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読む前はゲーム制作の楽しく軽快な物語かと思ってたら重厚な読み応えで、読み終えるのにかなりの時間を要した。
ゲーム制作のお仕事小説であり、友情、愛の物語でもある。
サムとセイディの出会いから四半世紀に渡る物語は上手くいくことばかりじゃない。すれ違い、喪失、関係の悪化…等々。
彼らの人生の一部を垣間見させてもらった気分だった。
作中に出てくるアンフェア・ゲームズの作ったゲームをプレイしてみたくなる。
爽やかなラストがたまらない。
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これは傑作だった。
ゲーム開発の本というとジェイソン・シュライアー著の『血と汗とピクセル:大ヒットゲーム開発者たちの激戦記』という傑作ノンフィクションがある。
AAA級タイトルとは別に、『Stardew Valley』などのインディタイトルも登場するのだが、その開発の様子がまさに『トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー』にそっくりだった。後半にゲームを持ち込んでくる2人が影響を受けたゲームが『牧場物語』だったりするのも繋がってる気がして感慨深かった。
サムとセイディ、幼馴染2人の一筋縄ではいかない愛と友情の様も良かったが、何よりも自分は創作に対する姿勢にやられてしまった。ゲームクリエイターでなくとも全てのクリエイターに刺さるだろう創作に対する直向きさに心がやられてしまった。
2023年のベスト本の1冊。
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なんだか最近レトロ・ゲーム愛が止まらない。年とった証拠か。
そんなゲームの制作を背景にした男女の物語があると聞いて読んでみる。うーん、男女の友情?愛が一周回って友情ってなる?
中身はそんな薄っぺらな話ではなかった。80年代から2010年代付近までのゲーム開発に情熱を傾ける人々の物語であり、その時代ごとに変わっていく愛についての物語でもあった。男女の愛が一周まわって友情になんかならないから悲劇も生まれるわけだけれども、そんな中でも結局尊敬しあい支え合って生きていく姿はなんだかホッとするとともにとても切ない感じです。
登場人物の一人に、愛とは結局のところ何ものだ?と語らせています。「進化のために競争を忘れてまで他人の人生の旅路を楽にさせてやりたいと願う不合理な欲求でないとしたら、いったい何だ?」これについてはドーキンスがその著書「利己的な遺伝子」の中で既に答えを出しているように思える。そこを乗り越えての物語になっていたらもっとハードな作品になっていたのではないかと思います。それでも十分に胸にせまる作品であり、また読んでみたくなります。傑作。代表作でもある「書店主フィクリーのものがたり」も読んでみようかな。
さらに、自分でもゲームを作ってみたくなります。やっぱりゲームはプレイするより作る方が面白いのかもしれない。
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冒頭でゲームとかプログラミングのジャンルとわかり、難しいと楽しめないので嫌だなと思っていたけど、一気読みだった。
任天堂とかドンキーコングとか、実在の名前を挙げてくれるので、どのくらいスゴイものなのか、イメージがわきやすい。
また、何より心理描写が素晴らしい。サムとセイディの心のゆらぎが(相手には話さないものの)、可能な限り言語化されようとしている気がする。
訳者さんも好きだし、そのおかげもあるのかも。
若い二人がゲーム制作に没頭し、成功していく前半と、失敗も経験し、意見が食い違っていく後半。
前半で無敵の二人を見ていたぶん、後半がひどくもどかしく切ない。
著者の既刊も読んでみよう。
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ゲームをラブレターにするかのようなボーイミーツガールな出だしから一気に心をわしづかみにされた。
甘酢なジュブナイルものかと思いきや、展開は意外に重くなっていく。サムとセイディはソウルメイトだが、誤解やすれ違いも多く、結局それが種明かしや解消されないまま進んでいくのが、人生の話だなと感じた。(そしてわたしはマークスも大好きだったのでかなり落ち込んだ。)
現実では無理でもゲームの中なら乗り越えられること、二人が進んできた道のりを愛の轍として見られるようになることー読者も最後までいっしょに経験させてもらった気がする。
おそらくインテリでリベラルでサブカルおたくの筆者。他の著作も読みたいし、絶対に上手く映画化してほしい!
