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生命倫理とは、どのように生きどのように死ぬか、という誰にでも関係する問題について、「誰が」決めるのか、ということを考える学問である。
この「誰が」が大事なポイントで、決めた結果(内容)を考えるのではない。
多くの人はおかしいと感じるような決断、たとえは宗教上の理由で輸血を拒否して死ぬようなものであっても、その意思決定のプロセスが納得できるものであれば、受け入れられなければならないからだ。
だから「誰が」決めるのか、というのが問題であって、それが大きな難問となってすべての人に襲い掛かってくるのだ。
本書はやさしい語り口で具体例を豊富に用いながら、そのことを教えてくれる良書だ。私は2時間程度で一気に読んでしまった。
安楽死の問題から始まって、子どもの医療の問題や精子バンクなど、授業のネタとして使える話が豊富で、読んで本当によかったと思えた一冊だった。
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命の始まりと終わりを自分で決めることはできない。
命は誰が決めるのか、何が決め手になるのか。
宗教観と医療の関係を詳しく知りたい。いずれ。
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非常に難しい問題を、かなり分かりやすく示している。小学校高学年から中学生に読んで貰いたいような本。
真剣に考えさせられるけれども、明確に言い切る事が出来ない。
必ず訪れる自分の死に対しては、自分自身で決めたいと思うけれども。
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生命倫理って解決策のない底なし沼のようだ。著者は生命倫理は「対話」として展開されてきた学問だという。教師として分かりやすく問題提起し理性的に読者を対話の場に引き込もうとする。教育・研修等でこのような本を教材に討論したら大いに勉強になるだろう。しかし生命倫理って意見を集約し議論をまとめて正解を出していくという学問というよりも、理屈はそうだけど実際貴方はどうするのどう考えるのという一人ひとりの内面に還元され自己決定にゆだねられるような学問のように思う。一人ひとりの人間性、生き方を根こそぎ問われる学問のようだ。結局はどのような選択も概ね尊重され社会的事情の審査を受けて承認されるべきと思うが、他の生命への想像力、共感力、社会的包摂の精神は個人も社会も見失ってはならない。
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昔けっこう頑張って生命倫理(学)、臨床倫理について学んだが入門書としておもしろい。ただこの分野はいつも具体例(臨床)とぴったりくっついた思考なので、入門書の必要性はどうなのだろうか。
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学級文庫としておいときたい本。あるいは、生物関係の学科を推薦等の方法で受験する受験生がとりあえず、一番初めによんどいたらいいかな、っていう本。(面接対策的な意味で)ブラックジャックとかGTOとか、子供をふくめた、みんながよく知っている話題もまじえつつ、生命倫理とは何か、ということを『考える』手がかりになる本。得られる情報量はあまり多くはないが、議論のトリガーとしてはとてもいいんじゃないかと思う。中学生ぐらいの生物の読書感想文としてもいいかも。
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"いのち"について書かれた新書をたて続きに読んだ。
考えることは大切で、正解がなくて、難しいことがいっぱいあった。
「自分だったら、どうする?」って、考えることも多い。
種差別とか新しいことばや人ってどこからとか、まずまずに人って?みたいな、う~ん。
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普通のちくま新書はよく読むけど、ちくまプリマー新書を読んだのはこれがはじめてです。ちくま新書が少々専門性が高いのに対して、ちくまプリマー新書は小学校高学年ぐらいの児童から大人まで、誰でも読める敷居の低さがある気がします。
ただ、「敷居低い=内容が簡単」というわけでは決してありません。特に、本書『はじめて学ぶ生命倫理』の場合は。
いのちの終わりの決定権、いのちのはじまりの判断、いのちの質(QOL)の考え方、いずれも生命倫理上の難問ばかりが本書では取り扱われています。近年の海外での判例などが取り扱われているので、こういう問題に通じた人が読んでも、意外な発見があるかもしれません。
中学、高校で「いのちの授業」を考えている先生には、そのまま教材化できそうなものばかりが載っている本書をおすすめします。ブラック・ジャックや、GTOを引き合いにだして説明するところもあるので、授業の導入にもってこいです。読むのに時間がかかったとしても、2~3時間ぐらいで読めるので、書店で見かけたら、一度手にとってみると良いでしょう。
私個人は、結合双生児の分離手術をめぐる倫理的な問題がとても考えさせられました。
次はこの本で紹介されていた参考文献を読み進めます。
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入門書としてとてもよく出来ていて、中学生でも読めるだろう。
入門書ではあるが、正しい回答のないモラルジレンマがたくさん提案される。
それが倫理学というもので回答のない学問ですね。
倫理的な話に対して、変に回答なんか出されたら反発を覚えることが多いので、安易に回答を出さずに読者に考えさせる本書はとても読後感がよい。
入門書なのでこれでいいのだけど、個人的にはもう少し歯ごたえがあってもよかったかな。
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著者は倫理学者(哲学者)。
7つの場面を例に、「どこからいのちで、どこまでがいのちなのか」「いのちは誰が決めるのか」を問う本。
尊厳死、QOL、こどもの決定権、判断能力(コンピテンス評価)、デザイナーベイビー、精子バンク、結合双生児、正当防衛、種差別、中絶、人権の始まり…等々、キーワードを記録しておく。
時々「ブラックジャック」や「GTO」などの漫画タイトルが出て来たりするので、ちょっと気が楽になる。
もちろん実際の例も取り上げられながら、必ず章の終わりに問いかけで終わる。
1つの意見や思想に執着していないので、どんな意見にも平等な印象。答えを出させることが目的なのではなく、考えさせることが目的なんだろう。
「あなたが裁判官だったら、どういった判決をくだしますか?」
私は自分の身体の中に、子どもを身ごもったことがないので未知数なのだけど。
中絶には2つの視点が常にあるのだなと思った。
また子どもだから(年齢が若いから)といった理由で、自分の人生を選べないのもなんだか不公平な気がした。(治療の方針について)
自己決定ができない人(子ども)は人間なのだろうか?守られるだけの存在なんだろうか?
