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夜這い村 長編小説 (竹書房文庫)
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村の男達から次々と夜這いされる被虐的な官能美と寝取られの醍醐味
2016/06/19 21:17
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
一目瞭然のタイトルが全てを表しているが、ヒロインに片想いしている主人公からすれば完全かつ完璧な寝取られに終始する展開である。旅行会社勤務2年目の主人公(24歳)は憧れの女上司(30歳)とのロケハン出張に浮かれ気味ながらも訪れた村で立ち往生。しばらくの滞在を余儀なくされる。初期設定はこれで充分である。
人贄村……ホラーやサスペンスでも使われそうなネーミングだが、官能小説ならば言わずもがなであり、村全体が「そうである」ことを示したのであろう。村人の計らいで村一番の地主宅の離れにしばし身を寄せることとなった2人。一見したところ村人達は皆優しい。しかし、夜になると別の顔を見せる。東京からやって来た極上の美女に男達が群がるのは人贄村の常識なのである。
1日目:村役場の職員
2日目:駐在所の警官
3日目:村一番の地主
夜な夜なやって来る村の男達を歯噛みしながら覗き見るしかない主人公がヘタレなのはお約束だが、上司の抵抗を端折って、感じ始めたところから描いているのは官能描写の頁を割く意味でも秀逸なところ。日を追う毎に抵抗も薄れ、徐々に溺れていく上司の痴態も覗き見ている主人公を通じて淫猥さが増すところである。彼氏と別れて3年という上司の空閨も後押ししているのであろう。嫌がりながらも昂りには抗えない上司の悩ましさも滲み出ている。
4日目:村役場の職員
初日と同じ「お相手」ながら、この頃には上司が自発的な行動を見せるほどに堕ちている淫靡さのエスカレートが見られる。また、3日目辺りから村の常識は何も男だけではないことも描かれ、地主の妻やその従姉妹といったサブヒロインが登場しては主人公に迫っている。熟女や若い娘も程良く加味されたと言えるが、この村を訝しんだ主人公の疑念が明かされるのと合わせてクライマックスへの準備が整っていく流れとも言えよう。
5日目:夜這い祭り
村祭りは夜這い祭りという分かり易さは、他にすることもない辺鄙な村の現実でもあり、一般的な常識が通用しないムラ社会の象徴的神事とも言える。担ぎ出された上司が夜通しに貫かれ、あるいは主人公が搾り取られた部分はボカすことで凌辱的な色合いを抑えつつ淫靡さだけは上手く抽出されていると思う。ここで主人公はようやく上司と結ばれるのだが、そこには村人から宛がわれたような情けなさもあったりする。
酒池肉林の果てに去来した感慨が後の上司に大胆な行動を取らせるエピローグへと繋がるのだが、主人公には「もっと頑張りなさい」と叱咤激励したくなる結末となるのは、このイカれた村での体験を通じて芽生えた男女の恋ではなく、その興奮体験を忘れられない女のどうしようもない業を描こうとしたからであろう。この作風で竹書房文庫から出版したことも含め、いわゆる一竿主義な読み手や他の出版社への挑戦的な意欲を感じさせる作品にも写った。