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★5 秀才ゲームクリエイターの愛と友情の物語 #トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー
■はじめに
子どもの頃、友人と一緒にファミコンで遊んだ日々が懐かしい。スーパーマリオ、ゼビウス、ドルアーガの塔、ドラゴンクエスト…数々の名作を思い出す。
大学生の頃はアルバイトで稼いだお金を全て話題作につぎ込み、休み前は友人宅で夜通しで対戦ゲームに入れ込み、初めてつないだオンラインゲームで、見も知らずの外国人と朝までチャットに興じたり。
今ではあまりゲームに時間を割くことは少なくなりましたが、私も本作の登場人物と同じように、ゲームが大好きなひとりなんですよね。ゲームクリエイターたちの物語があると知り、ぜひ読んでみたいと思いました。
■あらすじ
ハーバード大学に通っているサムは、ある日幼馴染のセイディと出会う。彼女もMITに通う大学生であった。彼らは幼い頃にスーパーマリオを楽しんだ仲だった。ゲームに対する愛情とスキルを持っていた二人は、サムの友人であるマークスと共に、自分たちだけでゲーム制作に挑戦する。そして完成した「イチゴ」というゲームは世界中で大反響を呼ぶことになるのだった。
彼らはさらに面白いゲームを作り続けるはずだったのだが、少しずつ価値観がずれ始めていき…
■きっと読みたくなるレビュー
友人、親友、仕事仲間、恋人、夫婦、家族…人と人との繋がりは様々な種類がある。そして人の環境は常に変化し、日々生活をしながら年齢も重ね、さらに価値観や経験値もアップデートされてゆく。本作はゲーム作りと会社経営を通して、人間の色々な絆の形を描いた作品です。
本作は粘り気のある強い文章で綴られており、読者の胸を締め付ける気の利いたセリフが印象的。読めば読むほど、人の心の深みに入ってしまう感覚に陥ってしまい、感情移入が半端ないのよ。
様々な過去の経験から、少しだけ偏った性格を持ち合わせた彼ら。大人が端から見ていると、もっと相手の気持ちを考えて仲良くやれよって思うかもしれませんが、それだとモノづくりなんて成功しないんですよね。個々の想いと情熱をぶつけることで、はじめて最高傑作が生みだされる。
そして出会った頃から異性としても惹かれ合い、誰よりも相手を思いやる気持ちはあるにも関わらず、いつも喧嘩が絶えない。相手のことは誰よりも知っているのに、自分と相手の間にある食い違いを理解し、それを調整しようとする意思がない。友情も愛情も超えた精神的な部分でつながっているのに、決して幸せにはならない。ゲーム制作という夢が実現して、経済的にも成功しているのに…
ゲームでハッピーエンドを迎えるのは容易ですが、人が幸せになるのは、本当に難しいですね。しかし彼らの努力はしっかり目に焼き付けました。「よくがんばったね」と、彼らを抱きしめたくなる、そんな素敵な作品でした。
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『書店主フィクリーのものがたり』がとても好きで、お守りのような本にしていたところ、この本が刊行されたので早速手に取った。
途中かなりトラウマを刺激する場面があって、読み通すのになかなか苦労したが、最後のシーンで二人がまた同じ会話を繰り返すところで感動が一気に爆発した。こんな終わり方ってあるだろうか。
『書店主フィクリーのものがたり』は愛の物語であった。そしてまたこの作品も、深い愛の物語である。
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謎の読了感…。三人の学生時代のノリと勢いですごい勢いで制作にのめり込む臨場感、社会人初期の少しずつ価値感が合わなくなってくる感じ、中年期の全く合わない&人生のステップ自体も合わなくて理解できない感じがリアル…。足の障害の度合いがひどくなっていくのもリアルに書かれるの読むのが辛かった。。。
友情関係なんてお互いのこと理解しきっていても…合わないときは全く噛み合うことができない、サムの気持ちが切なすぎて泣く。(でもちょっとキモイ。)
大抵の場合そこで友愛なんか疎遠になるものなのにゲームへの情熱と互いのリスペクトががひたすら二人をつなげてる。中盤まではマジで引いてたけどリスペクトが強すぎてもうそれ至高の愛だから胸張ってくれと、後半は応援すらしてた。
でも好きなのになんで煽るかな、そのスキル強すぎて、お母さんのヒス構文になってて最後の方の喧嘩はヒス構文vsヒス構文で収集つかなくなってた。
アメリカ人て日本語訳すると大体ヒスって喧嘩してるけど国民性なのかな。
あと、本文にあった’リアルが充実’なんて死後単語もってくるのなんかいいなって思った。ゲーム業界なんて新幹線並みに技術が進んでいて常に新しいものを技術が古くなる前に少しでも多く開発を利益をとなっている(ような描写が本文にある)のに制作者の現実で使う単語がアップデートされてないのがいかに虚構の世界にリソースをかけているかという対比を感じた。
全体的な言葉選びが統一されて遂行されてよかった、違和感を感じない文体、構成、表装。
-1の部分はカタカナが多くて読みにくいところかな。気持ちは-0.5、少し飲み込むのに時間がかかった箇所がある。
