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- カテゴリ:一般
- 取扱開始日:2012/04/13
- 出版社: 合同出版
- サイズ:21cm/151p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-7726-1056-8
紙の本
チェルノブイリ原発事故がもたらしたこれだけの人体被害 科学的データは何を示している
著者 核戦争防止国際医師会議ドイツ支部 (著),松崎 道幸 (監訳)
25年間の研究から浮かび上がる放射能による健康被害の深刻さ。WHOとIAEAの公式発表とは異なる、チェルノブイリ原発事故後の放射線と患者・死者数との因果関係について言及し...
チェルノブイリ原発事故がもたらしたこれだけの人体被害 科学的データは何を示している
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商品説明
25年間の研究から浮かび上がる放射能による健康被害の深刻さ。WHOとIAEAの公式発表とは異なる、チェルノブイリ原発事故後の放射線と患者・死者数との因果関係について言及している各種の科学的研究を評価検討する。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
類書と照らし合わせれば、チェルノブイリ原発事故の影響の程度に見当をつけられる可能性がある
2012/04/29 20:28
11人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、チェルノブイリ原発事故から25年経った2011年4月にドイツで刊行された。日本での出版は2012年3月30日である。チェルノブイリ原発事故による健康への影響についてまとめた最新の本である。「科学的に証明されていない」という言い方で長らく不明とされてきた、チェルノブイリ原発事故の影響について本格的に論じている。これは注目できる一冊だ。
本書がすぐれているのは、データや統計を可能な限り、たくさん掲載している点である。日本国内にも、放射線の影響について論じた本はいくつかあるが、その中立性、客観性、科学性という点で、今ひとつ物足りなさが残る。そうした弱点を、おおむね克服できていると思われるのが本書である。実質110ページに過ぎないが、その内容はとても濃密である。
チェルノブイリ事故に関しては、情報公開が不完全で、健康への影響に関して明らかにすることがタブー視されたり、情報操作を受けたり、矮小化されてきた。そのため、正しい情報が日本はもちろん、国際社会にも伝わっていない。
本書もIAEAやWHOなどが、健康への影響を小さく見せかけようとしている点を指摘する。
実際、大規模な健康調査が事故直後から継続的になされてきたかと言えば、それは欠如している。1986年の事故当時はソ連の末期であった。事故からほどなくして体制が崩壊したことにともなう社会的混乱のために、きちんとした調査がなされてこなかった面がある。
ただし、それは大規模な疫学的調査が不足していたのであって、なんらの調査も行われてこなかったことを意味しない。ベラルーシ、ウクライナ、ロシア、ドイツ、北欧といった放射性物質がたくさん降下した国々や地域レベルでは、それなりの調査や研究が積み重ねられてきている。
なかには、調査研究の方法に妥当性を欠くものもあるようだが、そうした調査から信頼するに足るものをいくつも選び出して、まとめてみせたのが本書である。
つまり、「独立・中立の機関による大規模で長期的な調査が行なわれていないために、チェルノブイリ原発事故の完全な全体像が描けないとしても、その傾向を把握し、提示することは可能である」(p.13)として、刊行されたのが、この本である。
探し求めてようやくたどり着いた本という印象を持つ人も、多く出るに違いない。低線量であれば、自然界にも放射性物質はあるから心配はない、といった言説が妥当であるのかどうか、本書を読み終えれば、自分なりの結論を得られるだろう。
いや、読み終えたとき、チェルノブイリの事故の影響の大きさに驚いたり、怖くなる可能性もある。事故の調査や研究がタブー視されたり、矮小化されてきた理由も、このあたりにあるのだろう。
健康への影響が、本書におさめられた数々の調査結果から読み取れる。ガンだけでなく、さまざまな影響があらわれていることを伝えているのだ。旧ソ連圏だけでなく、ドイツ南部のように比較的たくさんの放射性物質が降下した地域でも起きている。そして、巻末にあげられた膨大な参照文献の数々がその説得力を増している。
原子力の普及のためには都合が悪い事実を隠しておきたい政府や国際機関はともかく、WHOという本来、人々の健康を守るために設立された機関は、その役割を忘れてしまっているのではないか。旧ソ連圏やヨーロッパで出された論文から、これだけのことが分かっているのだから。
日本人の監訳者はあとがきで、「放射線被ばくが人間の体にどのような影響を与えるかは、じつはほとんど解明されていないと言うのが、現在の私の実感である」(p.150)と述べているから、医師として慎重な姿勢を保っている。本書の刊行で、タブーを打ち破ろうといったつもりはなく、淡々とこなしている。そうした人が、翻訳に関わっているからこそ、かえって耳を傾けてみようという気持ちを読者に起こさせる。
健康への影響を、この書評欄でかいつまんで書くのは困難だと感じた。ぜひ、手にとって読んでみられるといいと思う。
なお、著者は「核戦争防止国際医師会議ドイツ支部」だが、「核戦争防止国際医師会議」は1985年にノーベル平和賞を受賞している。