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この感情の高ぶりを書き留めておきたいのに、どう書けば的確な表現になるのか、分からない。
最後の一行がなんとも言えない。
主人公、知花煉。
沖縄で生まれ育った煉は、戦争で全てを失う。
かなり破天荒なやり方でのしあがっても、運命に翻弄され、どん底まで落とされ、それでもまた這い上がり…
私はこの小説を読むまでボリビアに日系人がいること、政府が積極的に移民を進めていた事を知らなかった。
沖縄のニュースは気に留めていても、その背景を知ろうとはしなかった。
それでも毎日生きている。
のうのうと生きている。
煉の周りにいる魅力的な登場人物達(特にカルメン!)やハチャメチャな展開のおかけでぐいぐい読み進められるけど、描かれているものはとても重くて、まだ消化しきれない。
煉のようにずっと抱え続けるしかないのだろう。
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テンペスト、シャングリ・ラ、黙示録など、池上永一の描く主人公は簡単にへこたれない。
つまずいても、失敗しても、何度でも立ち上がって成功を求める。
ただの野良犬ではない、狼のような射貫く視線で前を見つめて突き進む。
沖縄戦の最中、知花煉は艦砲射撃の一斉掃射の中を逃げ続けていた。
死が支配する世界で何度も死にかけながらも、彼女だけは死ななかった。
彼女は、魂(マブイ)を落としてしまっていた。
戦後、不屈の闘志と商才からコザ市で成り上がった彼女だったが、米軍CICから追われる身となる。
誰かからの呼び声に応じて沖縄を脱出し、琉球政府移民の一人として二か月後にボリビアの地にいた。
この地で彼女が出会ったのは、艦砲射撃の衝撃で地球の裏のボリビアまで吹き飛ばされた自身のマブイだった。
実態を持たないもう一人の私は、幾度となく私の肉体を奪おうと画策する。
ボリビアでの出会い、
幾度とない身の破滅と復活、
容赦なく巻き込まれる革命の嵐、
その末に出会った青年ゲバラとの恋、
魂が分かれた二人の煉の視点から、不屈の彼女の成長が描かれる。そしてラスト。彼女の戦いは未だに終わることが無い。
池上永一の著作は風車祭、レキオスは現代の沖縄を描いているが、最近ではテンペストやトロイメライ、黙示録では琉球時代についての著作のほうが多い。
しかし、今までに明らかに戦中から戦後にかけての沖縄については書かれていなかった。
そして今作、ヒストリアでこの時代の沖縄が描かれている。
魂が落ちて地球の裏側まで飛んでいった。
ありえない話だが、今までの池上永一作品を読んでいると、沖縄ではさもありなんと思ってしまう。
何につけてもご都合主義なシーンも、ウチナーンチュの力づくで突破してしまう。
そんな強引な話の筋にも、沖縄の問題を読者に付きつけている。
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強烈なメッセージ性と莫大な情報量に目眩を覚える。この小説が唱えるメッセージは山ほどある。戦争の悲惨さ、異文化理解、革命の功罪、マブイと呼ばれる魂の片割れが問う人格の真実性、幸せの形、当日の諜報の生々しさなどなど、読者の捉え方によってこの小説の重さや質は大きく異なることだと思った。ただ、僕は池上永一は小説という枠組みの中で一つの世界を作ったのだと思った。池上永一はヒストリアという小説に世界を構成する混沌としたイデオロギーの集まりを生み出した。知花煉に降りかかる現実は当時の闇そのものを形容している。ただ、それが具体的にどういったものなのかについて考え始めるとたちまち糸が絡まるみたいにややこしくなる。現実もこれと同じだ。僕たちは抱えきれない闇の数々を前にして尻込みをしているか、あるいはその存在に気が付かないでいるかのどちらかだ。前者はまだ救いようがあるが後者は無理だ。自分の敵は自分で認識しなければならない。後者の人間にはこの小説がどのように映ったのか。そこがポイントだと思った。
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太平洋戦争でアメリカが沖縄に上陸した所から物語は始まる。
いろんな要素が詰め込まれていた。
SF、沖縄戦、米軍、日系人、移民、革命、社会主義、キューバ危機、沖縄返還…
歴史とは、様々な要素が重なり合って作られているんだと感じた。
沖縄から見た、太平洋戦争、沖縄占領、沖縄返還。本土から見るのとは感じ方が全く違う。
こんなに負担をかけさせていたのかと、驚くとともに、今に続くアメリカ基地問題も心に刺さる。
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圧巻の知花煉一代記.沖縄と沖縄のボリビア移民の歴史を再現しながら史実をぶっ飛ばすような荒唐無稽なレンの生き様,革命や戦争を憎むレンとチェ・ゲバラと出会い恋に落ちるレン.7つのマブイが6つと1つに分かれて二人のレンの肉体の争奪戦とも言えるこの物語,過去や人格が入れ替わり読んでるうちにどちらがどちらのレンかわからなくなってしまった.レンと出来事の一覧表が欲しかった.単純なエンタメ小説ではない,沖縄の悲劇というのは今も続いているのだと訴えていて,アメリカとの係わり方にも考えさせられるものがある.
