紙の本
認知科学という「知的営み」の歩みと成果を、一望のもとにわかりやすくおさめる新書
2012/02/12 22:03
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「新書らしい新書」といってよいだろう。その拠って立つ人間観から認知科学のあゆみ、そして現在の研究の広がりまで、コンパクトに1冊にまとめたものである。広い領域に目を配りつつ、読みやすいストーリーにまとめてくれている。一定水準以上の知識を、門外漢のような私にもすらすら読めるように提示されている。新書の鑑である。
「認知科学」と「学」を付けてしまうと、ひとつの学問領域に見えてしまうが,著者が再三強調するように「完成した学問分野」ではない。著者の表現を借りれば、さまざまな学問領域における「知的営み」である。心と脳の働きへの関心をもつさまざまな学問領域に対し、情報学のインパクトが加わって成立した営みである。近年はこれに脳科学という強力な道具が加わっている。
さらりと読めてしまうが、認知科学すなわち本書が対象とする学問分野は、心理学、神経科学、言語学、人類学などにもおよび、それを一つのストーリーにまとめることは、たいへんな労力であっただろう。新書ゆえのスペースの制約から直接に明示されている文献は限られているが(参考文献は著者のサイトに掲載)、本文そのものに手抜きはない。限られたスペースでも、丁寧な紹介ときちんとしたコメントが添えられている。サブタイトルで「入門」とは謳っているが、それ以上の「認知科学小辞典」といった趣さえある。特に、認知科学の研究史を扱った第2部は、膨大な研究史を手際よくまとめあげている。コミュニケーションも認知科学の重要なテーマと言うが、こうした「まとめあげる力」そのものも、著者が認知科学研究で培ってきたものなのであろうか。
認知科学という知的営みが、人間の心とは何かという根源的なテーマをもとに、いかに大きな流れをつくりだしたのかがよくわかる。ここで得られた成果を、個別の研究領域がどう受け継いでいくのか、それとも新たな「知的営み」の大きな流れが見られるのか,それももまた楽しみである。
紙の本
日本の教育を骨抜きにした罪は重い
2023/03/26 03:00
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:名無し - この投稿者のレビュー一覧を見る
中教審会長の地位を濫用し、自身の出身で塾長も務めた慶應義塾大学への露骨な利益誘導は、早稲田大学総長の鎌田薫や早稲田大卒で元文部科学大臣の下村博文と結託しての所業。国立大学の体制破壊は日本の学術・社会を破壊したものであり、万死に値する。
投稿元:
レビューを見る
端的に言ってしまえば、「詰め込みすぎ」な印象を受けました。
認知科学というテーマに関して非常に広範な学問領域からの知見や学説等について記述しており、興味深い話題が尽きることなく繰り出され、知的好奇心を刺激されます。
しかし、いかんせんまだまだ未解明・不確定な部分の多いこの分野の概要をまとめるには、たった1冊の新書では少々窮屈だったのでしょう。
著者は「分かりやすく」解説しているつもりでも、多岐にわたる学問領域の各々で使用されている専門用語の説明が不十分に感じられるところがあったり、端的に述べようとするあまりに説明が抽象的すぎて理解できなかったり。短くまとめようとする努力が裏目に出たような雰囲気が全体に感じられました。従って本としてのまとまり具合もあまり良いとは言えません。
とはいえ、取り上げられているトピックスは、人間の諸活動に関心を持つあらゆる人にとってとても面白いものばかりです。認知科学とはどんなもので、それがいかに多くの学問や実生活と結びついているかを知ることができます。
投稿元:
レビューを見る
安西先生の本、今回は、今までの認知科学の歴史の説明的なものが多かった気がします。学説は対立しているというほどではなさそうですが、書き方が少し論文ぽいと感じました。個人的には、言語学や情報処理などの学問が、認知科学に繋がってくるというところが面白かった。
投稿元:
レビューを見る
認知科学が「心」の問題を解決してくれる日がくることを願う。今日の気分や、あれやこれやの心労がクスリや療法で切りかえることが科学的にできるのなら・・・・。
心があるから人間らしいけれど、心があるばかりに生きにくい。
