紙の本
サケの遡上
2015/03/26 15:21
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投稿者:september - この投稿者のレビュー一覧を見る
イメージはサケの遡上。リーダー直轄のもとで独立した小規模なチームが白紙の状態で新興国の顧客が本当に望むものを一から創造する。本書の肝はここから。新興国で起こしたイノベーションが先進国に低価格と利便性を引っさげ乗り込んでくる。まっさらだからこそやれることがある。ローカル企業が黒船のごとく現れる現実がもうはじまっている。
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・ネクスト・マーケット[増補改訂版]――「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略 http://www.amazon.co.jp/dp/4862760783
・BOPビジネス 市場共創の戦略 http://www.amazon.co.jp/dp/4862761119
・未来をつくる資本主義[増補改訂版]――世界の難問をビジネスは解決できるか http://www.amazon.co.jp/dp/4862761275
上記のBOPビジネス本の後に読んだ、本書『リバース・イノベーション』。
BOPとは(Bottom of the Pyramid/Base of the Pyramid)の略で、先進国をピラミッドの頂点としたピラミッドの底辺となる、今後、全世界で40億人近い人口になると言われる新興国層のこと。
そして、グローカリゼーションとは、多国籍企業が先進国で商品開発した商品やサービスを、新興国層向けに機能を少なくしたり、BOP層を一定のニーズのみで成立してるセグメントとして捉え、規模の経済を活かし、所得の低いBOP層向けに廉価な製品などを提供するスタイル。しかし本書では、このスタイルのビジネスは、うまくいかない場合が多いと。
そして、その解決策がリバース・イノベーションとしている。
2部構成の本書は、第1部では、リバース・イノベーションの概論と重要な手法などを解説している。
リバース・イノベーションでは、今までは、グローカリゼーションなども含めて、ピラミッドの頂点である先進国でのイノベーションの成果としての商品やサービスを、底辺であるBOP諸国に向けて提供していた従来の手法を改め、BOP諸国で発生したイノベーションの成果としての製品やサービスを、幾つかのステップを経て先進国に逆流させる。
具体的には、BOP諸国のなかで1つもしくは少数の国をサンプル市場として選び、現地のパートナーと白紙の状態から顧客のヒアリングを始め、適した商品やサービスを、ヒアリングなどで接点を持った顧客予備軍もマーケティングに活用しつつ、多国籍企業として持っている知的資産などのリソースを総動員して、コストなどの制約条件を徹底的に管理しクリアし、現地に受け入れられる商品やサービスを提供する。
現地のサンプル市場では、LGT(ローカル・グロース・チーム)という、少数精鋭で多様なチームをまずは組織し、ヒアリングし、プロトタイピングなどを重ねていく手法をとる。
第2部では、まだまだ浸透していない、リバース・イノベーションという概念を理解出来るように豊富な事例で解説している。
読み終わった際に感じたことは、リバース・イノベーションに必要な手法や概念などがある程度明確になったこと。
・LGTが現地のニーズを把握するのは、エスノグラフィーなどのデザイン思考的なアプローチ。
・ニーズは確認していく際に必要となるプロトタイピングなどのアプローチは、顧客開発モデル。
・ビジネス・アイデアがビジネスとして成立するかは確認するための価値創造アプローチは、ビジネスモデル・ジェネレーション的な発想。
リバース・イノベーションをテーマに、関連する項目がかなり整理した本でした。今後、5年、10年価値が薄れない本ではないかと思いました。
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途上国からイノベーションを起こすことをリバース・イノベーションと名づけ、論じている。確かにこういう発想がないと、世界で勝負はできないかもしれない。
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標題の『リバース・イノベーション』とは、「途上国で最初に生まれたイノベーションを先進国に逆流させる」というものである。
これまでのイノベーションの多くは、まず先進国で始まり、その後で川下の途上国へと流れていくものであった。しかし、まるで重力の法則に逆らうかのように、真逆の動きをとるイノベーション事例が、しばしば散見されているのだ。本書はそんなリバース・イノベーションが引き起こすインパクトや、そのメカニズムを解説した一冊である。
著者はダートマス大学の教授を務め、GE社で新興国市場のチーフ・コンサルタントも務めた人物。リバース・イノベーションの第一歩は、発明からではなく、忘れることから始まるのだと言う。学んだこと、見てきたことを全て捨て去り、先進国でうまくいった支配的論理を手放さなくてはならないのだ。
この背景には、先進国と途上国とのニーズに数々のギャップが存在するということがある。代表的なのは、性能、インフラ、持続可能性、規制、好みに関する5つによるものだ。途上国の消費者は、先進国がいまだ解決したことのない課題を抱えているほか、かつて先進国が同様の問題に対処した際には存在しなかった最新技術を用いて、自分たちの課題に取り組めることを忘れてはならないのである。
