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日清・日露・太平洋戦争の入門書 - 「侵略戦争」ではなかった
2011/08/22 12:51
6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:としりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、青少年向けに書かれた入門書と言える。
近現代において、日本はなぜ一連の戦争をすることになったのか?、また、日本がした戦争は侵略戦争だったのか?
戦争に至る過程について、基本的な事柄を明らかにしようとするものである。
明治天皇や昭和天皇の反戦主義や、指導層の戦争回避の努力などを詳述する。また、日中戦争の発端が中国側からの仕掛けによるものだった点や、満州事変が大国に支持されていた点も明らかにする。
ただ、南京大虐殺についての犠牲者数にはやや首を傾げるものだ。それでも、なぜ「事件」が発生したのか、その背景として中国側にも原因の一端があったことを記述している。
本書は、細部はともかく概ねでは違和感なく読めるものである。
本書を入門編として、さらに内容的に掘り下げて理解するには、岡崎久彦氏の「外交官とその時代」シリーズが適するのではないか。
『小村寿太郎とその時代』『幣原喜重郎とその時代』(岡崎久彦著、PHP研究所)などは、日本を取り巻く国際情勢に詳しく、列強のパワーのなかで、当時の指導層がどう考え、どう判断したのかを描き出す。グローバルな視点から現在にまでつながる世界観を醸成するにも適した名著である。
ところで、本書は比較的簡潔で分かりやすいものなので、日本で学ぶ韓国人や中国人にも読んでほしいものだ。
ただ、我々日本人には普通の内容でも、彼らは「妄説!、侵略の正当化!」などと反発するのがオチかもしれない。
しかし、徹底的に日本を悪者に仕立て上げても、そこから学ぶものは何もないのだ。
毎年、8月の終戦の時期になると、「二度と戦争を起こさない!」などと語られる。
日本が主体的に戦争を起こさないのは当たり前である。それよりも、日本が他国によって「戦争を起こされない」「戦争に巻き込まれない」ことが重要だ。
そのためにも、過去における日本の戦争を適切に理解しておくことが大切である。
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田原総一郎の本を初めて読みました。
日本の近現代戦争史をどのように捉えて、解説するのかがとても興味深かったので、じっくりと読みました。
きっちりした資料に基づき考えて書かれただけに、説得力はありました。
もう二度と戦争を起こしてはいけませんね。日本は。
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「踏み込みが浅い」というのが読後の第一印象だった。確かに、戦争を扱った類書にありがちな押し付けがましさは皆無で、むしろ淡々の時系列で事実を並べている感はある。著者の想像による埋め合わせを極力排除したのだろう。事実を元に、一歩分だけは著者の解釈があるが、その先には慎重であろうとするという叙述の思想を感じる。
誰が、いつ、何をやったのかが明確に書かれている。脚注が非常に多い。もし疑問があれば、調べるための足がかりがはっきりと示されている。つまりは、「そこから先は自分で調べて考えろ」ということなのかもしれない。
人の世はそうそう善人と悪人に2分されるものではないし、完全に色分けされた思想に染まっているわけではない。51対49で判断したことも、後世の人は100対0かのように誤解する。
そこら辺の機微についても、示唆に富んでいて、ある種のイデオロギーに支配された単純な黒白2分に陥らないような冷静さが滲み出ている。
基本的に、有名なジャーナリストの書く本については「騙されないぞ」と心構えをして読むのだが、とても良い意味で拍子抜けするくらい、“読者に考える余地を与える”本である。
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【レビュー】
装丁は素晴らしい。可読性が極めて高い。内容も5分の1ページくらいで興味深い情報が列挙されており、一読の価値あり。
【意見】
著者は、大東亜戦争は侵略戦争ではなかったと主張しているが、その根拠が薄弱。侵略戦争の定義をしっかり提示してから論を進めてほしかった。
また、興味深い情報といってもトリビア的なもので、「だれもが書かなかった」ということはできないと思う。キャッチ―さを狙ったか。しかし総じて信頼に値する立論だった。
【特記事項】
・陸奥宗光は西南戦争で反政府の側に立ち逮捕されていたが、伊藤の見る目が高かったゆえ、外相として起用された。
・東学党の乱→日清戦争→三国干渉→義和団事件→北清事変→日露戦争
・盧溝橋は東方見聞録でも紹介されているくらい美しく、欧米ではマルコ・ポーロ橋と呼ばれている。