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沖縄戦より生き延びボリビアに渡り南米をかけめぐる女。最初は沖縄の戦争から始まり重い内容で、正直読み進めることができるか不安だったけれど、女性の強さ、沖縄、南米、ゲバラ、文化、非常に興味深く読めた。凄い、凄い。読んでよかった。ボリビアに渡ってからCIA、ナチ残党、キューバなどこの先どうなるかとページをどんどん進めたが、移民の暮らし、終わらない戦争、心の傷も非常に深い、深い内容。読み応えあり。
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沖縄戦で家族を失った知花蓮.沖縄から逃げ出し南米ボリビアへ.日系のイノウエ兄弟,女子プロレスのスターカルメン.チェ・ゲバラに恋をしたりと巨大プロペラ機を翔ってパワフルに南米中を駆け巡る.疾風怒濤の冒険譚.
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620ページの超大作。大変面白かった。戦時中から終戦、アメリカ統治下の沖縄、生きるために南米へ。移民たちの過酷な日々とたくましさ。革命という名であろうと個々人に殺意が無かろうと、言葉で正当化され、罪のない者たちの生活や生命が平然と奪われていく。
この話はフィクションだと思うが、実在した登場人物たちがその時代に行ったことと重ね合わせて、知花・イノウエ・煉は確かに生きていたのではないかと思わされた。
戦争はまだ続いている…沖縄に平穏が訪れますように。
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沖縄戦を生き抜いた沖縄女性、知花煉の沖縄-ボリビアを巡る一大叙事詩。ボリビア社会で生き抜く原動力が、悲惨な沖縄戦に生き抜いたマブイ落ちにあった!
日本兵を相手にしたたかに生き抜いていくパワーがその後のアメリカ軍やCIC相手とのやりとりでさらに昇華していく。
沖縄戦もボリビア移住、ボリビアでの生活もどれも悲惨、かつ波乱万丈。そこでここまでのし上がっていく、落ちても落ちてものし上がっていく気力と才覚がどこから生まれてくるのか?
池上永一が本書に込めた思いは、これまで日本国内ではそれほど日の当たらなかったボリビア移民について光を当てることであったのかもしれないが、本書はそこを超えて一大エンターテインメントとして花開いた。
一貫して続く知花煉の一人称語り。しかしそれは「語り」というおとなしいイメージとは異なり圧倒的なパワーとスピード、テンポ感で押し寄せてくる。
しかも二人のレンが一人称で語り続けるのだから、レンを通した世界観がそのまま瞼に焼き付くようだ。
それぞれ当時の沖縄情勢、南米情勢、冷戦状況などがうまい具合に散りばめられており、雑多感よりも繋がり感が強い。
特にボリビアにおける国民性というか民族性をうまく言い表したコミュニティの形と「公陸」の概念は、「ボリビア多民族国」そのもので激しくハラオチした。
マブイ込めのために再び降り立った沖縄で、マブイの煉が閉じ込められたままの現実が痛々しいが、この物語の進み続ける未来を示しているようでもある。
しかし、どうしても記載しておきたいのだが、何故本書の表紙絵はチェ・ゲバラなのか?本書の主要な登場人物ではある。しかし、トップ主題というわけでもないような気がする。
チェ・ゲバラ(本書ではエルネストだが)人気にあやかっているのか、読了後の高揚感のなかにあって、あるいはだからこそ、この違和感が抑えられない。
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沖縄戦争でマブイを落とした女性が南米で八面六臂の活躍をする物語。
落としたマブイも活躍するんだけど、人に見えたり、見えなかったりするその辺の設定がよく分からず、物語に没入しきれませんでした。
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2018.3.7-
なかなか時間がかかった。。
途中飛ばし読みになってしまったけれど、まさにジェットコースターストーリーでした。
実在の人物も多々登場して、興味深かった。
なるほど。。そういうことか。
戦争を止めて、煉を助けてあげられる日は来るのだろうか。
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沖縄戦の戦火のなかで死に損ない、魂の一部を落としたまま長い死に際を彷徨う少女・煉。独りぼっちになった煉は、だからこそ逞しい。
戦後の闇市で成り上がり、やがてボリビアへ。移民として広大な原生林を開拓する一方で南米の国々を股に掛けて飛びまわり、米国諜報機関やナチスの残党を相手に大立ち回り。しまいには陰鬱なキューバ危機をも吹き飛ばす、痛快な冒険活劇。
ありあまるバイタリティで、戦中戦後を生き抜いたひとりの女性の物語。
だが読者はきっと最後にこれは現実であったと思い出す。沖縄の戦争はまだ終わらないということを。
煉の人生は過酷だが、同じようにこの世代の女たちの多くは喪失と再建を繰り返す人生だった。焼け出されて、身一つでやり直すときに、まず手仕事(裁縫や洋裁、編物)で当座を凌いだ女。
