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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2011.8
- 出版社: NHK出版
- サイズ:20cm/734p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-14-005604-2
- 国内送料無料
紙の本
エドガー・ソーテル物語
著者 デイヴィッド・ロブレスキー (著),金原 瑞人 (訳)
生まれつき声を持たず、手話だけで話す少年エドガー・ソーテルは、ウィスコンシン州北部の人里離れた農場で両親といっしょに暮らしていた。数世代にわたってソーテル家は、ある犬種の...
エドガー・ソーテル物語
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商品説明
生まれつき声を持たず、手話だけで話す少年エドガー・ソーテルは、ウィスコンシン州北部の人里離れた農場で両親といっしょに暮らしていた。数世代にわたってソーテル家は、ある犬種の育種と訓練を行ってきた。思慮深く人に寄り添うその気質は、エドガーの生涯の友で、かたい絆で結ばれた犬アーモンディンに典型的にみてとれる。しかし、叔父のクロードの予期せぬ帰郷によって、ソーテル家の平穏な暮らしが乱されていく。父の突然の死に打ちひしがれたエドガーは、その死にクロードがかかわっている事実をつきとめようとしてさらなる惨事を起こしてしまう。農場の向こうに広がる広大な森の中へと逃げることを余儀なくされたエドガーは、彼についてきた3匹の犬とともに生き続けようと奮闘し、大自然の中で否応なく成長していく—。北部森林地帯に広がるアメリカの原風景を舞台に描かれた家族の一大サーガにして現代の古典。【「BOOK」データベースの商品解説】
思いがけない父の死とその真相、母と叔父の接近…。居場所を失った息子エドガーは、3匹の犬とともに森に姿を消す。北部森林地帯に広がるアメリカの原風景を舞台に描く家族の一大サーガ。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
デイヴィッド・ロブレスキー
- 略歴
- 〈デイヴィッド・ロブレスキー〉ウィスコンシン州で育つ。ウォレン・ウィルソン大学創作プログラムにて修士学位を取得。その後25年間ソフトウェア開発に携わったのち、小説を書きはじめる。
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紙の本
壮大にして繊細。幸福を願わざるを得ない物語
2011/11/13 08:18
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:更夜 - この投稿者のレビュー一覧を見る
どこまでも緑の草原が続いている中、ひとりの少年が草をかきわけ歩いている。
そのまわりには、近づかず、遠くへ行かず、3匹の大きな犬が少年と同じ方向へと歩んでいる。
読み終わってから、少年と3匹の犬が草原を歩いている風景が脳裏から離れない。
少年の名前はエドガー。犬の名前は、エセイ、バブー、ティンダー。
アメリカ、ウィスコンシン州北部の農場と自然を舞台にして、人と犬のつながりを濃厚に描いた大作で
あると同時に自然や人、犬の心理などが大変繊細に綴られた物語です。壮大にして、繊細。
広大な農場の四季、時には激しい竜巻などの自然、人間の思惑、個性、表情豊かな犬たちの描写、少年の繊細な心。
五感をすべて刺激されるような、穏やかさと激しさを同時に兼ねたさりげない文章。
農場主のガー・ソーテルは、父の代からの犬のブリーダー。交配をかさねてソーテル犬という犬を育てあげます。
ソーテル犬はペット用ではありません。立派な体格を持ち、人間のパートナーとして仕事を
する犬たちを育て、よく訓練された犬たちは、さらに色々な訓練犬になるべく買われていく。
そしてガーと妻、トゥルーディにはやっと恵まれた子宝、息子のエドガーがいます。
エドガーは 耳は聞こえ、医者に見せても異常はないのに、発声ができません。
そして手話を覚え、時には自分たちで手話を作りだして、エドガーは犬に囲まれて育ちます。
両親に愛されて育ったものの、エドガーにはもう一人の母がいました。
雌犬のアーモンディン。この物語は各章、語り手が変わるのですが、アーモンディンの目から見た世界も描かれます。
家の様子がおかしい。そして見つけた声をたてない赤ん坊。アーモンディンは一目で使命を感じます。
『自分を待っていたのはこれだ。訓練の時は終わり、いまとうとう仕事を手に入れたのだ』
アーモンディンの語りの時、アーモンディンはエドガーしか見ていません。昼も夜も赤ん坊の時も、少年になっても
いつもエドガーの側を離れないアーモンディン。
秘密の手話で意思疎通ができる少年と犬。そして少年よりも先に年をとってしまうアーモンディン。
母は言葉で感情を訴えないエドガーが成長につれて不透明、わからないようになってくるのに、アーモンディンは
ますますエドガーへの理解を深めていくのです。
人里離れたところだからこそできる犬舎を建ててできる仕事なのですがその分、近所や親戚とは遠く、
土地は広いけれどその人間関係はとても狭いのです。
だからこそ、ひとつのほころびから大きな破れ目へ、一滴の毒がまわるのも非常に早い。
叔父のクロードがふらりと家に来たことからソーテル家は変わってしまいます。
孤立してしまったエドガーは、初めて任された自分の仔犬たちの中から3匹を連れて
家をでてシュワミゴンの森を抜けて、家から逃げ出そうとしますがそこに立ちはだかるのは
地図も食べ物も持たない少年と犬を情け容赦なくからめとる大自然。
エドガーは家を出て初めて、聞かされていたソーテル家のソーテル犬の本当の意味を知ります。
「人間がいかにして犬のパートナーに適した存在になるか」エドガーと犬たちは「一人と三匹」
ではなく主従関係を超えた、「四人」時には「四匹」となって大自然の中を生き延びていく。
エドガーが好んで読む本、『ジャングル・ブック』さながらの森の中の生活。
人間に比べ、犬は基本的に無垢であり、人間の業の深さ、生まれながらにして持つ原罪ははかりしれないものがあります。
しかし、この物語は賢いアーモンディンに象徴されるように、美しい誠実さを求めていて、
どんなに激しい描写でも、淡々とした描写でも作者の筆は常にある気品をたたえています。
ソーテル犬は誇り高い。またソーテル家の人々もプライドが高い。誇り高さと気品の合間に
見える人と犬がぴたりと調和した瞬間に見られる共に生きる喜び。
物語に引き込まれながら、いつまでもエドガーと犬たちは草原の中を歩いていて欲しい、そう思わざるを得ない、
幸福を願わざるを得ない物語です。