逃げ出せなかった君へ

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つらくてつらくてつらくてつらくて。苦しくて悲しくて悔しい涙を流しながら読んだ。
おかしい。間違っている。こんな会社狂っている。こんなヤツのためになぜ命を捨てなければならないだ。
大河内が現実から逃げ狂気の世界で社会的に抹殺されたとしても、私は許せない。
これがもし自分の家族に起こったことだったら…と考えると気が狂いそうになる。
どんなことをしてでも大河内を探し出して敵を取ろうとするだろう。許せない。
でも、いくつもの人生が少しずつ重なって、今いる最悪の状態から光の見えるところへと自分の足で歩きだす人たちを見ているうちの気持ちが揺らいでいく。怒りの中で時間を浪費しているだけでいいのか。それが答えなのか。
最終章。私はまた、泣いた。けれど、今度の涙は怒りの涙じゃなかった。少しだけ温かい、明日のための涙だった。

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不動産投資のブラック企業に就職してしまった新卒男子三人組。連日徹夜で会社に泊まり込み、早朝深夜に飛び込み営業。常識ではやれない行為も、上司の度が過ぎるパワハラに洗脳され、ノルマに縛られ、自分は価値がない無能な男だと思い込まされたために、躊躇なくやれるようになってしまった。そんな日常に嫌気がさし、あるとき、深夜営業の居酒屋に3人でビールを飲みに言った。キンキンに冷えたビールを飲んだとき、3人は心から、これは世界一うまいビールだ！と思った。そのひとときが3人にとって最高の思い出となった。いや、なってしまった…。

　自分も以前、西新宿で働いていた時期があり、職場にあっちこっちからしつこい不動産投資の電話がかかってきた。最初は仕事に関係ある会社なのかとおもってしばらく聞いているのだが、不動産投資に関することだったので、「興味がないので結構です」と言うと「結構ですということは会っていただけると言う意味ですね」ということをいう奴がいた。この本に書いてあるエピソードと一緒だった。なにを馬鹿なこと言ってんだか、とあきれたけれど、そいつも洗脳されてたんだ。

　この本はこの3人が軸となって、彼らとちょっとしたつながりをもっただけの、それこそ袖触れ合っただけの縁でつながっただけの人物たちとの、絆の物語だ。
　同僚を死から救えなかった会社員、息子を救えなかった父親、通報を真に受けず駆けつけるのが遅れて男を死なせてしまった警官、女子高生時代に自らを商品としていた過去を持つ非常勤講師、ネット炎上被害により職を追われた元居酒屋チェーンの店長など、それぞれは独立した話だけれど、本人たちも知らないところで物語は繋がっている。

　あのときこうすれば良かったんじゃないか、もう少し早く手を打っていれば命を救えたんじゃないか、という悔いを抱えながらも、彼らは前を向いて生きていこうとする。

　彼らの行方を遮る嫌な奴がたくさん出てくる。悪行の報いとして不幸になった姿をさらす人間も出てくる。だからといって、彼らの胸が晴れるわけではない。過去の記憶は消えない。やり直しもできない。
　
　似たような挫折は誰でも経験しているだろう。自分に置き換えると苦しくなる話もあるかもしれない。あまりに境遇が似ていて、この小説が劇薬になってしまう人も、もしかしたらいるかもしれない。

　物語の８０％くらいは悪意の人間に翻弄される展開で、嫌悪感、無力感にとらわれ、気分が沈む。でも最後には、そんな奴らにも負けそうで負けない、地味に強い人間たちの姿が描かれる。読んでいるうちにパンドラの壺の話を思い出した。
　
　最後の章で、「ナンバーワンでなくていい、もともと特別なオンリーワン」という有名なSMAPの歌詞を通じて、語られる言葉がある。
「俺たちは無敵じゃない、でも無双だ」

　会社のためじゃなく、自分のために生きる。難しい世の中だけど、ブレてはいけないと思った。

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それぞれ主人公が異なる短編だけど、ブラック企業に働く夏野の自殺から始まる。同期の友人や夏野の父親、その父親を助けた警察官や夏野に人生を救ってもらった教師など。

一つ一つはありきたりでよくあるような話かもしれないけど、いろいろ繋がって面白かった。
きれいに繋がりすぎてるくらい。

一つの出来事を複数の視点で描かれる作品は好きだな。（「EVEシリーズ」とか「冷静と情熱のあいだ」を思い出した。）

何年か前にも、その人の価値は死んだ後に悲しんでくれる人の数で決まるみたいな文章を見たけど、人に価値なんてつけなくていいのに。

ここに出てくるブラック企業に比べるとウチはマシだけど、周りのメンバーは洗脳されてるように思えてくる。
自分も逃げ出したいけど、生きていくための武器が必要だ。って考えるだけじゃなくて、行動に移さないとな。

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ブラック企業のニュースはよく聞くけれど、こうして小説で読むととてもリアルに感じられる。
現実はもっと酷いのだろう。

私は一度ある職場から逃げ出した。
社内公募していた他部署に異動しただけだけど、自分としては逃げ出した感覚だ。
しんどくて辛いことも辛抱しなけらばならない、とずっと思っていたけれど、あのとき、逃げることもありなんだ、と実感した。

当時の私より、もっともっと辛い思いをしている人がこの世にたくさんいるのだろう。
この小説は、そういう人が逃げ出す勇気を持つキッカケになるのではないかな。
働く喜びを実感できる人がもっと増えますように。

