ピアノ作品集　トルビアネッリ（ピアノ）【CD】

ゲーゼ：ピアノのための作品集

グリーグに先駆けて活躍した“北欧のロマン派”
魅力あふれる掌編の数々の味わいが当時のピアノならではの柔らかな響きで心震わす！
　
ピリオド楽器で本格的にロマン派を、という動きは、実はここ15年くらいの間にそうとう進んで、ワーグナー管弦楽曲の古楽器録音や、シューマンやカリヴォダのオーボエ作品、モシェレスやカルクブレンナーのピアノ曲、アドルフ・サックス時代のサックスによる録音などなど、楽器にこだわっただけのことはある、精妙な聴き応えある名演も少なくありません。
　今回、Pan Classicsからリリースされる当盤（もちろん最新録音です）も、そうした系譜に連なる、筋の通ったピリオド楽器ロマン派ものと言えるでしょう。デンマークのロマン派、ニルス・ヴィルヘルム・ゲーゼ[1817-90]の魅力が端的にあらわされたピアノ曲の数々を、なんと1864年製という微妙な年代のスタインウェイで演奏。涼しげな響きにシューマンめいた“むら気”の宿るゲーゼのピアノ曲集といえば、ヴェステンホルツ女史がファツィオーリで録音した全集があり、Symphoniaにはマンジョカヴァッロやアルヴィーニらがピアノ三重奏をピリオド楽器で入れたものもありましたが、本盤はたった１枚で、祖国愛に満ちた『民謡集』（30の掌編集）から中期の傑作『幻想小品集』まで、さらに重要作『水彩画集』やホ短調ソナタまで、ゲーゼならではの透明な詩情がほっと息づく傑作の数々をヴァラエティ豊かに取り揃えているのが嬉しいところです。
　奏者トルビアネッリは以前クレメンティの後期作品集という充実盤で縦横無尽のヴィルトゥオーゾぶりを発揮していた俊英。楽器の特性をよくつかんで、細やかなピアニズムで静かな叙情を演出してゆきます。残暑から秋への移ろいを、美しく彩ってくれること間違いなしの秀逸アルバム。（マーキュリー）

ゲーゼ：
・幻想小品集 op.41（1862）
・水彩画集 第１巻 op.19（1850）
・春は花ざかり op.2b（1842）
・牧歌 op.34（1857）
・アラベスケ op.27（1854）
・ピアノ・ソナタ ホ短調 op.28（1848/54改）
・スカンディナヴィア民謡集（1842）

　エドアルド･トルビアネッリ（クラシカル・ピアノ）
　使用楽器：スタインウェイ＆サンズ　1864年製
　（ボローニャ、イモーラ音楽院所蔵）