本
証明:事実は小説より「危」なり
2011/07/13 08:53
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かいらぎ - この投稿者のレビュー一覧を見る
前回の書評は2007年、中越沖地震の後だった。
そして再び、東日本大震災を受けて書評の筆をとった。震災以上に日本という国を揺るがしたフクシマ危機をデジャブのように感じさせる小説、それが本書であるが、を思い出したからである。
表題のベイジンとはつまり北京のことであるが、オリンピックを目指した猛烈な発展とそれを支えるための原発建設の物語である。原発はどこの国でも膨大な利権がからむため、政治の動きに翻弄され、現場のエンジニアが目指す安全指向が捻じ曲げられ、国家の威信と利権を貪る道具として作られてしまうことが物語として繰り広げられる。そこには腹黒い政治家、闇組織も当然のように群がってくるが、これを撥ねのけるのは、エンジニアの信念である。
物語は中国を舞台として、安全性よりも利権を貪ることに重きを置く政治家や闇組織、事故発生時に捨て身で収束を図る現場エンジニアたち、保身に走る「責任者」たち、重大な危機に直面してもパフォーマンス優先の政治家たち、が描かれている。これらをそっくりそのまま日本人キャストとしたものがフクシマ危機であり、デジャブである。
この小説を読んだのはちょうど1年前だった。その時の感想は、「中国ならありうる、そして中国で事故が起きればたちまち日本は被害を受けるではないか・・・」というところだ。しかし、これは安全神話を刷り込まれた末の安っぽい感想に過ぎなかったことがわかった。これを読んで、われらの足元を見直すことすら発想できなかった。そして、「素人」の小説家が想定ができることを日本の「専門家」そして政治家たちは誰も想定できなかったことが3・11で証明されたのだ。
小説に次のような件がある。
「メルトダウンを防ぐには水があればいいんですよ」
「消防車の高圧ポンプを使って、海水で冷やすわけにはいかないんでしょうか。」
「ヘリからも同じことができると思います」
「我々が原子炉の暴走を止められなければ、世界中の原発が停まるかもしれません」
そして「フクシマ」は「ベイジン」を超えた・・・
事実は小説より「危」なり、が証明されてしまった。
電子書籍
日本の現状をも考えられる1冊
2017/11/26 13:15
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投稿者:こぶーふ - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国での原発建設をテーマにした小説です。日本での311の件との直接の関連はないものの、考えさせられる内容です。
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北京オリンピック開幕と同時の運転開始を命じられた世界最大規模の原子力発電所の建設過程のストーリーを中心に、中国社会の裏と表を描いている作品。
原発内部の話は細かいところまで理解しにくいが、それぞれの人物それぞれのキャラクターがたっているので、順調に読み進めた。
主役級の登場人物たちの一本筋の通った感じがとてもいい。
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仕事にかける情熱を呼び覚ましてくれる作品だと思う。
時に仕事に妥協を考えてしまいがちだが
この本の主人公達は妥協なく、合目的的に進んでいく。
仕事で二進も三進もいかなくなっている状況で読むと
不意に涙がこみ上げてくる作品だと思う。
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山田さん所有
→10/05/09 南井レンタル→10/06/27返却
→10/06/27 片野さんレンタル→10/08/01返却(浦野預かり)→10/09/26返却
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海を隔てた隣りの国はなんと強大で恐ろしい国なのか。
昨今、テレビや新聞で食品の毒物混入や偽装、あらゆるものの模造や劣悪な品質が報道されているがこれは氷山の一角でしかない。
汚職は文化だと、汚職が蔓延、党の幹部は自分の名誉と財産を守ることしか頭にないそんな国で世界最大級の原発の建設がはじまった。
記念すべき運転開始を北京オリンピックの開会式で中継するという。
実現すれば、これほど先進国としてこの国の巨大さを世界各国へアピールするものはない。
しかし、現実はそうではなかった。
ひとたび事故が起これば核兵器以上の大惨事をもたらす原発に対し危機感がまるでない。
土地選びにから耐震補強、あらゆるパーツに使用される素材の材質、何一つ基準以下のものばかり。
新たに日本人技術顧問として派遣された田嶋のもとに明るみになる事実、事実、事実。
見た目は原発らしいが中身がともなっていないこの現実。
予定通りオリンピックの開会式で華々しく運転開始ができたとしてもいつ事故が起きてもおかしくないこの状況。
日本ならきっと、安全優先できっと運転開始時期をずらすだろう。
これは勇気ある決断だと思う。
ただし、今回は日本ではないのだ。
運転開始をずらすことは国の恥だと思っているこの国を相手に勇気ある決断ができる、いや通るのだろうか。
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ベイジンって、北京の事だったんだなー、と。読み始めてから知った次第です。真山作品は見かけると問答無用で手にとってしまうんですよね・・・。
まあ、それはおいといて。
今回は原発マンのお話。舞台は中国。