男女平等、雇用均等が叫ばれるはるか昔に、当たり前のように男たちと同じ労働をこなした女。
私は煉に祖母の面影を見て何度も泣いた。祖母もまさにそんな風に戦後の荒廃を生き抜いた強い女だった。
さらに言えば、戦争末期にはグラマンの機銃掃射に追われ、艦砲射撃を逃れて山へと走った。祖母もまた、戦火のなかで逃げ惑い、魂のかけらを落とした女の一人なのだろう。煉と同じように、ほかの町でみかけたなど、同時多発的な存在の目撃談がある(笑)。
KADOKAWAさんの文芸情報サイト『カドブン(https://kadobun.jp/)』にて、書評を書かせていただきました。
https://kadobun.jp/reviews/205/946ae2b1?per_page=0
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やっと、半分ぐらい読めた
面白いんだけど間に違う本を挟んでたので
序章が重たいので寝る前に読むと悪い夢をみそうだった(^^;
中盤のコロンビア行き 空からの描写が美しい
空賊が笑える カルメンがスゴイ 池上キャラぽくなってきたよ
今回は実在の人物も出てくるのでこの後どうなるか楽しみ
こんな機会がなかったら、南米のこと知らないままだったよ
主人公が二人いて、どっちの記述か分からなくなることも(笑)
戦争を終わらせるウチナーンチュ!!無茶するよな~と思いながら、カッコイイ
政治・戦争・革命なんて自分の読む範囲ではないけど
物語にひかれてしまって読了
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629ページの大部。
物語の場面は沖縄からボリビアへとダイナミックに転換する。
沖縄の地上戦、ボリビアの日本人移民、ナチスの残党、キューバ危機、ゲバラ。
実際の歴史的事件・人物の間を縫って駆け抜けるのは、沖縄生まれの美女・知花煉(ちばな れん)である。
少女だった煉は、沖縄戦の業火を辛くも生き延びた。だがその激しさの中、魂(マブイ)を1つ落としてしまう。沖縄では人は7つのマブイを持つという。何かの拍子にそれを落としてしまった者は、それを探し出して自分の中に収めなおさなければならないとされる。
煉は戦後の混乱を持ち前のバイタリティで乗り切っていくが、どこからともなく聞こえるマブイの声に呼ばれ、遥かボリビアへと長い長い旅に出る。
煉はファッショニスタでもあり事業の才能もある。男どもを蹴散らしながら、したたかに生き延びるその姿はなかなかの圧巻である。
ボリビアで出会う女子プロレスのスター、カルメンも、巨躯でありつつ美女、多くのファンを持ち、人情に篤く、痛快なキャラクターである。
日系人のイノウエ兄弟を従えつつ、煉が農業に汗を流し、また空賊として活躍する姿などは、活劇的にもおもしろい。
だが、明るいだけではないのが本作の一筋縄でいかないところである。
煉はともかくも落としたマブイの問題を解決せねばならないのだ。
人生の途上で、煉は(あるいはそのマブイは)運命的な人物に出会い、歴史に翻弄される。
彼女が出会った革命家は純粋な理想に燃えていた。彼女はその純粋さを愛しながらも、一方で、革命が人々にもたらした大きな影響に、革命家が無関心であることに激しく憤る。その愛憎の激しさに胸を突かれる。
煉は長い旅路の末、沖縄に戻る。
ラストシーンは重い。結局のところ、沖縄戦や基地の問題は精算されてはいないのだ。
この大部をここで〆るのか。これには唸らされた。
力作ではあるが、読み終わってみると、いささかバランスが悪い印象を受ける。
活劇的なおもしろさとテーマの重さはかみ合っていたのか。
沖縄からボリビアへの移民団の話はともかく、ストーリーにゲバラを絡ませてくる意図がもう一つよく呑み込めない。
歴史的大事件の狂言回しとして、架空の人物を配する手法にも、いささか雑な感じが否めない。
さまざまな要素がごった煮的に突っ込まれているが、さて、全体としてこなれているか、というと、どこか荒さが目立つように感じるのだ。
著者の熱意はひしひしと感じる。煉の人物造形も好きな人は好きだろう。
だが、読者を丸め込もうとするかのような、前のめり過ぎる力技の展開には、個人的には少々ついていけない部分もあった。
おもしろくは読んだが、釈然としない点も多い。それらをひっくるめて、著者の「味」なのかもしれない。
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久々に読む著者だが確かに「テンペスト」は薩摩の調所どんの手柄を主人公に置き換えるという歴史の捏造ではあったが、物語としては面白かった。その後「トロイメライ」や「シャングリラ」も読んだが、それほど出来は良くなかった。さて本作であるが本の表紙から見るとチェ・ゲバラの物語かと思えば、構造は「テンペスト」と同じで、ひとりの女性の波乱万丈の半生を描いたものだった。しかしマブイという生き霊のようなものが主人公レンから分離して実際に体まで持ちおまけにゲバラの情婦になるというトンデモ展開でちょっと引いてしまう展開だった。