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6章からなる短編だが、全て話は繋がっていて、長編と変わりなく読める作品。第1章のブラック企業の話は、実際にこんな会社があるのかと驚愕する。第2章以降は、それにまつわる話で、それぞれの登場人物の心のあり方に感銘を受けた。

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ブラック企業で奴隷のように働く3人の新卒社員。
日々の仕事に疲弊し、人間としての普通の生活をも手放す3人は、ある日の夜中に居酒屋チェーンで飲んだビールに、特別な思いをいだいた。

連作短編ですが、最終的にはひとつの話にまとまっている作品。

3人の働いていた会社や、また村沢の派遣された先の会社のようなブラックな会社に務めることになったら悲劇。
逃げなければいけません。
私は古い人間なので、上司からの叱責はある程度は必要と思っていますが、あれはダメ。
壊れていく人達の姿を想像するだけで、苦しい気持ちになりました。

それぞれの章に、色々な思いを持ちました。
負けなかった人達の姿が眩しい。
無敵＝ナンバーワン、無双＝オンリーワン。
誰もがその人1人だけ、唯一無二の存在なのです。
著者のメッセージを強く感じました。

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６篇からなる連作短編集。

「裏切者」「人間のクズ」
毎日罵られ、身体と精神が疲弊していく。
ブラック上司から逃げ出さなければいけない。
悪夢から目覚めた者は救われた。
でも、掴みかけた手を離してしまった後悔もある。
彼を救えなかった。
その葛藤が哀しい。

６つの話が接点を結ぶとき
ホッとため息をつきたくなった。
ゆっくりと、救われたことを実感してほしい。

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とある軍隊的ブラック企業に新卒で就職した三人の男を中心に、仕事にまつわる「逃げたい・逃げられない」話を書いた連作短編小説。
普通に生きることの難しさを伝えようとしているのではないだろうか。

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13年の労働人生の間に出産、子育てがあり、自分の労働感も変わってきた。新卒の頃はやりがいのために働いていたが、毎日終電、土日は休めていたが、労働時間の長さがから自然と土日休みのために働いていた。

出産後は、もちろん以前のように長時間労働ができない。定時の中で成果を上げる。ノルマを達成する。
子供の発熱があれば、同僚に頭を下げて早退する。

仕事にアイデンティティを見出していた自分の、自己肯定感もなくなった。

そんな中、先日転職して半年で会社を辞めた。
自分がパワハラを受けていたわけではないけど、パワハラ体質の部署の空気がどうしても馴染めなかった。

本の中に出てくる、見せしめで吊るし上げられるのと全く同じ行為。罵倒はされなくても、人格否定に近い教育？研修？が行われていた。

私は逃げて正解だったと思う。
といっても心は病んでしまったので病院通いの身だが…

親になった分、大切な子に先立たれたお父さんの悲しみに触れた回は泣いてしまい、しばらく先が読めなくなった。

ラストもそう。
亡くなった友人を偲んでビールを飲み交わすシーン。

スマホでビリージョエルの「ピアノマン」をBGMにまた泣きました。

ここ一年ほど「働く意味とは？」に悩んでいましたが、一つの答えをもらった気持ちです。

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ブラック企業に入社してしまった若者が3人。
これは辛かった。

「逃げる」にも勇気と体力がいる。
時間も健康な心も取り上げられるけれど
どうか、外部と接触を持ってほしい、
そして逃げてほしい。

少しづつ繋がる連作で、
ずっとブラック企業のやり方を読まされるのではなかったので
読みやすかった。

生きてると辛いことも、
消してしまいたいこともたくさん起こるけれど
きっとどこかに「逃げ方」があるはずだ。

1人の若者が亡くなってしまったのが
とても残念だった。

そして、あの上司、狂うなんてずるい。
もっと苦しめ！

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夏野の死をちゃんと覚えていて
精いっぱい　生きようとしてくれる人たちが
見事なハーモニーになっていきます
実際はこんなに奇跡は起きないのかもしれない
死んでも誰も覚えていてくれないかも
でも　でも
何か　誰かを　変えるときはきっとある　と
そんな温かみを感じる小説でした

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ブラック企業で働く同期3人とそれにまつわる様々な人たちを綴った短編連作。
一番に思うことは、
「自分の子供たちがこんな思いをいなければいいな」ということ。
そしてこの罵倒と洗脳に満ちた世界がまだまだ現実にはたくさんあること。
信じたくないし、信じられないだろうけど。
人の心は脆い。そしてそこにつけ込むのがブラック企業。
でもこの作品で伝わったのは、とにかく「人間は生きてこそなんぼ、それを賭けるほどの他の理由なんて無い」ってこと。
この作品でそんなことを感じてください。でもストーリーも面白いのでぜひ！

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連絡の構成をとったブラック企業で働く者にまつわる物語。
労働時間にだけフォーカスしてブラックという議論をする風潮には閉口するところですが、この物語は当然ながらガチなはなし。
これを読んで逃げだせる人がいればうれしいですね。

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いくつかの話が緩やかにクロスオーバーするオムニバス。
ブラック職場で働く同期３人組。居酒屋バイトから社員になった男性。刑事になりたくて警官になった交通指導員。隠したい過去に牙をむかれる女性教師などなど、他にもいくつかの話がある。それぞれ絶望的に苦しい話ではあるものの、かすかな光が指す構成になっていて読後感は爽やか。ラストの話は泣きそうになった。

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自分は幸せだと感じました。
ただ、何かあった時に駆けつけてくれる友人は居ないですね。
作るように行動しよう！