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三島と全くかかわりのない人も多く登場して、事件のインパクトの大きさが分かる。なかなか意外な人もいて面白い。
当時、小学生であった私はまだ三島の作品を読んだことがなく、名前すら身近なものではなかった。したがって新聞に掲載された不鮮明な現場の写真も、理解の範疇にはなかったのである。
対象を二人にすることで作者との距離を明確にし、スタンスをぶれさせず客観性を提供するのがこの作者の手法だったが、この作品では一人の対象を多数の目で観察するという方法を採っている。
聖子と明奈、カラヤンとフルトヴェングラー、そしてこの作品といずれも楽しませてもらった。次の作品が楽しみ。
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この本では、三島事件そのものを描くのではなく、三島事件に人々(百数十人)がどう反応したかが、ほぼ事件前後の時系列で並べられている。実際彼らは興奮、驚愕、絶望、失望、感嘆、絶叫、唖然、愕然、反撥、嫌悪、嘲笑、様々な反応をした。
当時20歳で多くの三島文学を読んでいた僕は当然彼らと同じように呆然とした。そして多くのものが饒舌になるか沈黙した。
この日が「日本新聞紙上、最も夕刊が売れた日」だそうだ。
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三島由紀夫の子供と同級生だったので、翌朝母から事件を聞いた記憶がある。
事件が世の中に与えた影響の大きさも改めてわかったが、三島の広く深い交友関係に驚いた。
第3者の言葉や記述で事件を浮き彫りにしているので、かえって臨場感が高まっている。
ただし、120人は多すぎるように思う。
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面白かった。
三島由紀夫が自決した「その日」に焦点を当て、三島と交友の会った人物たちの「その日」を時系列順に並べ、「その日」を再現している。
三島本人は一切出てこないが、エピソードの集積が三島の側面を点綴し描き出している。
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一個人の行動がこれほど多数の著名人に語られるなんて、絶後に近いんじゃなかろうか。多視点時系列で「昭和45年11月25日」をまとめている。
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この当日の、百数十人の文壇、演劇・映画人、政界やマスコミ関係者などの記録を時系列に追いながら、三島由紀夫の自決事件の真相と意味を問うたノンフィクション。
大変面白い視点で、人々と三島との関係性のみならず、登場した多数の著名人その人たちもなかなかに興味深い。
全体を一読した後のあとがきがまた非常に面白く、著者が、この三島事件という彼の一世一代の「大芝居」は、1970年代であったから成り立ったもので、現代の風潮を考えれば、もし今同じことが起きてもこうは行くまいと言うのには、膝を打つ思いだった。
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三島由紀夫自決から40年を記念して出版されたらしいが、三島自身の言動を描いた作品ではなく、当時の三島を知る人々や、何らかの形で三島とかかわりがあった人たちの事件に関する発言なり出版物を中心に構成されている。
そうか、三島はこんな人たちとの付き合いがあったのか!とびっくりするような場面が結構あったように思う。
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死後40年に蘇る昭和45年11月25日。120人以上の、どこで、なにをしていて、どう感じたか、を時系列で再現することで「日本で一番夕刊が売れた日」を体感できます。本人の言葉とか新しい事実とか再評価とか次元の違う記述がないことで自分にとっての三島事件を考えざるを得ない構成です。一瞬で砕け散ったガラスの破片が当時のすべての日本人の心にそれぞれに突き刺さっているのは、そして今もチクチクさせ続けているのは、この事件が思想の事件とか制度の事件ではなくて個人の肉体の事件だったからだと思いました。首の上と下が別々になった肉体の物語を、われわれはその後、消費し続け、そしてまったく消化できずにいます。この事件は、われわれのアタマとカラダをも別々にしてしまったのかもしれません。
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事件自体はほんの数時間の出来事だった。しかし、その事件の発生は
各界に大きな衝撃をもたらした。
日本を代表する作家であり、ノーベル文学賞受賞の可能性も取り沙汰
された三島由紀夫は自身が主催する民兵組織「盾の会」会員を引き連れ、
自衛隊市ヶ谷駐屯地を訪れた。
三島と自衛隊は近しい関係にあった。だが、この日の訪問は穏やかには
終わらなかった。
東部方面総監を人質に取り、自衛隊員にクーデターの決起を促す
演説を行う。三島の演説には自衛隊員からのヤジが飛ぶ。
これだけでも充分な大事件である。その後、三島は自衛隊員が彼と
