紙の本
魂の自由とは
2021/12/12 17:59
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投稿者:弥生丸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
川で溺れた人間の魂をとらえる水の精ヴォドニーク。貧しさに絶望し川に身を投げようとした娘…という設定は、飢餓にあえぐ庶民の実態を昔話に投影させたように思える。ヴォドニークが娘の魂を閉じ込めることなく生かしたのは、貧困に苦しんだ者への哀れみなのか。
禁をおかした時、娘は生きる意欲を取り戻し、人間の世界へ戻るべく脱出を図る。この緊迫する場面で、一度は死を選んだ娘が表情豊かに生き生きと行動している。自由はないが安楽に暮らせる水の館より、苦難が待ち受けているかもしれない生の世界を目指すのは何か象徴的だ。魂の自由がなければ富める暮らしも意味がないという戒めだろうか。
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投稿者:owls - この投稿者のレビュー一覧を見る
この「世界のむかしばなし絵本シリーズ」、各国の珍しい昔話と、挿絵も毎回楽しみ。今回は表紙からして幻想的で、わくわくしつつよみはじめたら、いきなりダークな展開でびっくり。チェコの昔話ということですが、まったく知らなかったので、最後まで想像がつかず興味深くよみました。やはり、このシリーズおもしろいです。
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ヴォドニークというのは、チェコ周辺で語りつがれてきた「水の魔物」らしいです。
緑色というのが河童を連想させて、国境を越えた奇妙な類似が面白いのですが、その魔物に果敢に挑むことになるのが、一度ヴォドニークに命を助けられて彼(?)の館で働く、貧しいむすめということで。読んだ人それぞれで、色んな感想があるようですね。
私が思ったのは、これって、ヴォドニークが過去に行ったことに加担している事になるのではと、むすめが思ったのではないかということ。そして、とある出来心がきっかけで家族を思い出し、今現在の本当の気持ちに気付いたのでは。あくまで、私見ですが。
ただ、これって結構勇気要りますよね? だって、命を助けられたことは確かだし(それがヴォドニークにとっては単に利用しただけだとしても)、ヴォドニーク怖そうだし。仕事の対価も貰えるのに。
しかし、彼女の場合、自分だけ良ければいいと思っていない、ある勇敢な行動を取ることで、危険を冒してでも成し遂げたい気持ちに、人生における選択の重要さ(学校では道徳的な行いと言いそうだが)というものを、私は感じました。
また、降矢さん(スロヴァキア在住)の、神秘的で幻想的な絵が印象に残り、水の微妙に異なる色が重なる様や、上記の勇敢な行動の絵は、とても美しく感じました。
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子どもの読み聞かせに。
チェコのむかし話だそうで、ヴォドニークの名前のアクセントはどうなのかな?と思いつつ。
仄暗い水の世界が、美しくて静かで、うっすらこわい。それだけに地上へ戻った時の明るさ暖かさ。
民族衣装も細かく描かれていて雰囲気が伝わる。
素敵な絵です。
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子供の頃『長い長いお医者さんの話』を読んで、外国にもカッパがいるのかと思ったのと同時に、「カッパ」って言うのかな、という疑問も浮かんだのだった。
それが、ヴォドニークだったんですね!長年の疑問が氷解。(もちろんググればでてきたのだろうけど、こうやって偶然知る方が楽しい。)
降矢ななさんがスロバキアに住んでいることも画家として選ばれた理由の一つだろうけど、この本を見て『おっきょちゃんとかっぱ』を思い出さない人はいないだろう。
深い水の底。逃げ出すとき、ぽっかりと明るいところがあって、そこに吸い込まれるように入っていくところ。うっとりするような美しさ。
『おっきょちゃんとかっぱ』は長谷川摂子さんの書いた物語だけど、この本を読んで、降矢さんという画家がいたからこそ、あの絵本の世界が成立したのだとあらためて思った。
水の底の異界に行って働くという昔話は「ホレおばさん」はじめいろいろあるけど、「いい娘」はよく働き、可愛がられて褒美をもらい、「悪い娘」は怠けて罰を受ける、というパターンが多い。しかしこれは「悪い娘」の部分がないため、勧善懲悪のイメージが薄く、だからこそ水底の暮らしやヴォドニーク、娘の心情を考えてしまう。
ヴォドニークは、ふだんは人を溺れさせたりしているのに、この娘は家に連れ帰ったということは、やっぱり寂しかったのかな。娘が人間の世界に戻ったあとまた一人暮らしに戻って、娘のことを思い出しているのかもしれないな、なんてことを考える。
降矢さんの絵の力でそう思うのかもしれない。
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チェコの昔話。最近まで埋もれていたお話で、かつての原型を留めていた。
