紙の本
日本の雇用の特徴
2012/02/04 21:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しいたけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の雇用慣行に基づいた個別的労働関係と集団的労働関係がコンパクトにまとめられた良書です。
著者は日本の雇用関係の特徴は、ジョブ型の労働契約関係ではなく、メンバーシップ型労働契約関係であるという点です。これは自分自身の体験からもそう感じることができます。メンバーシップ型の労働契約関係での最大の問題である強制的にメンバーであることを失うことすなわち解雇である。だからこそ解雇に関する紛争が多く発生している。その中で生み出された解雇権乱用法理が近年の労働法規に組み込まれている。ただ、マンバーシップの内容がジョブ型の労働法規に存在することで矛盾を引き起こす可能性を著者は指摘している。
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著者が大学の講義のためにテキストとして用意した書。「長期雇用、年功賃金制度、企業別労働組合」という特徴をもつ日本型雇用システムはどのようにして形作られてきたのかが、労働法制との関係において解説されている。コンパクトだが非常によくまとめられたいつも手元においておきたいと思った一冊。(2011/12/15)
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労働系blogで集客1,2を争うhamachan先生の一般向け本。
労働社会のありかたをジョブ型、メンバーシップ型に分けた上で、労働法の歴史を開設するスタイルは、かなり珍しい。
実務上感じる労働法と実情の乖離の原因をうまく説明してくれてる感じです。
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本書は大学の講義用のテキストとして執筆されたということで、労働問題(及び労働法)の大部分について網羅的に言及されている。なのでそういう意味では非常に教科書的ではあるが、ただ著者がその方面に対して(実務経験も含めて?)非常に強固なバックグラウンドを有しているせいか、この手の本には珍しく読者をぐいぐい引っ張って読ませる本だ。
本書を読んだ多くの読者に強烈に印象を残しただろう主張は、とにかく日本における労働契約の本質は(特に規模の大きい企業になるほど)メンバーシップ型のそれであるというものである。メンバーシップ型の一つの特徴として、労働契約は(欧米とは異なり)職務の定めのないものであるというのが挙げられる。つまり大雑把に言えば「仕事がなくなってもそう簡単にクビにはしないから、定年までしっかり会社が面倒見るつもりだから、仕事の内容とかそういうものについては基本的には会社の言うことに従ってね」というものだ。僕はこれはわりかし普通のことだと思っていたのだが、これはどうも日本の労働における大きな特徴の一つであるらしい(このメンバーシップという概念は、日本社会の特徴をとらえた言葉として出てくることのある「村社会」「均質」「平等」なんかとも非常に共通点の多い概念であると思う。とにかく「みんな仲良くやろーぜ!」である。僕も嫌いではない)。著者はこのメンバーシップという用語を一つの軸として様々な事象、法解釈なども説明しているため、こちらとしても非常に理解がしやすかった。
また元々欧米(独?)に倣って作られたジョブ型の雇用契約の原則が、(司法が)信義則や種々の法理といった法の一般原則を駆使することで、メンバーシップ型雇用契約の原則に軌道修正されて行く過程(「司法による事実上の立法」)は、純粋に読み物としても面白い。
知識や経験が足らず、まだ理解の追いつかない箇所がいくつもあるが、それも踏まえて何度も読み返すだけの価値がある本なのは間違いないと感じた。
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・法律は歴史だと思った。
・日本の雇用の特徴的なところと、法律と実態のズレが大きくあることが分かった。
・産業カウンセラー講座で学んだときに理解できなかったことが、なぜ理解できなかったか分かった(理屈ではなく、歴史的にそうなった、とか、日本の文化的に受け入れられずにそうなった、という経緯があった)。
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小難しい事が書いてあるが、過去の労働法の歴史が詳しく書かれている。社労士を目指す人にとってはとても勉強になる。知りたいと思っていた過去の歴史がたくさん載っていた。何度か読んで今後に生かしたい。
印象に残った内容
◯日本型雇用システムはメンバーシップ型
企業のメンバーとしての忠誠心が問われる
職務を特定して雇用契約を結ばない。
◯雇用管理システム
転勤に応じる義務はある。断ることは難しい。
◯団体交渉・労働争議の歴史
日本は企業ごとに労働組合があり、欧米は産業ごとに労働組合がある
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【読書その67】労働政策研究・研修機構の濱口 桂一郎氏の著書。メンバーシップ型という日本型雇用の特徴や労働基準法などの労働法制とその運用の実態、労使関係や非正規労働者、女性の就労の問題についての入門書。その範囲は非常に広く、雇用政策・法制の歴史的な背景にも詳しく、非常にお勧めの一冊。
