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紙の本
伝え続けなければならないもの
2001/09/15 09:35
14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kama - この投稿者のレビュー一覧を見る
毎年夏になると、必ず私はこの本を手にとる。
戦争当時の暮しの様子、小学生だった人たちの疎開体験、東京大空襲に遭遇した人の話など、さまざまな戦争体験であふれている本だ。この本を、私がはじめて手にとったのは、小学校の高学年ぐらいの時。母から渡された。その当時は、暮しの手帖社の特集雑誌だったが、非常に反響が大きかったらしく、昭和43年8月に初版が出てから版を重ね、今私の手元にあるそれは、立派な装丁の保存版になっている。
この本を私に渡した母の年を、今の私はとうに過ぎてしまったが、この年になってようやく、その時の母の気持ちがすこしわかるようになってきた。わたしの母は、終戦当時ちょうど10歳。食べ物に飢え、両親から引き離されて疎開し、空襲で真っ赤に焼けた故郷の夜空を眺めながらワンワン泣いたことなど、何度も何度も聞かされてきた。「その話もう何度も聞いた。」と言って、反抗期真っ盛りの頃はまともに聞こうとしなかったこともある。
その私が、今母と同じ事を自分の子供たちにやろうとしている。もちろん、私は戦争を知らない世代なので、おじいちゃんはこうだった、おばあちゃんはこうだった等々、聞いた話を語り継いでいるにすぎないのだが、何度でも話したいのだ。まだ、我が家の子供たちは、いちおう聞いてくれるけれども、そのうちかつての私と同じような反応を示しだすに違いない。それでも、しつこく私は話したい。
まだ外の世界では、内戦や紛争でひどい状態の地域があちこちにあるが、それを自分とは関係のないこととして、我が子等に思って欲しくないのだ。そういった状況が世界からなくなるようにするには、同じことを二度と引き起こさないようにするにはどうしたらいいのか。何ができるのか。自分のことはかりにかまけて若い時代を送ってしまった我が身に対する反省の念をこめて、いやがられてもソッポをむかれても、私は子供たちに自分の両親の経験を語り継ぎたいと思う。
為政者の側からの戦争の記録ではない。一般庶民がこのようにあの時代を生きてきたかが、とてもよくわかる本である。子どもは子どもなりに読んで理解するコトができる本である。親という立場にある全ての人たちに、私はこの本を薦めたい。自分自身のためにも、あとに続く全ての人たち、まだ生まれていない子供たちのためにも、決して忘れてはならない事実の記録です。