一方で、それだけのギャップがあるのなら、途上国で生まれたイノベーションを先進国に逆流させるところにもハードルが隠されていそうなものだ。だが、逆方向には別の重力が存在していたのである。
それらを上手く使い、川上へと遡っていく手法には、2つのパターンがある。1つは、先進国にも「取り残された市場」という途上国によく似たニーズが存在するということ、もう1つは途上国の速い成長スピードの中で技術面における改善がなされ、先進国の消費者が興味を持つレベルまで到達するケースがあるということだ。
このように、本書は先進国と途上国との間における複雑な力学に着目し、単純に「上下」の一言では片付けられない格差を実に的確に捉えている。
だが、ここまで読むだだけでも、数々の疑問が湧いてくることだろう。
・一から商品づくりを始めたのでは、自社の強みを活かせないのではないか。
・これまでのグローカリゼーションは通用しないのか。
・途上国にそんなに沢山の人材を割くことは難しいのではないか。
・既存商品とのカニバリゼーションをどのように考えるのか。
著者はこれらの疑問を先回りするかのように、多数の事例を通して対処法を紹介していく。
事例として取り上げられているのは、ロジクールのワイヤレス・マウス、P&Gの女性用ケア用品、ディアのトラクター、ハーマンのインフォテイメント・システム、GEヘルスケアの携帯型心電計、ペプシコのスナック菓子など。特に日本企業が苦戦しているとされる、インド市場でのケースが大変多い。
イノベーションを起こすための条件として、「過去の成功体験を捨てること」や「ゼロベース思考の必要性」などということは、よく挙げられている。それをグローバル経済の地図的な側面に着目し、「逆タイムマシン」とも言える��うな手法で仕組み化した点に、とても斬新な印象を受けた。
本書は、いわゆるグローバル企業の人を対象に、新興国の巨人たちとどのように対峙していくかという視点で書かれている。だが、巻末にも書かれているように、よくよく考えてみれば、リバース・イノベーションとは戦後間もないころ「安かろう、悪かろう」という評価しか受けなかった日本製品や日本企業が、試行錯誤を重ねてのし上がってきたプロセスにも似ているのだ。
そういった意味で多くの日本企業の人にとって、得るところの多い内容ではないかと思う。2010年代を象徴するような一冊になる予感がひしひし。
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とても面白かったです。
後半に具体例がたくさん書いてあるんですが、おもしろいです。
先進国で開発したものの廉価版を途上国で売るのではなく、途上国でそこのニーズにあわせてものを開発するという話。
そこで生まれたイノベーションが先進国で新しい市場を作ったりするという話。
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ザ・ゴール、ネクストマーケット並に久しぶりに衝撃を受けた本。
先進国で成功した製品のローカライズを行うグローカリゼーションではなく、新興国に合わせたイノベーションが必要というのはネクストマーケットでも提示された内容。(それがBOPビジネス、新興国に目が向くきっかけだったとも思う)
本著はさらにそれを一歩進めて、新興国で起こしたイノベーションが先進国にも還流する(だから”リバース”)、というのがテーマ。新興国=先進国で成功した製品の展開先、ではなく新興国=新しいイノベーションの発生する場所、というとらえ方への転換を提示している。
とはいっても新興国でのイノベーションによって発生した商品は必ずしも先進国で発売済の商品とカニバリゼーションを起こすのではなく、先進国でも取り残されていた市場にアプローチする手段となる。つまり補完しあうことができる、さもなくば競合(特に新興国で成功している地元企業)にその市場をもっていかれるだけだと。
第一部ではリバースイノベーションの戦略レベル、グローバル組織レベル、プロジェクトレベルでリバースイノベーションを解説。
第二部では8つのケースのリバースイノベーションを紹介している。ケースはリバースイノベーションの必要性に気付いたきっかけ(=自社が新興国で直面した危機)から始まり、どのようにイノベーションを進めたか、を1ケース20ページ程度で紹介している。内容もさることながらケースの分量がちょうどよくスイスイ読める。
これは企業のグローバル展開のパラダイムを変えたという意味でむこう10年必読の本になると思う。
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リバースイノベーションとは、途上国で最初に採用され、その後先進国でも同じような課題を抱えるニッチ市場にも適用できうるイノベーションのことを指す。
従来までの先進国側の主な考えは、先進国で生まれた商品・サービスを途上国向けにカスタマイズして売る(本書ではこれをグローカライゼーションと呼ぶ)というものであったが、今後この考え方をするような幹部が経営層にいる先進国の多国籍企業などは、途上国という成長著しいマーケットを失うだけでなく、先進国でのポジションも失うことになる。
なぜなら、途上国で生まれたイノベーションをさらに先進諸国向けに価値あるものにしてこの市場を目指そうとする途上国の企業がいるからである。
「途上国も先進国のように経済発展を経験するから、そのうち自社の商品を買える給与水準になるまで待つ」、「先進国でしか勝ちあるものは生まれない」などという考えがそのような行動を取らせている原因のひとつである。
