紙の本
やや促成栽培の本ではあるが、ポイントは押さえている
2021/03/23 00:55
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投稿者:しおかぜ - この投稿者のレビュー一覧を見る
東日本大震災の直後、日本社会が騒然としていた状況で執筆された本。震災の記憶が生々しく残る中、著者の一人である大木氏は、やや感情的になりつつも、科学の目で地震とその防災を解く。巨大地震がなぜ起きるのか、というメカニズムを、纐纈氏が論じている。
全体的に、あわてて執筆・構成されたような、やや促成栽培の感じは受けるが、地震について体系的に学ぶには適切な本であり、ポイントは押さえていると思う。
私が小学生だった30年前は、少なくとも東海地震は確実に予知できる、などと学校で習ったものだが、東日本大震災を受けて、予知は困難だということになった。地震に対して、科学で迫ることももちろん必要なのだろうが、それにもまして、日々の防災意識と対策が重要であることが、この本を読み、あの3月11日を思うとき、痛いほど伝わってくる。
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東大地震研究所広報アウトリーチ室の大木先生の解説ブログは大変わかりやすいのですが、
それは、決して専門知識を知っていることを前提とせずに解説をなされているからです。
この新書でも、同様に研究者としてわかっていること、わかっていないことがはっきり書かれている点で大変素晴らしい著書だと思います。
3.11以後、日本人として行うべき、地震と津波への備え、その端的なことがまとめられています。
自身と家族を守るためにも、一読の上で、話し合ってみることをオススメします。
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【東日本大震災関連・その⑪】
(2011.07.12読了)(2011.06.30借入)
2011年3月11日の巨大地震についての解説本です。新聞などでもずいぶん解説してくれたのですが、なかなかまとめて読むことができないので、本になると助かります。
今回の地震について、津波について、余震・誘発地震について、防災について、と一通りのことは書いてあります。地球全体のメカニズムについて知りたい場合は、「地震・プレート・陸と海」等、で別に読む必要がありますが、とりあえず今回の地震についてわかればいいのであればこの本だけで十分でしょう。
章立ては、以下のようになっています。
序章、ドキュメント3.11(大木聖子)
第1章、巨大地震はどのように起きたのか(大木聖子)
第2章、巨大津波はどのように発生したのか(大木聖子)
第3章、引き起こされたさまざまな現象(大木聖子)
第4章、地震の科学の限界、そしてこれから(纐纈一起)
第5章、防災―正しく恐れる(大木聖子)
終章、シミュレーション西日本大震災(大木聖子)
●宮城県沖地震(13頁)
宮城県沖ではおおよそ30~40年間隔でマグニチュード7.5程度の地震が繰り返し起きており、宮城県沖地震と呼ばれている。前回の宮城県沖地震が1978年6月12日、すでに30年以上が経過しているため、いつ起きてもおかしくない地震の一つに数えられていた。
2011年3月9日、牡鹿半島の東、約160km付近でマグニチュード7.3の地震が発生した。この地震を我々は、想定している宮城県沖地震ではないと判断した。震源が宮城県沖地震よりも東にあること、マグニチュードが一回り小さいことが理由としてあげられる。
●巨大地震(14頁)
3月11日14時46分、宮城県沖を震源とする地震発生。
16時、気象庁の会見で暫定マグニチュード8.4、震源は三陸沖、深さ10㎞と発表。東北地方太平洋側の広い地域で震度6弱以上が観測されており、大津波警報や津波警報が北海道から九州まで発表されている。
17時半に気象庁は、この地震のマグニチュードを8.4から8.8へと変更した。さらに、二日後に9.0と改められた。
宮城県栗原市築館で震度7を記録したほか、東北から関東の太平洋側の広い地域で震度6強となった。
●アスぺリティモデル(32頁)
1980年代に入って、プレート境界面はどこもかしこもべったりとくっついているわけではなく、特にひずみがたまりやすい場所が点在しているという新しい概念が提唱された。「アスぺリティモデル」という。プレート境界を挟んで接している大陸プレートと海洋プレートには、特に強く固着しているところと、固着することなくするすると海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込んでいくところが存在している。
●津波の発生(63頁)
今、海底下で地震が起きたと想像しよう。ずれ動いた場所が浅く、ずれ動いた量が大きい場合、つまり震源が浅く大きな規模の地震が海底下で発生した場合、海底面は大きく変形する。この海底地殻変動によって津波は引き起こされる。
●助かった人(77頁)
このたびの震災で、助かった人の多くはただシンプルに高い所へ避難した人たちだった。
●警報・注意報(77頁)
予測津波高さが50㎝以上のとき、津波注意報が発表される。1m以上になると津波警報、3m以上で大津波警報となる。
●津波の予測高さ(79頁)
気象庁は本震発生から3分後、宮城県に6m、岩手県と福島県に3mの大津波警報を出した。30分後の15時14分に、津波の予測高さをそれぞれ10m以上及び6mと切り替え、さらに15時31分には岩手県から千葉県にかけて全域で10m以上とした。
●チリからの津波(80頁)
2010年2月27日に南米チリ中部でマグニチュード8.8の地震が発生し、23時間後に津波は日本へ来襲した。日本で観測された津波は1~2mだった。
●地震防災教育(149頁)
なぜ地震が発生するのか、なぜ地震の発生は被害を生むのか。
とにかく瞬間的に判断を下せるように訓練を積むこと。
☆関連図書(既読)
「地震・プレート・陸と海」深尾良夫著、岩波ジュニア新書、1985.04.19
(2011年7月13日・記)
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3.11の臨場感あふれる記述。わかりやすい地震の科学の説明。アウトリーチ室助教の職に恥じない本だ。是非これからも活躍して欲しい。