とはいえ、ヒトがロボットのように、決まりきってプラス志向ばかり持つように仕立てられるようになっても・・・・・。
認知科学はどこまで進歩するのだろう。
投稿元:
レビューを見る
認知科学の基本と全体像が分かる本。
以前から認知科学の本をいろいろと読んでいるが、頭の中を整理するのに役立った。
投稿元:
レビューを見る
問題が理解できれば解決できたと同じことだ。認知心理学のエッセンスを歴史的背景や、様々な分野への応用など多岐に渡って考察。問題解決に至る思考について、考えを深めさせられた。
投稿元:
レビューを見る
昨年(2011年)の9月21日に出版された本で、最先端の認知科学の研究についていろいろと書いてありました。
認知科学というものは情報科学を基本的な分析概念として成り立っているんですね。
「システム」や「情報の表現」といった単語は、情報理論を知っている人でないと少しイメージしにくいかと感じましたが、その方面に興味のある人はもちろん、そうでない人も読んで損はないと思います。
「記号主義」と「コネクショニズム」に関する話はちょうど気になっていた概念対立で、大変参考になりました。
コネクショニズムについてちょっと勉強しようと思います。
投稿元:
レビューを見る
心は、感情や社会性や記憶や思考のようないろいろな要素的な機能が相互作用して働く情報処理システムである。
人の一生は記憶の塊で、その記憶が社会全体の記憶を形作る。
投稿元:
レビューを見る
脳と心の関係をかなり古い研究結果からの歴史を交えながら書いてある。今はやりの「脳最強説」ではなく、多角度から考察してあり、面白かった。ただ、内容が難しかったので、できればもう一度読みたい。
投稿元:
レビューを見る
認知科学について簡潔に書かれた良書である。情報科学の関連性、チューリング、ウィーナー、シャノンなどにも触れていて大変興味深い。新しいアイデアを出す場合や商品企画を行っていく場合に良いインスピレーションをもたらしてくれるだろう。
投稿元:
レビューを見る
学生時代から、いつかは安西先生の本を読まねば!と思っていたのを、新書で出たのでお気楽気分で読み始めたら、いや~、中身のぎっしり詰まっていること!ここ数年学んでる心理学系のことや仕事で考えているヒューマンエラーのことなどが載っていて、結局自分はこの周辺をうろうろしているんだと再認識。
投稿元:
レビューを見る
人間はどのように世界を認知しているのか興味があり手に取る。
非常に難しく、なんとか読み切ったはいいもののまったく体系的に理解できなかった。笑
前提知識があれば面白いのだろうが、まったくなかったために難しい。
脳はさまざまな相互作用をもっているということしか理解できず自分の理解力の不足を痛感しました。
投稿元:
レビューを見る
認知科学という言葉、学問のことを、聞いたことがないという人もおられるでしょう。認知科学は20世紀の半ばに勃興した学問で、情報、情報処理という概念を人間の心理や思考に適用して、心とは、脳とは、社会とはいったいなんなのだろうという問いに答えるべく発展していっているものです。
投稿元:
レビューを見る
本を集中して読めているときと、読んでいても頭の中はうわの空、字面を追うだけでほかのことを考えていたりして、まったく頭に入ってこないというときがある。何がどう違うのか、認知科学で解き明かしてほしい。結論から言うと、本書を読んでいる間、ずっと後者でした。したがって、何が書かれていたのかほとんど頭に残っていません。前半は、おそらく一般向けに読みやすくするため、専門用語をはぶいて説明されているようでした。ある程度知識があるものにとっては、少し物足りなさを感じる記述でした。後半、最新の話題にも触れてあり、その中には専門用語や専門家の名前が登場してきました。ここで気になったのは取り上げられる日本人が少ないということ。甘利俊一、川人光男とあとひとり、ふたり。それと著者自身の取り組み。どういう意図かはわかりませんが、参考文献も海外のものばかり。認知科学の全体像が知りたいと期待して読み始めたので、ちょっと期待はずれの結果になってしまいました。まあ、私の読み方が悪かっただけかもしれません。同じ授業を受けていても、必死に聞く子と、ボーっとし続ける子がいます。認知科学の見地から、どうしたら集中して聞けるのか、どうしたら集中して本が読めるのか、そのあたりも解説していただけるとうれしいです。