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商品説明
「職場の居心地」や「やりがい」が、個人の成績、会社の業績、ひいては人の生き方そのものに直結している事実を見すえよう−。産業医である著者が、人間らしく働くために、今、何を知り、何をしなければならないかを語る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
荒井 千暁
- 略歴
- 〈荒井千暁〉1955年生まれ。東京大学大学院医学系研究科修了。日清紡ホールディングス統括産業医。日本能率協会経営研究所経営革新提言シニアアドバイザー。著書に「職場はなぜ壊れるのか」など。
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紙の本
タイトルより、かなり深い内容
2010/07/11 21:55
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:就職氷河期のこどもたち - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルと内容とが、ややそぐわないような印象を受けた。タイトルはあまりに軽薄であり、誤解を招く。以下、本書の印象について記す。
著者が言うところの「立ち位置」確認は、本書においてできているように思われる。現代社会に悩むようになった労働者の発端を、旧日経連レポートに見出したのは正解であろう。著者が示すような戦犯扱いが妥当かどうかは別として、焦った大手企業が冷酷さや人間の尊厳を無視した一面をさらけ出してしまった時期が1995年だった。人権擁護の看板を右手に持ち、左手には首切り差別を助長しようとする看板を持った人たち―――それが当時の人事にほかならない。
既存の労働者を3つの階層に分ける方法といったビジョンを日経連が打ち出したのは1995年だが、じつをいえば構想そのものは各会社で1992年前後にまとまっていたようだ。公式レポートは、その過半数が大手企業の書庫に収まったままではなかろうか。抜粋の電子版を見かけた記憶があるが、現時点では見ることさえおぼつかなくなったのは残念なことである。
日経連の消滅とともに、労働者を新たに階層化しようという「思惑」は結果的にすたれていったが、すたれたのは表向きである。大手企業の経営方針、人事考課、就労規定から女性登用とその昇進に至るまで、旧態然とした「思惑」は息づいたままでいるどころか、派遣というスタイルで少なくとも一旦は日本国内に根づいたのである。
日本における派遣は、欧州にみられる派遣と大きな差がある。その差別的な視線は、アメリカにみられる派遣と、源を一にしている。このままの派遣スタイルを容認しようというのなら、日本はアメリカと何から何まで同じ道を歩むことになるだろう。生活保護者の増大を招き、税収が見込めない国家になり下がるだけである。
中国が世界を席巻し、アフリカなどの新興国も力を持つような時代がやってきそうだ。そのような時代を前に日本は急速に国力を失いつつある。資源がないとか、少子高齢化が原因なのではない。まして100年に1度の経済危機があったからでもなければ、長引くデフレのせいでもない。
弱体化しつつある危機にあってもなお冷酷であり、人間の尊厳の意味さえ理解しようとせず、互いの足をひっぱろうとし、ものごとを真剣に考えることができない。そうした国民性が、みずからの手によってみずからの国を滅ぼすのであれば万事休すだ。
「こんな職場じゃやってけない」と一人一人が嘆きたい気持ちがあるのはわかる。しかし嘆きの源は、もっと根深いところに居座っているのだと著者は言いたかったのだろう。
それらを踏まえた上で、これからの日本を生きる人々が何を考え、何を思い出さなければならないかを、半ばあきらめつつも語ろうとしたのではないかと、私には思える。