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今回のM9.0という巨大なエネルギーをもった地震が何故起きたのか。
地震や津波発生の様子。今回の地震や津波が起こったメカニズム。そして何故今回の地震発生は想定外で予知できなかったのか。今後防災はどうあるべきなのかが述べられています。これまで報道を断片的に見聞きしてきた人にとっては知識を整理する意味でいい本です。(専門的な部分は理解しがたい部分もありましたが・・)地震予知については、他の本でいかに不可能であるかを読んだばかりだったので、地震学者さんはご苦労だなあとつくづく思います。地震国日本ではどこにいても避けられない事態です。
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火山の噴火予知と異なり、地震の予知は現状では極めて困難、というより不可能に近い。自分で自分の身を守ることを前提に地震列島を生き抜いていくための想像力と知恵を得ることが大切だと感じた一冊。
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3.11以前、東北日本においては過去70年間に地震によって解放されたひずみの量は蓄積量の4分の1しかなかった。しかし地震研究のアスペリティ・モデルによる説明から、残りの蓄積分はアスペリティ以外の非地震性のすべりによって解放されたと結論づけられてしまった。
だが、そもそもアスペリティ・モデルそのものが、各沈み込み帯ごとの地震の起こり方、その地域特性の違いについて、現段階で観察できている現象だけを頼りにあとづけの説明として作られた現状追認のための理屈であって、決して予測を可能にしてくれるような科学的理論ではなかった。
自分の周りではこれまで起こらなかったからこれからも起こらないという楽観論には対象ごとの特殊性という切り口で一応の理屈はつけられるものだが、隣人や隣国で起こった現象が私たちの身の周りでも起こる確率は思った以上に高いのかも知れない。
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著者の大木さんが、記者会見の時に見せた涙の意味が、本書を読んでよくわかりました。科学者としての限界を直面した悔しさだったのだと思います。
どんなに科学技術が進んでも誰かが助けてくれるわけではない。最後は自分自身で身を守るしかない。身を守るためには、知りうる限りの正確な知識と実践に生かせる習慣を身につけておくこと。
地震列島に住む人間としては、避けて通れない道。そのことを少しでもわってほしい。そんな著者の痛烈な想いが伝わってきます。
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地震発生のメカニズムや、東北地方太平洋沖地震ですり替えられた気象庁マグニチュードとモーメントマグニチュードの違いなどを平易に伝えています。その上で、「西日本大震災」のシミュレーションも行なっています。
科学的知見が、世の中に正しく理解されたのか、伝えきれたのかの葛藤を持ちながら、の本。どこそこで震度いくつが何十年以内、なんていう話ではなく、予知は出来ない、故に地震が起きたら何を守りたいのか、そのための防災のを、という姿勢です。
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地震学は社会科学に似てる。実験ができない。三陸沖の防波堤が役立たなかったこともあとからわかったが批難は出来ない。尤も十分な予算を割いていないのが許しがたい。
藤井聡先生のように統計から首都圏直下型大震災の予測はしていないが、言えることを言っている点で誠実さがうかがえる。
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数ヶ月前に被災地復興に関わる仕事に就きました。その流れで当著者の公園を南三陸町にて拝聴。その使命感の強さと無念な想いがヒシヒシと伝わってきました。(仕事に就いてから他の地震学者の話も聞く機会があり、総じて高い使命感を持っている事に感銘を受けました)今回の教訓を元に、彼女が言う所の民族の知恵としてどれだけ定着させる事が出来るのか。
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2011年刊行。著者大木は東京大学地震研究所広報アウトリーチ室助教、纐纈は同大同所教授。◆本書にある地震のメカニズム、津波のメカニズムの解析は参考になる。また、未来に起こりうべき西日本大震災の叙述も同様で、防潮防波や耐震関連のハードの限界に加え(ハードの方法による効果の逓減)、災害教育や避難方法のブラッシュアップ化というソフトの重要性を叙述する点は十分納得可能。ただ、所々、研究者の責任回避ともとれる言説がサブリミナル効果を狙うかの如く参入されるのは気になる。勿論、科学が万能でないことは承知しているが…。
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カテゴリ:図書館企画展示
2016年度第9回図書館企画展示
「災害を識る」
展示中の図書は借りることができますので、どうぞお早めにご来館ください。
開催期間:2017年3月1日(水) ~ 2017年4月15日(金)
開催場所:図書館第1ゲート入口すぐ、雑誌閲覧室前の展示スペース
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美人すぎる地震学者で有名な大木聖子氏の著書。本書の第1刷が2011年6月10日ということにまず驚いた。そして、地震について正しく一般の人々に伝えるということにも、熱い思いがあることに感心した。
「あとがきにかえて」より。
「私は予知について聞かれるたびに、なぜ地震の科学が誕生したときからもっと声を大にして、予知は現段階では困難だと、その時々で積極的に言い続けてくれなかったのだろうと途方に暮れる。たとえば、医療なら、不治の病に無意味な期待を抱かせるようなことはしないだろう。」