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ストーリー性が強い本あんまり好きじゃないけどこの本はめちゃくちゃおもしろかった、メッセージ性の陳腐さも気にならなかった
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人生のまだはやい段階で、家族以外の他人に対して"愛情"を感じられる人に出会えるなんてサムもセイディもマークスもとても幸運であると思う。
現実的に割り切るとかじゃなくて、相手の深く大切に考えているからこそとられる行動に嫉妬のようなものまで覚える。
私はこの先の人生でそんな深い情を、関係性をだれかと築くことはないだろうと確信をもってる、かなしいかな、
"愛という荷は重くても、運ぶこと自体に大きな喜びがある"
葛飾応為の『夜桜美人図』は調べてみたら、とても美しかった。女流画家が多くはないであろう時代にもこんな才能が生まれていたなんて素敵だ、
"ツヴェイザムカイト"ドイツ語で大勢でいるときに感じる孤独感のこと。同じような単語は日本語にもあるかな?疎外感とか?覚えておきたい単語
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好きな所
これまでずっと、〝愛してる〟と口にすることに抵抗を感じてきた。大切な相手に愛情を示すのは傲慢な事に思えた。しかし今は、この世で何より簡単にできる事の一つだと思う。愛しているのに、愛していると伝えなくてどうする?誰かを愛したら、相手がうんざりするまで愛していると何度でも伝えるのだ。その言葉にもはや意味がなくなるまで。理由などいらない。とにかく何度だって伝えるのだ。
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傑作である。ゲームに人生を救われ、そしてゲームを作ろうとする人たちの人生に密着した名作。本当にこんな作品が作られたかのような、時おりノンフィクションドキュメンタリーを読んでる気分になってしまった。
正直、前半を読んでいるときには、もっとシンプルで綺麗な話でいいんじゃないかと思った。しかし、後半の怒涛の展開に引き込まれる。人生ってのはどう転がって進むかなんてわからない。「あの夜、サムの母親が死なずに済んだ手順は無限にあったが、死に至る手順はたった一つだった。」しかし、それが起きたのが現実なのだ。
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小さい頃に出会ったサムとセイディ、大学生で友人となったマークスの3人がTVゲーム創成期にクリエーターとプロデューサーとして会社を立ち上げ、成功、挫折、悩み、衝突など様々な出来事を乗り越えていく物語。ゲームのように簡単ではないが、友人や知り合いとの絆は真摯に向き合えば、壊れてもまた回復できるかなという気がした。マクベスの引用が力強く感じた。
明日、また明日、そしてまた明日と、
記録される人生最後の瞬間を目指して、
時はとぼとぼと毎日の歩みを刻んで行く。
そして昨日という日々は、阿呆どもが死に至る塵の道を
照らし出したにすぎぬ。消えろ、消えろ、束の間の灯火!
人生は歩く影法師。哀れな役者だ。
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なかなか読む時間が取れず読了まで1ヶ月以上かかってしまったが、読み始めると時間を忘れて入り込んでしまう作品だった。
部活の合宿みたいな雰囲気での開発、メンバーとブレストしてる時のワクワク感とかは、ワーカホリックのみなさんには心当たりがあって共感できるんじゃないかと思う。
私自身はWebシステムの開発に関わる女性エンジニアの立場で、優れた女性ゲームデザイナーという点で冒頭はセイディを崇拝する気持ちがあった。それが読み進めるうちにセイディの病み気質が合わず、いちいち言動にイライラしながらサムに同情した。マークスを誘ったのもセイディの方からで、その時考えていたことはビッチそのもの。こんなメンヘラビッチよりもスキルが劣っているなんて悔しいと、架空の人物に敗北感を抱く始末だった。
少しネガティブな感じの書きぶりになってしまったけど、それは決して不快なイライラではなくて、無敵の3本マイクよ復活してくれと祈り、ハラハラしながら、「若いっていいわねぇ~」かなんか言いながら近所のおばちゃんとして見守ってる感覚で読んでいた。
人生で2回も絶交して、それでもまたリスタートできる関係って本当に羨ましい。冒頭の場面と最後の場面がシンクロするのもすごく良い。
ゼヴィン氏の作品は今回が初めてで、とにかくキャラクターの描き方が上手いと思った。登場人物全員と友達になりたい。
私の脳内でセイディはセイディ・シンク(名前の影響大)、マークスがラスアス2のジェシー、ドーヴは「黒茶の巻き髪とレザーパンツ」の描写でクリス・コーネルを当てはめて読んでいたところ、ドーヴの印象がマークスとだだ被りで笑った。
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ゲーム✖️恋愛版のソーシャルネットワーク(映画)みたいな話だなと思いながら読み進めました。
厳密には全然違うのかもしれないけど…
仲間と何かを成すってのはやっぱりいい!
「ソリューション」のようなコンセプトのゲームって現実にもあるのかな、このゲームのくだりが1番好き。