一緒に立とうとしないことを確認し、切腹という方法でこの事件の幕
引きをする。
その日、昭和45年11月25日。三島由紀夫と盾の会の事件は、当時の
著名人、またその後、世に出ることになる著名人にどんな衝撃を与え、
何を残したのかを時系列で綴ったのが本書である。
膨大な資料を駆使して120人の事件の受け止め方を描いており、
この事件を検証した類書とは趣を異にしている。
今、「11月25日」といってもすぐに三島由紀夫と盾の会事件と答える
ことが出来る人は少ないだろう。あの日に何が起きていたのかを
追体験するにはいい。
事件検証の資料は何冊か読んだが、結局、三島由紀夫が何を思い、
このような行動に出たのかは分からなかった。
もしかしたら、クーデターなんて当の三島自身も可能だなんて思って
いなかったのではないか。あの日、東部総監室の赤い絨毯の上で
切腹し、死に至ることは彼が夢見たナルシシズムの終着点では
なったのだろうか。
「三島は季節を間違えたな。桜の季節にやるべきだった」
寺山修二が「天井桟敷」のメンバーに言ったという言葉が印象的
だった。そう、何故、11月だったのだろう。桜の舞う季節だった
のなら、その死はまた違った印象を残したのかもしれない。
三島さん、いや、公威さん、おもちゃの兵隊に囲まれて、あなたは
自分の理想とする死に方で死んだのですか?
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ファンなら読んでいて、
本書がある三島作品のトリックを導入しているのが、
よくわかることと思う。
こんなに沢山の人が事件について語っていたとは。
いやはや、著者の努力に頭が下がるばかり。
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三島由紀夫の文学論に直接触れるのではなく、時代を共有した諸氏100名以上の回想を述べることで、却って三島由紀夫がどういう存在だったのか、そして昭和45年とはどのような雰囲気の時代であったのか、断片的にとはいえ分かり、非常に面白かった。
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「1970年11月25日あの奇妙な午後を僕は今でもはっきりおぼえている」と村上春樹の「羊をめぐる冒険」は始まる。昭和45年11月25日がどんな時代の一日であったかを知るにはとても良いやり方で、この本は書かれている。100人以上の著名人が11月25日をどう感じどう過ごしたか、又その人が三島とはどのような位置関係にあったかを知る事で間接的に時代と三島を知る事ができる。先の村上春樹にも少なからず影響を与えたはず。そして読めば読むほど、三島は自身の信じる陽明学、「知行合一」の最後の実践者であると再確認することになる。それから40年、時は流れて今、時の総理は憲法改正、自衛隊の国軍化を目指している。右翼化する日本と言う人もいる。しかし三島の時代と比べてもどれほどの人が憲法や自衛隊の事を本気で考えているのだろうか?平和ボケもいいかげんにして欲しいと言いたくなる。与えられた物に満足していてはいつまでたっても本当の戦後は終わらない。三島の檄文をあらためて読んでほしい。
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三島由紀夫が市谷の自衛隊東部方面隊総監部に乗り込み、自衛隊の決起を促し自決した三島事件から40年以上経つ。この本には三島由紀夫は出てこない。三島の周囲にいた120人の証言である。証言者は作家川端康成から椎名誠、政治家田中角栄から菅直人、芸能人中村歌右衛門からドリフターズ、歌手美空ひばりからユーミン、等等多彩である。もちろん嘆き悲しむ人から、嘲笑する人までいるわけだが、当時の昭和日本の社会的な雰囲気が良くわかる本である。時代の切り口としては大変よく出来たドキュメンタリーとなっている。
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三島由紀夫は単なる人気作家ではなく、あの時代のスーパースターだったようです。当時80万部の平凡パンチが1967年春ミスターダンディの読者投票をした結果(11万以上の投票)は、1位が2万票近くの三島由紀夫で、2位以下が三船敏郎、伊丹十三、石原慎太郎、加山雄三、石原裕次郎、西郷輝彦、長嶋茂雄、市川染五郎、北王子欣也だったそうです。中川右介氏の「昭和45年11月25日 三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃」、2010.9発行です。文壇、演劇・映画界、政界、マスコミ百数十人の事件当日の記録をもとにしたノンフィクション
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とても良質な理系本レビューを載せてるこのサイトの書評がきっかけで読んだ。
三島の演説も檄文も全容を知ったのは初めて。彼の文学はこの日に完成したのだろうか…。
昭和45年11月25日―三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃: 中川右介 - とね日記 https://t.co/ol0nRdR5wf