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楽しく読了。精神の調子を狂わせた方々が入院する療養所での事件が舞台なので、チャカポコチャカポコ風だったり、シャッターアイランド風だったり、三狂人風だったり、といろいろ妄想してました。が、それほどダークな感じはなく、ちょっと変わった患者のいる病院レベルでしたね。
自らアルコール依存症で病院の入院患者でもある素人探偵ピーター・ダルースが、この「変わった人達」と「病院の職員」の中から犯人を洗い出す過程は、ミステリ洋画のようでとても楽しかった。
驚愕の真相とか、すごいドンデンとかを期待するとアレかもしれませんが、次作の刊行も楽しみな作家さんですね。
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心のケアが必要な人々が集う療養所で不可解な出来事が多発し、ついには殺人事件が発生。
当初は所長からの依頼でリハビリがてら内部調査を始めたアルコール依存症のピーターでしたが、やがて容疑者とされたアイリスの無実を証明する為に奔走します。
辛い出来事に落ち込み酒に溺れ、自分自身をコントロール出来ずにいたピーターが、事件を通して徐々に自信を取戻していく姿が清々しいです。
療養所が舞台ですが暗さや重さはまったくありません。様々な症状の患者達の言動が事件を複雑にしたり解決に導いたりとどこかコミカルです。
最初は幻聴を聞いたりする患者達の言葉を信用出来ないと思っていましたが、妄想と現実がはっきりしていくにつれ、患者達よりも職員達の方が疑わしくなってきました。
ピーターの症状がよくなっていくにつれて、事件もよりはっきりと見えてきます。療養所ならではの物の見方が事件に大きく影響していくのがおもしろいです。
事件のトリック自体は微妙でしたが、一同を集めての解決場面はとても楽しく、とくにあの人にはまんまと騙されたり惑わされたりしました。
犯人の正体や卑劣さには苦いものがありますが、読後感も良く最初から最後まで楽しい1冊でした。
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「迷走パズル」
アルコール依存症の治療もそろそろ終盤という頃、妙な声を聞いて恐慌をきたしたピーター。だが幻聴ではなく療養所内で続いている変事の一端と分かった。所長は言う「ここの評判にも関わる、患者同士なら話しやすいだろうから退院に向けたリハビリを兼ねて様子を探ってもらいたい」。
1940年代に書かれた推理小説「迷走パズル」です。この「迷走パズル」の特徴は以下です。
1.変わった主人公
主人公であるピーターはアルコール依存に悩んでいるということ、アルコール依存から脱する為に精神療養所にいること、そして探偵として活動すること、この3つの特徴を持っています。この3つが揃う主人公による探偵小説は初めて読んだ気がします。
また、事件の真相を探る舞台が常に療養所であること、犯人が常にピーターの傍にいる可能性があることも大きな特徴です。
2.馴染む時代性
この作品は随分昔に書かれていることから普通は時代を感じることもあると思います。例えば、日本文学でよくあるように文法使いや表現に違和感を感じたり、登場人物が妙にしっくりこなかったりなどなど。しかし、この「迷走パズル」ではそのような時代性を感じませんでした。
理由としては舞台が療養所から出ないことやピーターが常に療養所内の人間について思案してくれていること、そして訳者が昔の良い表現(外国作品で良く登場するウィット感)を生かしてくれていることなどがあると思いますが、最も大きいと思うのが、まさに推理に迷走していることです。
療養所内で起こる殺人事件やそもそものきっかけと思われるピーターや他の患者も聞いたとされる声の謎など破格の値段がつきそうな謎をいくら患者同士なら調べやすいからと言っても探偵なんかしたことの無いピーターが解けるのだろうか?と読者に思わせる迷走ぶりにまず惹きつけられます。
そして、そんな迷走ピーターが傍にいるかも知れない犯人と事件の真相を追い求める捜査も様々な要素を巻き込みながら進み、とても心地よいです。話のテンポ自体は速いとは言えないと思いますが、それぞれの登場人物の拝啓とピーターの思案が描かれているので、テンポの速さよりも内容の中身に惹きつけられます。
以上2つがこの「迷走パズル」の魅力だと思います。当時の流れを考えると、精神病の小説でこれだけ穏やかな要素を含んでいる作品は珍しいのではないか?とふと思いました。
次回も読んでいきたいと思わせる作品です。しかし、もう少し長くてもいいかな。
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アルコール依存症で精神的な療養所で入院加療中のピーターは、逃亡を促す己の声を聞く。
療養所内では不穏な出来事が続き、所長はリハビリも兼ねてピーターに事件の捜査を託すのだが…。
ものすごくオーソドックス。
伏線が張られ、ミスリードがあり、関係者一同を集めての謎解きがあり。
舞台の割には明るい作風で、ページ数も多くないので楽しんで読めた。
次作が楽しみ。
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ピーター・ダルースを探偵役とするパズルシリーズの第一弾。妻を火災で失った衝撃からアルコール依存症となったピーターが、入院先の療養所内で起きた不審な死亡事件の真相究明にあたる本格ミステリー。関係者を一同に集めての謎解きで迎えるラストは必見です!