・シベリア鉄道によるロシアの軍隊輸送の貨車は木造で、極東に着いたらそのまま貨車を壊して燃料にし、車輪だけを分解してまとめて送り返す。だから、シベリア鉄道は単線だったが、貨車往復に時間をかける必要がなかった。
・日露戦争で、日本側は途中で弾丸がなくなり、石やがれきを投げて戦った部隊も少なくなかった。
・イギリスは第一次世界大戦のとき、日英同盟ゆえに日本の参加を要請したが、それは極東海域限定で、青島や山東半島までではなかった。
・秦郁彦『昭和史の謎を追う』を注目。
・敗戦まで日本軍人には選挙権はなかった。
・五・一五事件は、当時革命を起こすような問題はなく、首謀者たちは革命に酔っていた。
・石原莞爾は対ソ戦備えのために、日中戦争には不拡大方針。
・ヒトラーは日中戦争の仲介に立ったことがある。
・日中戦争では、総理自身何のために戦っているのか分からなった。
・東条は、天皇絶対で、戦争反対のときもあった。
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ジャーナリストの田原さんが書いた日本の近現代史の本です。テーマは戦争ということで、日清戦争から太平洋戦争までを、日本史の教科書のような感じで戦争中心に書かれています。本の帯に「この本を書くために私はジャーナリストになった!」とすごいアオリがついていたので読んでみました。
著者の問題意識は「日本が近現代に遂行した数々の戦争は本当に悪いことだったのか?」ということで、かなりチャレンジングなテーマなのですが、正直このテーマで本を書くには(失礼ながら)著者は勉強不足なのではと思わせる残念な内容です。
ちなみに先の問題意識に対する本書の答えらしきものを簡単に述べておきますと、日清戦争や日露戦争は帝国主義の時代で他の列強諸国だって悪いことしてた(だから日本もやってしまった)。日韓併合や満州事変については、悪い面は多々あるものの当時イギリスとかから文句は出なかった。日中戦争はかなり強引なので日本に非のある侵略戦争。太平洋戦争はアメリカに追い詰められてイヤイヤやった面も無きにしもあらずなので侵略戦争ではない。
大体こんな感じです。このノリが受け入れられる人は読んでみてもいいかもしれませんが、時間があるなら本業でちゃんと歴史研究をしている人の本を読んだ方がいいかもしれません。
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終戦記念日前後に第2次世界大戦について本を読むことは、民族の過去の過ちを知り、過ちを繰り返さないために必要な行為ではないかと思う。
この本は、ポプラ社から出版されている。ポプラ社は昔、子供向けの本でお世話になったが最近は読んだことがなかった。この本の後に読んだ「困っている人」もポプラ社だったが・・
この本の趣旨としては、若い世代にも読んでほしいという意図があり、現代国語の教科書風の編集になっている。人物や事件の注も多く理解しやすい。
さて、内容についてであるが、NHKスペシャルの「日本人は何故戦争に向かったのか」という番組とはまた別の切り口で戦争をとらえていて非常に興味深い。当時の指導者のリーダーシップがしかっりしていれば、望まなかった戦争は回避できたのか、どうか・・・NHKは回避できたというスタンスで、この本を読むと回避できなかったように思える。リーダーシップよりも国際情勢を分析する能力がより根本的な問題だったのかもしれない。
どちらの本を読んでも、マスコミの責任は非常に重い。このことは深く記憶に焼き付けておくべきだ。
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小学校高学年でも読める分量と単語。詳しく注も入っていて、読者に理解してほしい!という気持ちがヒシヒシと伝わった。子どもが大きくなった時、必ず読ませたい名著です。
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パラパラめくっただけでも「ああー読みたい、これ」と思っちゃう本。
正直、天皇や当時の日本軍上層部へのイメージが変わった(というか今までが無知だった)。皆、今を生きた生身の人間だったのだと、当然のことではあるけども、実感した。
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註釈も多くかなり分かりやすく書かれてあり、事実を事実として淡々と語る語り口が好感を持てる。ここにははっきり書かれていないが、マスコミの責任というのは大きいと思った。
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明治以来、第二次世界大戦までの日本が行った戦争についてどういう訳で戦争をしなければならなかったかが分かりやすく解説されている.特に昭和天皇を始め日本の首脳はだれも勝つとは思っていなかった対米戦争になぜ突入したかが詳しく述べられており説得力がある.