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相模原の介護施設の事件から、生命倫理って分野に興味をもち手始めの一冊。医療が高度に発達すると、様々ないのちを、誰がどうするかって考えさせられる場面が現れてしまうんだなあ。複雑。
自分の命の終わらせ方は自分で決められる?とか人の命が動物よりも大事かとか、精子バンクで優秀な子どもを産むとか。物理的には可能だけども、倫理的には問題がある場面では1人1人の考えが問われることに。いのちを見つめ直すいいきっかけになりました。
余談としては、GTOとブラック・ジャックが読みたくなりました
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いのちとは何か、いのちの決定権は誰が持つのか、、。
問いかける文章のため、いのちについて深く考えるきっかけを与えてくれる本です。
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総合的感想:人類が生命を操作しうる技術が高まりすぎて問題がいっぱいだわ。倫理形成が技術発展に追いついてないという時代だね。しかしまあ、サピエンス全史の「生物学は可能にし、文化(法や倫理を含む)は禁ずる」を思い出す。我々は我々が「可能」にしてきた技術によって滅ぶことはあるんだろうか。
・生命倫理学はいのちを誰がどのようにして決めるのかを議論する過程で形成されてきた学問。
・豆知識:医学部の学生はみんな「ヒポクラテスの誓い」を教えられる
・生命の神聖さ(SOL) VS いのちの尊厳、生命の質(QOL)
・治療を拒否する拒食症の娘を訴えた両親の話
・エホバの証人の子どもが輸血拒否をしたらどうするか問題
・判断能力はどうやってきめるの?コンピテンスという概念。生命倫理の影の主役。尊厳を持つ自律的人間と、生きた屍との境界を決める言葉。
・自立尊重原則VS仁恵原則、無危害原則
・精子バンクで「造られた」天才児の話。えぐいなこの話、と印象にのこった。親心かエゴか。
・結合双生児の分離手術問題。1人を助けるためにもう1人を殺してもいいか?←これも絵を想像するとエグくて印象に残った。
・種差別(動物と人間の命の優先度)の話。ただ個人的には、種差別は根拠の無い偏見ではなく、人間も生物だし、社会的な生物なわけだから種差別思想を持つのも自然では?と思った。
・中絶、いのちの始まりはいつ?の話。「プロ・チョイス(母優先)」VS「プロ・ライフ(胎児優先)」
いのちの始まりは受精?着床?人の形を取るようになってから?誕生してから?
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達者なものだ。いつのまにか非常に優秀なライターに成長してたのね。業界ではトップクラスじゃないかなあ。こういうのもとから向いてたのかもしれない。
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ちくまプリマ新書の想定される読者層は、本来主に中高生なのだろうけど、大人でも十分読み応えある本が多いと思う。本書もまさにその1冊。
生命倫理学は、学生の頃(当時は「生命倫理学」としてジャンルがきちんと確立していなかったかもしれないけど)講義を受けたことはあるが、社会人になり忙しさにかまけて、ニュースなど実際のケースの報道に接しても、正直そこまで深くは考えていなかった。なので本書で改めて、深く考えるきっかけを与えてもらったし、数十年前に比べると、学説や裁判例などもかなり蓄積されていて、論点もかなり整理されてきているのだなあという感想を持った。さらに当時では考えられなかった新しい論点も出てきているし、今後も紹介されている参考文献に当たっていきたいと思う。