投稿元:
レビューを見る
若年層向けに書かれた夏目漱石の読書指南書……と思ってはいけない。砕けた文章で書かれてはいるが、これ、かなり深いことを書いている。
例えば『小説が面白く読めるかどうかというのは、君自身にかかっている』。文章を読んで、どれだけのものを受け取って、イマジネーションを膨らませることが出来るのか? 少なくとも筋立てだけを追っていてはこういう読み方は出来ない。伊藤計劃も映画絡みで似たようなことをblogに書いていたが、『自分が読めていないだけかもしれない』ということは念頭に置いた方がいい。
『細部に拘る』というのはナボコフも書いていたが、基本的に文章を読むというのは細かいことをニヤニヤ笑いながら読むことだ。要するに読書というのは快楽であって、教養をつけようとか人生の役に立てようとか考えて読んでもつまらないでしょう……というのは吉田健一の受け売りだが、ホントそうw 澁澤龍彦だったか生田耕作だったか、『お勉強で本を読む人はいないでしょう』という素晴らしいお言葉もある。
個人的には漱石だと圧倒的に『夢十夜』が好きだ。長編も面白いけどねぇ(しかし、『こころ』が実はパッとしない……なんて本当のことは(ry)。
投稿元:
レビューを見る
漱石って文豪と言われているけど面白いの? どう読めばいいの? そもそも小説の面白さって何? 奥泉光が全く新しい読み方、伝授します。香日ゆらによる漱石案内漫画付き。
投稿元:
レビューを見る
中学生向けに書かれてはいるけれど、こういう読み方、大学の講義で学んだような内容に通ずるものがあり面白い。
投稿元:
レビューを見る
14歳の世渡り術シリーズなので、基本的には中学生に漱石の読み方を伝授しているわけであるが、これが凡人にはありがたい。
小説は物語より文章を読め、途中から読んでも途中でやめても構わない、小説の面白さはその時の自分が作り出すもの等々、平易な文章の中にグサリとくる言葉がちりばめられている。
漱石だけでなく、著者である奥泉光も読んでみたくなる気にさせるうまい一冊。
投稿元:
レビューを見る
「小説の本質は物語にはない」小説の映画化がことごとく失敗する原因はここにあるのかも。漱石は数冊しか読んだ事はないが、早めに読んでおいた方がいいんだろうな。
投稿元:
レビューを見る
10代に向けた夏目漱石のガイド本。
良書です(^_^)v
大人の私はワクワクしました。
奥泉光氏自身、漱石の大ファンなのがよくわかる。
文豪夏目漱石の小説を、肩肘張らずに楽しめるツボが満載。
小説は、物語と文章から成り立つ。無理に全体を精読しなくても、気にいった部分の文章だけでも十分楽しめる等、小説の楽しみ方に納得。
「それから」の解説が見事、一番いいです。
投稿元:
レビューを見る
すっごいおもしろかったー!やっぱり文豪の書いた作品ってとっつきにくい印象があるけど、この本のおかげで漱石作品が身近なものに感じた!改めて坊ちゃんとか読みたいなーと思います。プロの読書家、っていう言葉がいいなあと思いました。漱石作品だけでなく、読書の仕方についても書かれてました。全て読み切らなくても少しでも好きな言葉があったりとか、例えば旧字体がかっこいい!とか、それだけでも読んだことになるし、無理して全ページを読まなくてもいい。っていう考えが良いなあと。この言葉で名作へのハードルが低くなったのでもっとたくさん読みたい!
投稿元:
レビューを見る
夏目漱石を読むポイントというか、文学作品として堅苦しく考えなくていいんだよーということを教えてくれている本。
割と漱石以外の小説の読み方にも応用できそうなことを言っていて、興味深く読めた。
今からでも実践できるけど、高校時代にこの本があったら、かなり読書経験が豊かになったと思う。
大学時代に夏目漱石の講義で言われたことがこの本を読んで今更ながら腑に落ちた部分があって、個人的に反省。勉強が足りてなかった。
奥泉さんの解釈の仕方がいちいち面白くて、(坊ちゃんは中二病のコミュ症とか。)
読んだことのあるものはもう一度読み返したくなったし、読んでないものも気になった。
夏目漱石に興味が湧く一冊でした。
投稿元:
レビューを見る
夏目漱石入門書.作品解説というより,アプローチの仕方がすべての小説を読むことにつながる.作品情報としては非常に物足りない.
投稿元:
レビューを見る
夢十夜は大好きで何度も読みましたが、正直漱石作品は途中で挫折してるものも多いです。コミックで読んだだけだったりあらすじ程度しか知らないものをそろそろしっかりと読みたいなと思っていたところへこの本を知りました。14歳の世渡り術ですからもちろん中学生あたりに向けて書かれていますが、奥泉さんの切り口は音楽に例えてみたりと納得させられてしまう楽しいものでした。「全部読まなくてもいい」「物語は無視してもいい」「未完でもかまわない」大人の私も未読のものはもちろん、一度読んだものもあらためて読み直してみたくなりました。
投稿元:
レビューを見る
夏目漱石の著書を読みたくなるだけじゃなく、読書自体が楽しくなる本。
「小説を読むことは物語を読むことはイコールではない」っていう所が目から鱗だった。
私は雰囲気で読むから、読んだうちに入らへんかなぁと思ってたけど、それだって立派に読めてるんやと思って安心した。
一番好きな所は
「読書は人生の役に立つのか、という問いをたてる人がいるけれど、少なくともいえることは、人生は読書の役に立つということだ」。
役に立つから本を読むんじゃない。本を読むために人生がある!