主人公の田嶋が中国でのプロジェクトの為に、現地へ到着してから現場へ馴染んでいく過程で、漠然と自分が中国に抱いていたイメージがそのまま描かれています。その為、現場の中国人作業者に苛立を隠せない田嶋にとても感情移入してしまい、フラストレーションも併せて感じますが、奮闘の甲斐あって田嶋と中国人が段々と打ち解けていく様が感動を呼びます。
また、中国・中国人に対して世界中が抱いているであろうイメージがそうズレたことではなくても、彼らの事情の一端でも知ることで、彼らに対するイメージもこの小説を通して変わる人もいるのでは。
原発についても丁寧に描かれていて、相変わらず一般人には縁遠い世界の事情を理解しやすい形に仕上げています。
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中国で世界最大規模の原子力発電所の建設計画があり、北京五輪の開会式に合わせて運転を開始する。国家の威信をかけたプロジェクトに要請された日本人技術顧問と、若き中国共産党幹部が、建設に絡む汚職にまみれた企業グループに対して苦難の戦いの連続。
権力上層部は、原発で事故が起きたら・・・という想像力欠如。国家の威信という看板だけが頼り。誰かがなんとかしてくれる。失敗しても責任転嫁は大得意。それが中国というお国柄。まぁ、あくまでフィクションということですが、中国は本当に大丈夫なんだろうか?・・・というのがひしひしと伝わってきてしまいますねぇ。
(2010/5/31)
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『ヘゲタカ』ですっかりファンに。今回も楽しく読ませてもらった。早く下巻へ!!しかし中国って国はどうしようもないな。先進国に仲間入り?冗談でしょ?(笑)
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三菱重工(小説内ではダイア重工業)の技術者が、中国で世界最大の原子力発電所を建設するため孤軍奮闘する物語。
原子力プラントではないが、来年度から石油化学プラントで働くので興味深い。
それにしても、中国の内情に驚かされる。党との癒着は当たり前、日本の常識は全く通じないよです。
さて、diversityの世界の中で人をまとめるには、どうすればいいのだろう?と思う作品でした。
ハゲタカもそうだったが、真山仁の作品は綿密な下調べの上に出来上がっているので非常にリアルだが、どうも小説としては間延びしている(長い)ような感じがする。
2010年6月13日 読了16(9)
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◆あらすじ◆
中国の威信を賭けた北京五輪の開幕直前。
開会式に中継される”運転開始”を控えた世界最大規模の原子力発電所では、日本人技術顧問の田嶋が、若き中国共産党幹部・ドンに拘束されていた。
このままでは未曾有の第三次に繋がりかねない。
最大の危機に田嶋はどう立ち向かうのか───。
時代の激流と人間の生き様を描く著者の真髄が結実した大傑作!
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北京オリンピックを契機に、先進国入りを強調する中国。 その中国が国家を挙げて推進する原子力発電所の建設。
国の面子を掛けて、北京オリンピックの開催日に稼動させようとする中国側と、原子力発電所の立ち上げに参画させられた日本人技術者達による壮絶な奮闘を描く小説。
真山仁氏は「ハゲタカ」で代表される社会派の小説家である。 「ハゲタカ」シリーズはフィクションながら登場する会社や経済背景などは現実に近いものになっており、エンターテイメント性もさることながら非常にリアリティの高い物語となっていた。 虚構の中に非常に高い現実性を持たせていたことがベストセラーとなった要因だと考えている。 そう考えた場合に、本作品も綿密な取材の下、現実にある組織や人間をモデルとしその中でうごめく事件・陰謀を上手い具合に小説化したものだと想像出来る。
原子力発電所の物資の横流しや、信頼性の無い中国メーカー部品の採用など、中国ならありうる話である。 これが単純に中国国内のみで販売される製品であれば、中国がどの様に対処しようと我々には影響なく、対岸の火事的に傍観できるのだが、今回の”製品"は原子力発電所である。 事故が起こるとその被害の甚大さは推して知るべしだが、それ以上にこの事件は中国だけの問題にならない。 韓国や日本にも大きな影響を与える可能性のある一大事となる。
フィクションと分かりつつ、こんなことが有ってはほしくないと切に思う一方、小説としては大いに惹かれながら読み進めている。
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中国ってこうなんだよな~と、ちょっと仕事を思い出したりして読みました!読んでるうちにどんどんハマっちゃう。
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ハゲタカと比べてしまうが、上下を読みきると最後にガツンとくる。
「レッドゾーン」でも中国が描かれていた。
映画「ハゲタカ」は「レッドゾーン」をベースに作られている。
そういう意味で、真山仁と中国に違和感はない。
北京五輪と原発をテーマとし、徹底して中国文化や中国人を描く。
原発や中国人のことがよくわかる。
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大地の子を連想させるようなストーリーだが、登場人物ごとのストーリー展開が乱立していて少々読みにくい。
クライマックスは盛り上がるのに・・・結末が中途半端でもったいない。ハゲタカには劣る。