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先月の新刊で、『俳優パズル』というのがあり、「これは面白そうだ!」、と思って手に取ってみたら、パズルシリーズの第2作目ということで、ということは、まずは1作目から読まなきゃじゃんか、ということで律儀に読んでみた1作目が、こちら、『迷走パズル』になります。
仕事がなくてアルコール依存症になった演劇プロデューサが、療養所で出会った怪奇な殺人事件、というミステリ。
全体的に、軽めです。
ライトミステリというか、読むのにちょうど良いです。
全体的にも、シリーズの最初としては、手堅くキャラクターも描かれてて面白かったのではないかな、と思います。
最終的に、シリーズの開幕を思わせるラストも、けっこういい読後感を提供してくれます。
さあ、これで第2作目の『俳優パズル』を読めるぞ!と意気込んではみたものの。
ただいかんせん、翻訳物なのである程度は当たり前だと思いつつも、お値段が結構するので……。
どこかのち○ま文庫もけっこうなお値段がいたしますが、創元推理文庫は、良作が多いので大好きなんですが、いかんせん、こちらのお財布事情というものもありまして……。
この『迷走パズル』は、\861(税込み)、『俳優パズル』は、\1,050(税込み)……。
文庫でまさかの\1,000超え……!
うん、もうちょっと間を開けてから、そのうち買いますね……。
楽しみは、あとにとっておくものだ、と、かの偉大な、えーと、ほら、誰かが言ってた気がするので。たぶん誰か言ってるよ。
うん。
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この文庫本、発行は2012年と新しいのですが、原作が書かれたのが1936年というから驚きです。もう80年近くも前になるのですから、まだまだ歴史の浅いミステリ界においては、完全に古典といっていいでしょう。なんたってクリスティの『ABC殺人事件』と同年というのですから!
しかし、80年以上前の作品でありながら、内容はちっとも古くなっていません。
主人公は暗い過去をもつ、アルコール依存症の人気演劇プロデューサー。療養のため入院した精神病療養施設で事件が起こって……という展開です。
体感したものを手放しで信じられない精神病患者特有の危うさが、サスペンスフルな展開によく効いています。こういう微妙な問題を扱っていながら、ことさらに差別的であったり、あるいは同情的であったりしないのも好印象。とても上品なのです。
訳も素晴らしく、海外ものにありがちな読みづらさもまったく感じませんでした。誰が読んでも楽しめるミステリだと感じました。
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読了、60点。
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アルコール中毒により精神疾患療養施設で治療中だったピーター・ダルースは、ある夜、「逃げるのだ、ピーター・ダルース。今すぐ逃げろ」という"自分"の声を聴きパニックに陥る。
施設では他にも同様の現象を体験した患者がおり、施設所長から患者の立場として真相を確かめてくれないかと持ち掛けられる。
真相を探る中女性患者と知り合ったダルースはその女性のことを好きになり。。。
やがて第一、第二の事件へと発展する。
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1936年の原作の和訳小説。
和訳には医療用語など現在に馴染みに深いものを用いられており、また比較的読み易いテキストとはなっています。
が読み易いとは言え読んでいて面白いテキストではないのが、当然と言えば当然ながら残念。
小説の特徴としては舞台設定とそこから派生する描写の不安定さにあります。
舞台は精神疾患療養施設ということで、被害を受けた本人たちさえも自身に降りかかったことが現実に起きたことなのか、それとも自分の妄想なのか判断出来ず、しかし事件は確実におきているはずだという印象を読者に与えながら話が進行します。
読み進めながら正直全てがダルースの妄想なんじゃないかとさえ思ってしまいましたが、真相は一応ミステリー的な決着。
終盤に若干のツイストの効いた展開になっていてその点は評価したいと思うところですが、原作が大昔と言うことを差し引いても物足りない出来。
シリーズとしては女性患者とのその後が描かれていると推測され、その部分に引っかかった人なら次回作も読み進めて行くかと思いますが、自分としてはやや微妙なところです。
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1936年の作品だけど古さを全く感じさせない王道ミステリー。精神病院内のみでストーリーが展開するので、時代に左右されず読める。
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ラストがバタバタしてて、う~ん残念。
舞台が高級精神病棟っていうのはおもしろかったなぁ。
次の「俳優パズル」はシリーズ最高傑作らしいので、次回に期待!