そう思うと生きるのも本を読むのも楽しくなる。
投稿元:
レビューを見る
表紙をよく見ると、これは14歳の世渡り術シリーズの一冊で、《知ることは生き延びること。未来が見えない今だから「考える力」を鍛えたい、行く手をてらす書き下ろしシリーズ》だと書いてある。その上 中学生以上大人まで。よし、この本を読んでみよう。
14歳で世渡りか、シリーズなら他にもあるのかな、「行く手を照らす」か、ぴったり来るような気持ちは考えてみれば、この(どの)年になってしまうと悲喜こもごもかなぁ。
奥泉さんの書き下ろしというので喜んで開いてみた。漱石好き、漱石狂の様子も見えるが、やや距離がある視野から書いている。照らさないといけないからか。
漱石を少しは読んだつもり。残りもそのうちと思って積んであるが、漱石がそんなに面白いなら読み方を習おう。
すぐ読むのではなくて申し訳ないけれど。
漱石の面倒な読み方ではなく、小説の世界はどう楽しむのか。
それは文章を楽しむこと、飛ばし読みでもいい、小説を面白くするのは自分自身だからという。
繰り返し読むことなども勧めた肩のこらない案内書で、なんとなく知っていた漱石の世界が親しく見え始める。奥泉さんの読み方を習って、漱石本と併読していきたくなった。
「はじめに」 に続く「目次」
第1章 「我輩は猫である」 小説は全部読まなくてもいいのである
漱石作品の中でもとくに細部が面白い。
第2章 「草枕」 小説はアートだと思うといいよ。
漱石がこんな風に語っている。
私の「草枕」は、この世間普通に言う小説とは全く反対の意味で書いたのである。ただ一種の感じ、美しい感じが読者の頭に残りさえすればよい。それ以外に何も特別な目的があるのではない。さればこそ、プロットもなければ、事件の発展もない。
第3章 「夢十夜」 「夢十一夜」を書いてみよう
もし夢の話が面白いとすれば、それはセンスのよさのなせる業。
百閒の「冥途」はまさに夢の話。「ただなんとなく」とか「ぼんやりして解らない」とか「はっきりしない」とかいうフレーズがたくさん出てきて、夢の中特有の辻褄の合わない感じを表現しているのがおもしろい。 百閒と漱石とはまた違った形で夢の世界を描いている。
第4章 「坊ちゃん」 先入観を捨てて読んでみたら
威勢がいいのは、坊ちゃんではなくて文体にある。坊ちゃんはちょっとコミュ障で神経質。そして孤独。
「孤独」というのは漱石の小説全体のテーマだ。
第5章 「三四郎」 脇役に注意するといいかも
美禰子は都会派で三四郎は田舎出。そのギャップを読む。「迷える羊(ストレイシープ)という言葉は、解ったようでもある。また解らないようでもある。解る解らないはこの言葉に意味よりも、むしろこの言葉を使った女の意味である」
第6章 ”短編集” 作者の実験精神を探ってみよう
第7章 「こころ」 傑作だなんて思わなくてもいい
自分自身を苦しめ自縄自縛に陥っていく先生の姿がとても残酷にえがかれている。
第8章 「思い出す事など」 「物語」を脇に置こう
第9章 「それから」 イメージと戯れよう
第10章 「明暗」小説は未完でもいいのだ
明暗には未完であることを越えた、小説としての高い完成度がある。
コラム1 漱石とお菓子 ―― 漱石はだいの甘党だった!?
コラム2 漱石と動物 ―― 漱石は犬派だった!?
とこういう具合に奥泉流漱石の読み方を指南している。
悩む漱石をこうして軽く読んでいくのも一興かな。
漱石好きなのか奥泉好きなのか、本を手にしてこれでいいのだと感じるところが、読書好きの端くれというのを実感した。
投稿元:
レビューを見る
漱石好きの著者による漱石解説本。
難しい本を、一字一句理解しなくていいんだよ!というアプローチが新鮮だった。
一枚の絵画を遠くから眺めるように。漢語の持つ雰囲気を楽しむように。
中学生くらいの子に向けて、ちょっと「厨二心」を刺激するような感じでも書かれているような感じがするけど、正直大人も興味をそそられる。この雰囲気は14歳向けだからなのか、奥泉氏の持ち味なのか?
漱石も読み返したいけど、奥泉氏の著書も読んでみたくなった。
投稿元:
レビューを見る
これは「14歳の世渡り術」というシリーズみたい。
なぜ私はこれを買ったのか……。
子供に読ませようと思ったわけでもないんだけど。
14歳ぐらいの子に「夏目漱石は難しく考えないで、こんな風に読んでみればいいんだよ!」と教えてくれる本なので、読みたいけどちょっと取っつきにくいなと思ってる中高生にはいいかも。
私は実年齢は40オーバーですが精神年齢はひねくれた小5なので、文章がどうも「年上のやつが自分たち(この場合は精神年齢の方)の年齢に無理やり目線合わせてしゃべってやがる」と穿った見方をしてしまい、ダメでした。
投稿元:
レビューを見る
中高生向きシリーズの1冊で、夏目漱石好き(なんと、『『吾輩は猫である』殺人事件』という小説も執筆)の小説家である著者が、『吾輩は猫である』、『草枕』、『夢十夜』、『坊ちゃん』、『三四郎』といった夏目漱石の代表的な小説の読み方を指南。中高生向きだけあって、くだけた文体で、すいすい読める。
夏目漱石の作品は、『三四郎』、『こころ』、『夢十夜』しか読んだことがなかったが、本書を読み、他の作品も読みたくなった。
夏目漱石の小説の紹介だけにとどまらず、本書は、小説はどう読むべきかという本質論にも迫っている。ストーリー至上主義に陥るのではなく、文章自体をアートとして楽しむなど、本書は、小説には、読者次第でいろいろな楽しみ方があるということを教えてくれる。