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- カテゴリ:一般
- 取扱開始日:2012/03/29
- 出版社: 宝島社
- サイズ:26cm/127p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-7966-8750-8
紙の本
世界チャンピオンが語る!日本ボクシング激闘列伝 時代を作った王者たちが明かす数々の真実 (別冊宝島 culture & sports)
知られざる胸中、挫折、ファイトマネー…。鬼塚勝也、西岡利晃など、拳で世界を獲った男たちが秘められた真実を語る。森川ジョージの特別インタビューも収録する。【「TRC MAR...
世界チャンピオンが語る!日本ボクシング激闘列伝 時代を作った王者たちが明かす数々の真実 (別冊宝島 culture & sports)
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商品説明
知られざる胸中、挫折、ファイトマネー…。鬼塚勝也、西岡利晃など、拳で世界を獲った男たちが秘められた真実を語る。森川ジョージの特別インタビューも収録する。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
明日の世界チャンピオンを夢見る全ての人に捧げられる本
2012/02/02 09:28
6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴代の日本人世界チャンピオンの素顔に迫る好企画である。ボクシングファンにはたまらない内容になっている。表紙の写真からしてすごい。辰吉など、近年の顔しか知らないから、世界挑戦してバリバリ活躍していたころの少年のような顔には驚かされる。なつかしい、こんなにあどけなかったのかと。
ここには何人もの現役もしくは過去の世界チャンピオンのインタビューが載っている。ひとりひとりボクシング観が違うのは意外だ。ボクシングというと日本では、ストイックなスポーツとしてステレオタイプ化して捉えられることが多い。特に、「あしたのジョー」に影響されて、過酷な減量をこなし、命がけで闘うボクサーのイメージが強い。
しかし、なかにはもちろんそう語る元チャンピオンも少なくないが、自分なりの目標と世界観を築いているのが、明らかになる。
特に意外なのは、技巧派でならし、アンタッチャブルの名をほしいままにした川島郭志だ。打たせずに打つというスタイルを目指していたのは見ての通りだったが、スリッピングアウェーという相手のパンチを顔をひねってすかしてしまう高等技術については、呼称すら知らず、中南米などの選手がやっているのを見て自然に覚えたというのだ。あんな高等技術を特訓でなく、自然に覚えたなど信じられない。まさに天才肌の技巧派だ。もっとも、ずっとボクシング漬けだったのはお父さんの影響なのだが。
こうした本人にしか分からない秘話が続出するのが本書だ。これで1,260円は安い。
ボクシングで大金をつかんで車を乗り回した薬師寺の話もけっこう笑える。こういうボクサーだっていてもいい。あの辰吉を破った試合はボクシング至上最高視聴率だった。それ以外にも強敵を下し、結局、ダウンを経験しないまま引退したのだから運動能力は極めて高かったことになる。
鬼塚はボクサーらしくストイックで神秘的なイメージがあったが、このインタビューを通しても、ほかのボクサーとはひと味違うことがわかる。チャンピオンになっても、まだ自分の求めるものが得られないとして、追求していたのだ。引退後もジムを開きつつ、アートにも乗り出して、求道者のままだ。やはり意外なのは、引退後もカムバックを何度も考えたことだ。実際、本格的なトレーニングをしたこともあるという。そうなら見て見たかった。実力の限界を見ないままリングから遠ざかった感じが今でもするからだ。
元チャンピオンたちから語られるこの年代のボクサーでも実力が折り紙付きなのは、どうやら川島と鬼塚のようだ。特に、インターハイを制したようなころは群を抜いていたとある。こうしたチャンピオンをしっかりとテレビ中継がある時代にすべて見られたのは幸運だったのだ。
辰吉へのインタビューはなぜか辛口だ。40歳を過ぎても、まだ引退しない執着心は見上げるものがあるが、肉体的に悲鳴をあげているのを知っているインタビュアーが、気遣って、あえて辛口の言葉を贈っているのだろうか。ただ、辰吉の語ることには、けっこう胸を打つものがある。若いころにホームレスも経験して、公園のベンチ下で寝起きしていたことなど今まで知らなかった。ただ、辰吉にはそろそろ新たな道を見つけてほしい。これからの人生の方が長いのだから。
本書に出てくるチャンピオンの中で、もっとも評価の高いのは現役の西岡だ。ラスベガスやメキシコなど海外で世界戦を闘い勝っている。敵地での1勝は国内での防衛の3勝くらいには相当するらしい。このまま価値を下げなければ、日本のボクシング至上最高の選手と言うことになる。それは、早熟の天才と言われながら、4度も世界戦に失敗し、5度目で獲得した苦労人であるから、なおらさ名声を高めている。
徳山は見た目は派手な試合は少なかったが、ボクシングに精通したものなら分かる超技巧派であった。距離をとり、相手のパンチの当たらないところにいて、いざ自分が打つときは鋭く踏み込み打ち勝つ。これは経験者でないと分からない世界だ。現役ボクサーにも間違いなく役立つインタビューだろう。足を使うこと、何種類ものジャブを使い分けること、踏み込みを強くすること、こういった要素が揃えば、ほぼ無敵となる。
現役では、もっとも注目されるのは、井岡一翔だ。これほどレベルの高い試合を見せつけるボクサーも見あたらない。ボクシングファンは一試合も見逃さずに見ておいた方がいい。練習への取り組みなど真剣そのものであり、自信もついてきている。ぜひ、歴史に名を残す選手になってほしい。
2012年2月現在、日本には8人もの世界チャンピオンがいるが、どうやら衛星放送で世界のハイレベルの試合がいくらでも見られるようになったことが大きいらしい。見て真似るお手本がいくらでもあるからだ。それと、本書に登場する多くの元チャンプが自分のジムを開いていたり、トレーナーをしていたりと、その経験値を伝えられる状況にあることも大きいのではないだろうか。芸能界に転身したり、事業を始める人もいるが、ジムの開設が比較的容易になり、経験を伝授できるようになったのはよいことだ。
その意味では、これからさらに日本のボクシングのレベルが上がり、新たなチャンピオンが続々と誕生する土壌は整いつつある。これからがますます楽しみである。
本書はその価値からして安い。ファンは勝って読んで、損することはまずない。いや読まない方が損だ。
世界チャンピオンになれるのは、才能という人もいれば、気持ちという人もおり、がんばればなれるという人もあり、けっこう意見が分かれている。数多くのボクサーに本書が読まれて刺激を受けてほしいと思った。