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ええっ、太平洋戦争が侵略戦争じゃなかったって、田原総一郎御大もそんな御託を並べられるとは信じられません。
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次代を担う若い世代向けに書かれており,注釈もすこぶる丁寧。広く一般に伝えられている事柄とは少し違った角度からの指摘もあり,大変参考になった。太平洋戦争突入部分の動向は,とりわけ詳細に書かれていて初めて知る内容も多かった。「失敗の本質」や「空気の研究」など思い出しながら読んだ。
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田原氏によるこの本は、太平洋戦争に至るまでの3つの戦争について解説して、それらの繋がりを伝えている本で、興味深かったです。
中国大陸への進出(主に中国が中原を見なしていなかった満州エリア)の是非はともかく、当時の日本の行動は列強欧米諸国のそれとあまり変わらなかったと感じています。
特に、敗戦までの日本の軍人には選挙権がいっさいなかった(p136) という点には驚きました。当時、軍部に協力していた勢力は国内でかなりあったのでしょうね。
彼の考え方も少しは入っている気もしましたので、類書も幅広く読んで、理解を深めたく思いました。
以下は気になったポイントです。
・太平洋戦争が始まった当時のアジアは、日本とタイを除く国は、イギリス、フランス、オランダ、アメリカの植民地であった(p23)
・戦前の小学校の教育では、5年生以上に「修身」や地理、歴史という科目がなかった(p33)
・日露戦争に勝って(日本が白人の大国に勝利)から、インド、ベトナム、ビルマ、アフガニスタン、フィリピンから独立運動をやっている人たちが日本にやってきた(p41)
・農家の生まれで首相まで上り詰めた「伊藤博文」は、豊臣秀吉以来の出来事、次の時代では「田中角栄」(p61)
・中国で起きた義和団は、キリスト教を敵とすることで人々の意識を高めた、同様に、韓国の東学党はそうであり、これが日清戦争の引き金となった(p68)
・伊藤博文(若い世代)が日英同盟を結ぼうとしていた時に、古い世代は、日露を強化しようとしていた(p75)
・英国はアフリカでのオランダが作った共和国(オレンジ、トランスバール)を征服するのに兵力を取られたので、北清事変に兵力が割けずに、日本に大量の派兵をもとめた、その結果が日英同盟締結にもつながる(p77)
・日露戦争を始める前、人口比較で3分の1、鋼生産ではロシア:150万トンに対して、数万トン、陸軍がロシア:350万人に対して、38人、海軍軍艦はロシア:80万トンに対して、26万トンであり国力差は激しかった(p87)
・日本のロシアへの宣戦布告は、1904年2月10日であったが、前日にロシア艦隊を攻撃して2隻を撃沈している、これは日清戦争、太平洋戦争も同様(p90)
・2回目の日英同盟により、2か国以上と戦争した場合に参戦するという内容が、1か国に変更された、これで日露戦争を有利に展開できた(p101)
・帝国主義と植民地政策が否定されることになったのは、第一次大戦が終わった1918年(大正7年)で、日韓併合の8年後に実現された(p107)
・アメリカが提唱した「自主独立」とは、すでに列強が持っている植民地はそのまま維持できるが、新たな植民地をつくることを禁ずる内容であり、この点を近衛文麿(5摂家で天皇につぐ名門)は指摘した(p117)
・ベルサイユ条約、9か国条約でも、「すでに持っている植民地は認めて、新たに権益を手にすることは侵略として禁じている」ことで一致している(p121)
・日本政府がつくった満州国の国旗は、赤:日本人、青:朝鮮人、白:満州人、黒:モンゴル人、黄色:中国人を表すと教えられた(p134)
