Three Times One【CD】

ユニークな曲作りとテンション溢れる演奏でライブ・スポットに多くのリピーターをひきつける南の実質的な3枚目の作品。前作はレギュラー・カルテットによる演奏だったが、今回は現在最高のリズム・セクションと目される「岩瀬立飛～安カ川大樹」の二人を従えた作品｡切れ味と揺れ味という矛盾する持ち味で木住野佳子をはじめ多くのピアニストたちから引っ張りダコの二人による演奏は、南の持味を十分以上に引き出した素晴らしい演奏となった｡バークリー～ボストン・コネクションにあって、クリスチャン・ジャコブに師事した南が、多くの試みを経てトリオによる彼の世界を見事に達成した。何れの曲もリズム、そして、ハートビートの緩急に満ちており、むしろヨーロッパ的な感性を鎧に隠した南の魂が見え隠れする。特に安カ川のぞくぞくするようなソロは、寛ぎだけに走るピアノ・トリオとは一線を画した、本当の意味での「三相交流」を感じさせてくれる。アウト・リズムからリズムに進みながらしかも「緩急」と「寛緊」を一瞬のうちに使い分ける演奏は山下洋輔や佐藤允彦が持っていた緊張感に勝るとも劣らない。1999年日本人が生んだメモリアルな作品。