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妻を亡くしたショックからアルコール依存症となり、精神病院に入院した演劇プロデューサーのダルース。ある夜、自分の声が自分に向かって『殺人が起こる』と囁くのを耳にする。病院長のレンツ博士に相談すると、博士は予てから院内の怪異を問題視しており、ダルースに解決の為の協力を持ちかけた。かくてダルースは秘密裏に調査を開始するが、その矢先に本当に殺人が起こる。果たして犯人は?ダルースは無事事件を解決し、退院することが出来るのか?
登場人物が多すぎてちょっと混乱したが、オーソドックスなミステリで読みやすかった。妻を喪い人生も見失った男の、癒しと再生の物語とも読める。アイリスと恋に落ちる辺りは展開早すぎというか、ダルースはともかくアイリスが正気に戻ったら悲しいことになるのではと危惧するがそこはさすがにロマンス成分でまとまっている感じ。誰に対しても感情移入はしづらいが、霊感青年フェンウィックが印象深い。全然本筋と関係ないけど。初出時タイトルは『癲狂院殺人事件』だったそうだが聞くからにヤバイ。
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妻をなくしたショックでアルコール依存性になり精神病院に入院するピーター・ダルース。夜中に自分の声で殺人を警告する声を聞く。院長のレンツ博士の依頼で調査を開始した矢先におきた看護師フォガティの殺害事件。拘束衣を着た遺体。入院患者で投資家のラリビーを怨む入院患者のアイリス・パティスン。ラリビーが恋する看護師のイザベル・ブラッシュ。遺産をブラッシュに残そうとするラリビー。ラリビーの娘と娘婿の存在。殺害されたラリビー。現場にいたメスを持ったアイリス。入院患者仲間のゲディスと共に捜査するダルース。
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本格ミステリベスト10に軒並み入っているダルースシリーズ第1作。1930年代に書かれたことを考えるとすごいけれど、トリックは今一つ。ただ次作からは夫妻で登場とのことでちょっと期待。
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舞台が精神病院で被害者は職員と患者で、探偵役も患者である。このため誰が本当のことを言っていて誰が嘘をついているかわからない。このような状況を利用しているのか、それとも突発的なものなのか、色々な想定が浮かんでくる。解決としてはよくある本格物で、それなりの意外性があり楽しめるが、解決後のひとひねりにこの作品の特徴が現れている。依頼人である所長は探偵役である主人公を犯人ではないかと疑って、あえて捜査を依頼する。主人公はアルコール依存症のため、もしかしたら自分が犯人なのではないかと怖れる。自分自身さえ信じられない探偵が見出すもの、そして、それが生きる勇気につながっていく。
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精神に何らかの疾患を抱えた人達が集まる診療所で起きた殺人。
しかし、これから想像される躁鬱とした雰囲気はなく、むしろコメディのようでした。登場人物皆キャラがしっかりしているので読みやすく、展開も早いので、翻訳ものに苦手意識を持っている人でも安心して読めるでしょう。
真相自体も意外性があって良いのですが、犯人を炙り出すために仕掛けられた罠がとても興味深かったです。
それぞれの患者の症状を考慮し、それによって起こされる事象を想定する。これはどこか異形の理論にも通じるものであるような気がします。
次の『俳優パズル』も楽しみです。