・満州事変から太平洋戦争が終わるまで日本は軍部独裁政権だったように見えるが、敗戦までの日本の軍人には選挙権がいっさいなかった(p136)
・犬養毅が515事件で暗殺された後任として、軍人(斉藤元海軍大将)が首相となり、明治以来続いた政党政治は終わった、これ以降敗戦まで政党内閣が復活することはなかった(p143)
・リットン調査団の報告書の結論は、「満州は形式的には国際連盟が管理し、そのもとで日本が仕切っている現状を認める」というもので、政府やマスコミ予想とは起きく反していて歓迎されるものであった(p145)
・イギリスは日英共同で1千万ポンドの借款をしようと提案した、これに応じれば英国は事実上満州国を承認しようとする条件であった、これは関東軍を中心に反対された(p151)
・蒋介石は、それまでの自分の考え方を捨てて、国民党と共産党の合作で日本との戦いに専念することを約束した(p166)
・太平洋戦争前の日米比較は、日本海軍が84万トンに対して、アメリカは300万トン、飛行機は日本:2300に対して、1万5000であった、石油の自給率は10%で残りはほとんどをアメリカから輸入(p194)
・当時アメリカが日米平和交渉に本気だったのは、ヒトラーがソ連を打ちのめして、アメリカが日独両国と戦うのを避けたかったから(p245)
・東条英機は現役軍人として明治政府開設以来、初めて首相になった(p261)
・日米開戦の12月8日に、ヒトラーはモスクワ攻撃をあきらめ、ドイツ敗北が明らかになった、日本はドイツ軍がソ連にもイギリスにも勝つことを前提にしていたが、それが開戦日に崩れた(p280)
2011年10月2日作成
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日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦
そして先の太平洋戦争について書かれた著書です。
太平洋戦争について書かれた本はこれ以外にも読んできたので、その事実についてはわかっているつもりではいましたが、知らなかったこと(石原莞爾と東条英機の衝突など。。)が記されてあったり、当時の軍と政府、天皇の関係性を著者の視点から新ためて知ることができました。
著者の田原総一郎はテレビではおなじみのジャーナリストで、少年期の自身も戦争体験者。ときどきその当時の状況についても語られている。
なぜ必敗とわかりながら、国力の差が圧倒的な大国アメリカとの開戦に踏み切ってしまったのか?
その疑問を何度も問いかけ、その答えを記していくというのが戦争体験者としての自分の使命だと語る。
軍の暴走、国民の世論、インテリジェンス、情報力のなさ、外交の食い違いによる孤立、様々な要因が結びついて誰もが望まないあの悲劇が起きてしまった。
あの戦争は侵略戦争ではなかった。著者はこの中でそのことを何度も強調している。
行間というか、そこに書かれてはいないのだけどあの戦争は、日本という国がそのシステムや、国民性も含めて、たどるべきしてたどった運命のようなのかもしれないと言ってるようにも読めてしまった。
非戦闘員を含む310万人がこの戦争で亡くなり、いまだに苦しんでいる人がいることを思うと、
二度と起こしてはいけないし、そのためにはそのことを伝える著書を読んでおく必要があるのだと思い、戦争について書かれた本は今後も読んでいこうと思う。
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「戦争」それは一度、きちんと考えてみたい問題でした。なかなかこれは!と思うものがない中、目にしたのが本書です。著者である田原氏の原点と解釈。初めてその思いを知りました。
日本の近代史に残る戦争を、順を追って、関連性を持って書いて下さっているため、家庭における歴史の副読本としてもよいと思います。
折にふれ、読み返したいと思います。