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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2011.6
- 出版社: みすず書房
- サイズ:20cm/282p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-622-07628-5
- 国内送料無料
紙の本
ジェイン・オースティンの思い出
著者 J.E.オースティン=リー (著),中野 康司 (訳)
文学的想像力においてシェイクスピアに匹敵する天才作家、ジェイン・オースティン。彼女の甥が、同じ世界に暮らした親族ならではの親しい知見を生かして描いた伝記。訳者の詳細な注も...
ジェイン・オースティンの思い出
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商品説明
文学的想像力においてシェイクスピアに匹敵する天才作家、ジェイン・オースティン。彼女の甥が、同じ世界に暮らした親族ならではの親しい知見を生かして描いた伝記。訳者の詳細な注も付す。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
J.E.オースティン=リー
- 略歴
- 〈J.E.オースティン=リー〉ジェイン・オースティンの甥(ジェインの長兄ジェイムズの長男)。牧師をつとめ、70歳を過ぎてからジェイン・オースティンの伝記を執筆した。
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紙の本
『説得』のおまけつき
2011/12/14 18:54
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うみひこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を手に取った人は、あるデジャ・ヴュ観を抱くだろう。
それは、ありとあらゆる解説や伝記の元になっているのがこの本だからなのだが、それだけではない。
作者が、ジェィンの実の甥だからだろうか、ここにはなにか、ジェィンを髣髴とさせるユーモアや皮肉を感じさせるものがあり、そこに、深い魅力を感じさせられるからなのだ。
作者は、ジェィンが亡くなったときに19歳。それから50年の月日を経て70歳になってからこの本を執筆した。
そのため、貴重な証言をしてくれる人々は、すでに鬼籍に入ってしまっていた。
けれども、ジェインの最後の家の近くに住み、その日常生活を見ていたこと、
そして、ジェインが親族にあてて書いた手紙をすでに読んでいたことなど、
身内ならではの特権を生かし、生き生きとジェインの日々を語っている。
たとえば、彼の協力者のジェインの姪たち。
彼女たちは、子供のときから可愛がられ、そのうちの一人は小説家を目指し、その後何冊かの本を出したという。
彼女たちの語る重要な証言はこうだ。
「叔母さまは、とてもすてきな面白い話、おもに、おとぎの国の話をしてくれましたが、
叔母さまのお話に出てくる妖精たちは、みんなそれぞれ個性を持っていました。
それらのお話は、そのときに即興で考えたものだと思いますが、その機会があれば二、三日続けられました。」
別の姪二人は、ジェインの最後の家、チョーットン・コテッジに滞在している時、
叔母が、色々なごっこ遊びに付き合ってくれて、あるときは、
「私たち三人が大人になったと仮定して、舞踏会の翌日の私たちの会話を真似してくれました」
と、言う。
そして、もう一人は、
「ああ!それらのお話の一つでも思い出せればいいのですが!」
と、言うのだが、本当にそう思うと残念な話だ。
だが、それでもこれらの言葉から、ジェインの想像力に富んだ生き生きとした日々や、
彼女と接した子供たちのわくわくした気持ちが伝わってくる。
この他、兄弟、姉、友人に当てたジェインの手紙の引用の多くに、ジェインの性格が非常によく現れてくる。
さらに、これらの手紙の中に、その頃彼女が読んだ本などについて書かれていて、
本の貸し借りやその本について語ると約束をしていたりする記述を読むと、その時代の読書習慣や、
ジェインの得た知識、記憶力などをうかがい知ることができる。
そして作者が、手紙の文章を抜粋して合成したりして、身近なゴシップを書いている文章を消してしまっていることは、
残念でありながら、時代を感じさせるところでもある。
ジェインの一族、その人生等に関する伝記的記述、作品に対する当時の書評や著名人の意見などが語られた後、
十二章目に現れるのが、「『説得』の破棄された章」である。
このクライマックスとも言える場面の章を読み比べることは、読者にとっては実に堪らないお楽しみだろう。
ジェインの日常生活についての様々な証言、
例えば、きしむドアを直させずに、人が来たらすぐ気づいて隠せるようにしながら、
誰にも気づかれないように居間でこっそり著作に励んでいたという不思議な生活。
ピアノを弾いていたこと。手先が器用で刺繍や裁縫が得意だったこと。
それらを語る作者の言葉に、その時代によしとされた女性像を感じさせられる。
そして、同時に、それでも、現在に通じる生き生きとした人物を作り上げていった、
ジェインの魅力を改めて感じるのだ。
この本は、数々の資料や証言を通して、実に見事にジェインの姿を甦らせている。
ジェインの時代ならではの語りを知るためにも、是非、手元においておきたいと思った一冊である。