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備忘のための要約:
日本的経営システムの特徴は、「終身雇用・年功序列・企業別組合」と言われている。その根本にあるのは、「雇用とは会社におけるメンバーシップの付与である」という日本独特の考え方である。
しかし一方で労働法では、欧米や中国などと同様に「雇用とは会社でジョブを遂行することにより報酬を得る契約である」と位置づけている。
このメンバーシップ型の労働慣行と、ジョブ型の法律とのギャップから、さまざまな労働問題が起こっている。
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副業禁止とか、一度やめると戻ってこれないとか、ゼネラリスト思考とか、漠然と会社に感じていた疑問の原因がわかる本。
別に社労士とかでなくても読めるので、自分の働き方の見直しのきっかけにどうぞ。
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「日本の雇用システム」と「日本の労働法制」についての概略を、両者の密接な領域ごとに一つ一つ確認しながら解説した本。
分かりやすく書かれているのだろうが、私は読んでいてあまり内容が入ってこなかった。(頭に残ったのは、「日本の雇用システム」・「日本の労働法制」の特徴は「メンバーシップ型の雇用契約」だけであった)
おそらくこの本は日本の雇用問題・労働法制などをある程度学び、何らかの課題意識を持った人が読めば得るものが多いのであろうが、私のように労働法制学びはじめのような者には学びが少ないのかもしれない。
少し読むべき時期を間違えてしまった感である。
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労働・雇用のシリーズインプット。紙の本に到達しました。
これまで読んだ濱口本の総括という感じなので、ざっと目を通した。レファレンスとしてはこれがよいだろう。
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日本型雇用システムの本質は、「職務の定めのないメンバーシップ型雇用契約」とした上で、雇用を構成する各要素、すなわち、採用・人事異動・退職・賃金制度・就業規則・人事査定等が、実際にどのようになっているのか、どのように成立したのか、法令的にはには、判例法的にはどうなっているのか、を丁寧に解説・説明してくれている。
人事部門に配属された新人や、新たに人事部門に異動して来られた方にとっては、ものすごく勉強になる本だと思う。
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すごい密度。これは読むものではなく経営学や経済学や労働法のゼミとかの教科書だろう。
メンバーシップ制でいいのではないか、と思ってはいかんのだろうなあ。
でも仲間うちでわいわいやって、いろんなポジションこなすってのは魅力的だけどな。アメフトが好きかサッカーが好きか、みたいな。
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濱口桂一郎著『日本の雇用と労働法(日経文庫)』(日本経済新聞出版社)
2011.9.15発行
2017.3.13読了
金子良事著『日本の賃金の歴史から考える』に比べて読みやすく分かりやすかった。雇用管理システム、報酬管理システム、労使関係システムといったテーマ毎に章立てされていて、その通史と考察が述べられている。親切設計なポイントは、すでに述べられた通史でも、章立てが変われば、また一から説明してくれる点だ。同じ説明を繰り返し読むことになるので、頭に入りやすい。欲をかけば、クロスレファレンスがあるとなお良かった。
URL:https://id.ndl.go.jp/bib/000011272335
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本書では、日本の雇用制度における賃金制度、教育制度、新卒一括採用などの諸制度の生成・確立・変容の過程を跡付け、その変遷を明らかにしています。また、著者は、労働法における豊富な判例をもとに、言説の妥当性を示しているので、日本型雇用制度に対する包括的、かつ正確な情報を得る上で、とても有用な本だと思います。
多くの学生が、大学卒業後に企業に就職し、職業人としての生活を歩んでいく中で、その準備をする上で、雇用制度に関して知っておくことは重要ではないでしょうか?特に、本書でも書かれているように、日本の雇用制度の大きな特徴の一つである職務無限定性やそれにより生じる配置転換・ジョブローテーションなどの諸要素は、職業キャリアを考える上でも重要な点なので、就職活動前に知っておくと良いと思います。さらに、本書では、大学教育と日本の企業との関係性に関しても論じており、自分が学んでいる学問の意義や価値を考える上でも重要な知見を与えてくれます。大学生にとって有益な情報が満載なので、是非、手に取ってみてください。
(ラーニング・アドバイザー/教育 SAIGAN)
▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
https://www.tulips.tsukuba.ac.jp/opac/volume/1914576