ある川の底にヴォドニークという水辺の主が住んでいた。気まぐれなヴォドニークは、人にいたずらをしかけたり、溺れさせたりしたが、この日はひもじさのあまり川に身を投げようとした貧しい娘を助け水の城で暮らせるようにした。
娘は城中の掃除をし、たくさんご飯も食べさせてもらい、ただ広間の壺の蓋はけして開けてはいけないと約束させられた。
壺の秘密を知った娘は…。
☆流されるままだった娘の変化していく表情がよい
☆ヴォドニークが恐ろしくも切ない。神のようなもので、人の同情など要らないことかもしれないけど。裏表紙のヴォドニークは何を思っているのかな。
☆季節がお話の中で移り変わっていく。貧しく辛い冬から、新緑のはえる明るい初夏へ。
☆降矢ななさんの絵の雰囲気が変わったように思った。線の無い絵が画面の奥へと広がっていく。
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あとがきによるとヴォドニークはチェコの地域で語りつがれてきた水の魔物。たいてい緑色の体でいたずらしたり人を溺れさせたり、日本の河童のような存在らしい。
この絵本のヴォドニークはオレンジのロン毛に緑色の燕尾服と洒落た紳士のような装い。
貧乏で身投げ寸前の娘を水の館に住まわせ、言いつけを守らなくても一度は許したり…孤独なヴォドニーク意外と優しいと思う反面、壺の中身と最後はヒヤヒヤする場面もあって人と魔物のどこまでも相容れない寂しさを感じた。
5歳7ヶ月の息子も「ちょっとこわかった」と読み終えてポツリ。
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図書館本。私の選定本。チェコの昔話。読み終わって、チェコを世界地図で確認して。「超現実」にもちろっと触れて。絵本を読むのって、こういう本に巡り会いたいからなんだよね~と思える本。
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なかなかおもしろかった!
川に身を投げようとしている娘をさらう、娘は家に帰りたくなって帰ることを決意する、
掃除して集めたごみが金に代わるってのが面白いし、それを娘に与える、それを持って帰っても金のまま、
語ると面白そう。
降矢ななさんの絵がおとなしい感じがするが(笑)
きれいな絵本だ。
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絵がとっても綺麗。
色合いと女の子の表情がいい。
降矢ななさんの絵だとは。
ヴォトニークは善人?悪人?
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ヴォドニークは、水の中にいるようかい。ヴォドニークは、貧乏で死のうとしたむすめを助けてくれた。むすめは、めんどうを見てもらって、働いて、お金ももらった。
ヴォドニークが、人間のたましいをつぼの中にとじこめているのとか、つぼのふたを開けたら、命はないと言うのとかはこわい。でも、ヴォドニークがたましいを集めていたのは、自分のそばに置いておきたかったからかな。ヴォドニークはこわいけど、優しいのかな。
むすめが、つぼのふたを開けたときの場面が印象的だった。すごくきれい。真っ暗な水の館が、たましいで明るくなった。閉じ込められていたたましいがうれしくて光ったのかな。むすめも、弟のたましいを助けて、貧乏でも家がいいなと思うようになった。よかった。
絵が、すごくきれいだった。むすめが館へ行って帰ってきたら、季節が変わっていた。自分でがんばって生きていこうとする気持ちには、春は明るくてちょうどいい。
後書きを読んで、ヴォドニークが河童だと書いてあって、似てるなと思った。(小5)
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主人公は自殺しようと水に飛び込むと水の精ヴォドニークに助けられ、衣食住を与えられるのと引き換えに家事をする。触ってはいけないと命じられた壺には川で死んだ人の魂が閉じ込められていて‥という意外とダークな話だが、絵が本当に良い。
表紙の魚が綺麗なのに惹かれて借りたが、壺を前に逡巡する場面など、単純に場面を絵にするだけでなく、心情も反映されているところが素晴らしい。
話自体は浦島太郎風のチェコの民話。
お母さんは貧しいのに子供をたくさん産んでその日暮らしで、実は話に一切登場しない(この世に戻った時には既に亡くなっている)。父親はそもそも言及が一切ない。
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「とらわれたのか、救われたのか——降矢ななさんが描く、切なくも美しい絵本。
生きる希望をなくしたむすめは、水の主ヴォドニークに命を救われ、水の館で仕えることになりました。はじめは従順に従っていたむすめでしたが…。
むすめは自らの意思で生きていこうと決意してはじめて本当に救われ、現実の世界に帰っていきます。現代にも通じるメッセージ性のあるこの昔話。」