だからといってこれまでのグローカライゼーションにリバースイノベーションが取って代わるという単純な考えでは決してうまくいかない。両者を両立させながら、徐々に後者に比重を置くのが理想だ。
本書は2部構成であり、1部ではリバースイノベーションの理論編、第2部は事例編となっている。付録としてリバースイノベーションを遂行していくためのワークシートも掲載されている。理論と事例がバランスよく内在しており、大変示唆に富んでいる。
数々の事例を見て、リバースイノベーションは単に自社の利益になることだけでなく、それ自体が社会を変えうるほどのインパクトを持つのだと感じた。
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日本の携帯が、何でガラケーになったのかを考えてしまった。日本の消費者しか見てなかったら、世界には通用しないよね。
1万円を使える人が一人いる世界と、100円しか使えない人100人がいる世界で求められるものは違う。
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新興国でのイノベーションと途上国への逆流に関して,理論とポイント,多くの事例が記載された書籍。
新興国のニーズを満たすためにはグローカリゼーションも確かに重要だが,その製品・ソリューションでは満たせないセグメントに対して,0ベースのイノベーションの必要性を説いている。
またそういった場合はたいてい低価格が大きなウェイトを占めるため,低価格で高品質な製品が開発されるとそれは富裕国での新たな層を獲得することにもつながり,カニバリゼーションにはならないとのこと。
リバースイノベーションを成功させるためのポイントは・・・
・LGTに十分な権限を与えて,全社的に重要なポジションを与えること
・0からニーズを把握を行うこと
・学習に重きを置いた評価指標を与えること
などが挙げられている。
それを踏まえてグローバルなリソースを十分に引き出すことで,効率よく進められる。
問題なのは社内の政治的な部分をどうするか?トップがつよい推進力で進めていく必要がある。
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制約が多い環境条件の中からこそ、画期的なアイデアが生まれるという逆転の発想。
先進国が新興国へ輸出する時代から、新興国から世界へ輸出する時代が来る-世界のGDPの成長率のほとんどが新興国という時代の戦略―リバース・リノベーション。
製造業に限らず、医療制度・インフラにおいても起こりうるというよりは既に起こっているということが何よりも衝撃的。。この未来からいかに逃げずに立ち向かうか。
事例も豊富で投資戦略としても、「今これから」を考えるのにリアルな一冊。
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国内市場は飽和、海外だ、グローバルだ、と焦るが、
肝心の売り物をどうするのか?
新興国は所得が低いから日本の昔の製品を持っていけば売れる、
そのうち所得が上がるから日本のものを安くすれば売れる、
おそらく多くの人はそんな考えではないだろうか?
新興国ではニーズが全然違う、
先進国の歴史を遅れて繰り返すわけではない、
新興国で売れるものは新興国で生まれる。
では先進国のグローバル企業が、
どうやって新興国でイノベーションを起こすのか?
それには、支配的論理を変える、組織を見直す、評価を見直す、
などのトップダウンの改革とともに、
新興国の人々に役立ちたい、という情熱が必要である。
本書は、グローバル企業における新興国でのイノベーション事例を
詳細に分析し、理論構築した上で、
経営トップ、現地マネジャーに今すぐ行動を促す内容である。
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古そうで新しい概念。クリステンセンの破壊的イノベーションを読んだ時と同じ感じがする。通信業界でも応用が可能な概念なため、グローバルな視点で適用できないか検討してみたい。
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日本企業が新興国進出を狙う事が、今や当たり前になった時期だからこそ、より深く理解すべきイノベーション理論。読んでいるとああ、ああと色々な気づきを貰える。グローバル化への解釈は、そもそも自分の思考そのものも、一国の文化をベースに出来上がっていることから来る複雑性がある。常に学習が必要だと再認識。
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新興国でのイノベーション。新興国ならではの文化、慣習との融合によるあらたなイノベーション。それが、リバースイノベーション。
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興味深い事例紹介も多く、示唆に富んだ本だった。
新興国の現地発での商品やサービスが、先進国に逆輸入されるというのは、これからますます増えるだろう。そもそも、新興国でのビジネスを成功させなければ、企業としての生き残りも難しくなってきた。ちょっと出張しただけでは、新興国市場のニーズなど分からない。企業として、本気で取り組まなければ、リバースイノベーションは実現が難しいだろう。インドはお腹を壊しそうだから、出張は遠慮したい、なんて言っていられない。
一点だけお願い。
P&Gの商品「オールウェイズ」は、日本で言う「ウィスパー」だと脚注に書いて欲しい。なんとなく分かる人も多いかと思うが、説明があれば、日本の読者にも具体的なイメージが掴めて分かりやすいと思う。